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本をどう売るか会議②「新聞広告の効果を新井くんに聞いてみた」BOOK TALK vol.2

Sunmark Web 「BOOK TALK」は、サンマーク出版のPR戦略室で働く新井俊晴と杉本耕亮が、「本の世界」で働く人たちの奮闘記をお届けする対談記事です!隔週月曜日に配信しています。

書店さんに営業している杉本くんに「本をどう売るのか⁉︎」を聞いた、前回の対談が思いがけずとても好評でした。読んでくださった方々ありがとうございます!

BOOK TALK vol.1  
本をどう売るか会議
「書店営業・杉本くんに聞いてみた」
はこちら!

そこで今回は、聞き手と語り手を交換しまして、本を広めるために年間1000本の新聞広告をつくるサンマーク出版の "ひとり広告代理店" 新井くんが「効く広告ってどう作るの?」をテーマにお話をします。

それではBOOK TALKスタートです!


年間1000本以上の広告を作る新井くんに聞きます!

新井俊晴
みなさん、こんにちは!「BOOK TALK」へようこそ!サンマーク出版PR戦略室の新井です。

杉本耕亮
同じくPR戦略室、兼、営業部の杉本です!

新井 Sunmark Web「BOOK TALK」は、「本の世界」で働く人たちの奮闘記をお届けする対談です。書店さんや販売会社さん、著者さん、出版社のみなさんや、これから出版業界を目指す方たちのお役に立てればうれしいです!

杉本 今回は、年間1000本以上の新聞広告をつくっている"ひとり広告代理店"の新井さんに、

「本の広告って効果あるの?」

ということを、聞いてみたいと思います。


新井くん(左)と杉本くん(右)

◎新聞広告って効果あるの⁉︎

杉本 早速なんですが「本の広告」ってどんなものがあるんでしたっけ?

新井 えーと、ひとり広告代理店って…。はじめて言われたけど、ぼっち感がすごい(苦笑)

杉本 うちの会社の広告をひとりでつくっててすごいなあ、ってリスペクトを込めてるんですよ。そんなことより、質問の答えを...。

新井 あ、そうでした。本の広告とひと口に言っても新聞広告、電車広告、SNS広告、そのほかいろいろあります。今回はその中でもサンマーク出版の「お家芸」である、新聞広告についてお話をしますね。ほぼ毎週なんらかの新聞に掲載しているくらい出稿回数が多いんです。

杉本 1年で1000本以上でしたっけ⁉︎ そんなにだす出版社ほかにあるんですかね?

新井 雑誌がなくて、本だけを出している出版社でここまで新聞広告をだす会社はほとんどないような気がします。ちなみに、掲載された紙面はこんな感じです↓

3/16朝日新聞に掲載した広告。『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』は、全世界400万部のベストセラー

一番表の面の下か、1枚か2枚めくってもらったところの下の広告。表から1面、2面、3面、4面・・・って数えるんですが、うちの会社は4面までに出すと決めてます。それ以上深い面だとあまり読んでもらえないので。

杉本 僕は書店さんに営業に行くことも多くて、新聞の広告の切り抜きをもって「この本ありますか?」と書店員さんに聞いているお客さんの姿を目にしますよ。

でもね、いきなり水をさすようなこと聞いていい?

カメラを向けられると、すぐカッコつける杉本くん。やたらと時計を見せてくる

新井 (ゴクリ)...えーと、なんでしょう?

杉本 新聞って年々読まれなくなってるでしょ⁉︎ 昨年だけを見ても前年より大幅に部数が減ってる...。そんな新聞に広告を掲載しても効果がないんじゃないかって思っちゃうんだけど。

新井 たしかに新聞全体の発行部数は、2000年に5300万部だったものが年々減りつづけ、20年後の2020年には3500万部、2022年に3080万部、昨年2023年は2860万部まで落ちてきてる。20数年で半減したと言ってもいいよね。

各年10月、新聞協会経営業務部調べ

本の広告についても、以前と比べたら効果が弱くなってることはたしか。でも、だからと言って効かないかというと、そんなことはないんですよ。

杉本 おっ、極意みたいなものがあるの⁉︎ さすがひとり広告代理店!

新井 いやいや、極意なんてないない。ただ、せっかく出す以上は新聞読者の方に興味をもってもらえるような「確率を高める工夫」をしてます。

杉本 それを聞きたい!書店さんからも「どうしてサンマークさんの新聞広告は、いまだにあんなに効くの?」って質問されるんですよ。

◎部数が落ちてるのに、どうして効くの⁉︎

新井 サンマーク出版では、2ヶ月先くらいまでの新聞広告の予定を決めます。といっても、ほとんど毎週なんらかの新聞に、なんらかの本の広告を掲載しているので、その効果を確認しながら広告スケジュールをその都度変更していきます。これはもう、かなりフレキシブルにやってる。

杉本 毎週、社長の黒川さんと僕ら3人で広告会議やりますもんね。ほとんどの広告は週末に打つから、そのデータを週明けに確認して、あの広告はよかった、あの広告はここが反省点かも、みたいな話をしながらスケジュールをどんどん更新していく。

新井 うん、黒川さんめっちゃ細かいとこまで見てるから、誤魔化せないよね(笑)

杉本 ほんと。あの人はタチが悪いくらい細かい(笑)

画像はイメージです。実際の黒川はほとんどネクタイをしません

新井 あはは。社長批判はこれくらいにして、と。

広告が効くためには、「どの本の広告を打つか」っていうことが何より大切です。これを間違うと、どんなクリエイティブをつくろうが意味がないから。たくさんある新刊やロングセラーの中から、広告銘柄としてどの本を選ぶのかっていうことがはじめの一歩。

杉本 選ぶときに一番大切なことってなに?

新井 差別をすることです。

杉本 えっ⁉︎ 差別?

新井 うん。うちの会社の新聞広告って、大きな紙面の中に1冊か、多くても2冊しか掲載しないでしょ。

杉本 たしかに。他社さんの広告を見てると、3冊とか多いと5冊以上掲載してるのもよく見る。うちは銘柄を絞ってると?

新井 そう、絞りまくってる。長年やってデータを集めた結果、複数アイテムを紙面分割してそれぞれ小さな広告にして出しても、効果はほとんどないことがわかってる。だから1冊か2冊を思い切ってドーンと見せるようにしてるの。そうなると、どうしたって全ての新刊の広告を出すことはできない。

杉本 そうか、だから差別?

新井 うん、差別っていうと言葉が悪いんだけど、つまり、たくさんの新聞に「厳選した本」の広告を絞り込んで掲載するという意味です。あれもこれも広告しない。この本をやる!って決める。

出版社の宣伝担当のところには、いろんな編集者が「私の担当した本の広告を出してください」って言ってくるんです。なかには「どうして僕の本の広告を出してくれないんだ!」ってぷんぷんしてる人もいる。

ほんとはあれもこれも出してあげたいんです、僕だって。いろんな編集者の顔が浮かぶしさ...。そのほうがみんなに好かれるしさ(笑)。でも、新聞の部数が減ってきて、効果が以前より弱まってきて、そのうえ月の予算もきまってる中では、銘柄をしぼって「思い切った作戦」を立てないとならない。

杉本 おお、嫌われる勇気!ぼくは3年くらい前にこの会社にやってきたんだけど、「この本はいけそう!」ってなったときの一気呵成に広告で攻める様子にビックリしました。いったいどんだけ広告やるつもりなんだと(笑)。でも、たしかに、広告うつ銘柄を絞り込んでるからこそできることだね。

となると、次に聞きたくなるのは...

新井 何を基準に絞り込むのか、でしょ⁉︎

杉本 さすが(笑)。それ教えて!

◎広告に向く本、向かない本

新井 基準はいくつかあります。まず一つ目の基準はシンプルです。「期待値の高い本」かどうか。別の言い方をすると、「初版部数」の多い本。こういう本は書店さんの期待値も高い。その期待にこたえるためにも、広告で後押しする。

杉本 初版が多いってことは、それだけ書店さんが期待して「注文」を多めにくれたってことだもんね。営業をしている身としては、なんとかその期待にこたえて結果をだしたいから広告してくれるのは本当に助かる。

2つ目の基準は?

新井 新聞の読者層に合ってる本かどうか。新聞は高齢層が読んでいるから、そこにマッチしそうな本だと効果が期待しやすいでしょ。

杉本 うん、最近だと『100年ひざ』の広告がめっちゃ効いたもんね。まさに新聞読者にドンピシャ!

10万部を突破した『100年ひざ』

新井 読者さんたちの熱い声が集まったので、それをそのまま広告にさせてもらいました。

とはいえ、これだと「初版部数」が多い本か「高齢層向けの本」しか広告のチャンスがなくなっちゃうでしょ。だから、第三の基準を設けてる。通称「チャレンジ枠」です。

杉本 チャレンジ枠!なんだか初々しい(笑)

新井 でしょ⁉︎ これは、ある県の新聞を活用してるんだけど、そこでテスト的に広告を打ってみるんです。効くかどうかわからないけど、お試しでやってみる。そこで効いたら、読売新聞や朝日新聞、日経新聞といった「全国紙」でもやってみるんです。

杉本 ある県の新聞とは...どの新聞?

新井 杉本くん、それは言えないの知ってるでしょ!社外秘です(笑)。そこで効くと全国紙でやってもほぼ確実に効くという...。

杉本 そうだ、社外秘でした(笑)。整理すると、

1.初版部数の多い新刊
2.新聞読者にあった本
3.チャレンジ枠

の3つね⁉︎

新井 そうです。それを広告スケジュールに配置させて、効果の強かった本、効果のまずまずの本、残念ながら効かなかった本に分類しながら、つねにPDCAを回していくのが僕の仕事です。

杉本 広告を打つときに、「この広告は効かなそうだなあ」って弱気になることない?

新井 うーん…。広告だすときには、売れないってことは考えないようにしてるけどね。

杉本 アントニオ猪木の名言みたいですね(笑)

新井「出す前に売れないこと考えるバカいるかよっ!」

注)新井くんは1990年東京ドーム興行前の猪木の名言、「出る前に負けること考えるバカいるかよ!」のマネをしてます。

杉本 のってくれるんだ(笑)。じゃあ、いつも自信満々で広告をつくってるってことでいい?

新井 杉本くんは本当に意地悪だよねぇ…。きみの曲がった性格を象徴するような質問だよ…。

杉本 ちょっと!笑

◎広告はラブレターのように

新井 広告をだすときに「売れる」か「売れない」かなんて本当にわからない。「最高の原稿ができた!」って思ってもぜんぜん効かないこともあれば、「これで大丈夫かな…」と迷いながら出したのにすごく効いちゃうこともあるし。

杉本 新井さんみたいに長年やってても、だしてみるまでわからないんだねえ。広告をつくるときに「気をつけてること」ってあります?

新井 うーん、「自己紹介しない」ってことかなぁ。

杉本 ほお、なるほど…(ぜんぜんわからん)。えーと、どうゆうこと?

新井 広告をつくろうとすると、気づけば本の内容説明ばっかりしてることがあるの。でも、その広告をはじめて見る人からすると、そんなに細かいことくどくど説明される前に、そもそも「私」の人生に何をもたらしてくれるのか知りたいでしょ。

杉本 「自分ごと」になるかどうか。

新井 まさにそれ。これは私の人生に関係ありそう!って思う前に、長い長い自己紹介さながら商品説明されても興味がわかない。

「機能」をいくら説明しても、人の「感情」を動かすことはできないよねえ。

杉本 感情かぁ。喜びとか、ワクワクとか?

新井 うん。広告を見て「あ、この本好きかも」「私の人生にいい影響をくれるかも」って思うことない? 僕はけっこうあって、それって強い動機になる。好きになってもらって、買ってもらって、「やっぱりいい本だった」って幸せになってもらいたい。

だから、広告って人の心を動かす「ラブレター」のようなものだと思う。

新井くんの手ではありません。画像はイメージです

杉本 なんだか、素敵なこと言う! 営業もそうかも! 書店さんにその本を好きになってもらうっていうのがいちばん大切。注文をもらうために営業に行くんじゃなくて、うちの本を好きになってもらうために話をしにいく。

そのために、発売の何カ月も前から「今度こんな本が出ますよー。○○さん、気に入ってくれると思うんですよ」って情報を伝えたりして。

新井 僕らの仕事はラブレターを送り続ける仕事だ(笑)。

広告を見た人や書店さんが、どうしたら「この本を好きになってくれるか」を考えて、言葉を尽くす。「伝える」っていうのはそういうことなんだろうなー。

杉本 じゃあ、そんなふうにつくったラブレター、見せてもらっていいですか?

新井 ちょうど先週末、3/22~全国のブロック紙・地方紙に掲載した広告なんだけど、これは手応えがありました。

『100年栄養』の新聞広告!

杉本 だした日に楽天ブックスの総合4位までいきましたね!掲載した県の書店さんでも明らかに売れてました。この原稿、どのへんにポイントがあるの?

新井 奇をてらわない、ってことかなあ。誠実につくること。この本って「バランスのいい食生活をすることで、長生きできますよ。高齢になると、なかなか食べられなくなるけど、ちゃんと食べてくださいね」っていうどストレートな内容なんですよ。

杉本 普通といえば普通…!

新井 そう、いい意味で普通なんです。キャッチーでもなければ、ひねってもいない。でも、だからこそ真実だと思うんですよ。とにかくいい本なの。自分の親とか、祖父母とか、大切な人に読んでもらいたい本。

杉本 だから、広告の左上にこう書いたのね。

自分と大切な人を守る
本当に正しい食の知識

新井 そうなんです。実際に会社に届いている読者さんからの感想も、「ためになった」とかだけじゃなくって、すごく感情のこもったものが多くて。みんなこの本のことを大切に思ってくれてる。

杉本 なるほど。営業的に見ると、書店さんで派手に売れてますっていう感じではなかったけど、ずっと堅実に売れていたんだよね。それがあの広告で火がついた!

新井 さらに爆発的に広めるために、これから広告の作戦会議しよう!

杉本 やりましょう! ぜひ一家に一冊、『100年栄養』をよろしくお願いします!

新井 とってもとってもいい本です!

けっきょく最後は宣伝しちゃう2人…!杉本くん時計見せてる

手のひらに、一冊のエネルギー。

サンマーク出版の新井と杉本がお送りいたしました!

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