小くよ15 自分から先に手を差し出す
自分から先に手を差し出す
私たちはみんな怒りを胸にためている。口論、誤解、両親の育て方、過去のつらい出来事。私たちはだれかが手を差しのべてくれるのを頑固にじっと待っている──友情や家族との関係を修復する手段はそれしかないと思い込んで。
私の知り合いの病気がちの女性は、息子とは3年も口をきいていないと私に言った。「なぜなんです」と聞くと、息子の嫁と折り合いが悪く、息子のほうから電話をかけてこないかぎり彼と口をきくつもりはないと言う。
先にあなたがかければどうですか、と提案すると「それはできません。謝るのは息子のほうなんだから」と彼女は答える。一人息子に手を差し出す前に死んでもいいと本気で思っているのだ。だが、しばらくやさしく励ますと、ついに彼女も先に電話をしてみようという気になった。
電話をしてみると、驚いたことに息子は電話をかけてくれたことに感謝し、詫(わ)びを口にしたという。こちらから先に手を差し出すことでみんなが勝者になるという、いつものケースがここにある。
怒りをためていると「ほんの小さなこと」が「大きなこと」に変わってしまう。立場やメンツのほうが幸せより大切だと信じるようになってしまう。
そうではない。もっと穏やかな人になりたいなら、「立場をつらぬく」ことは、幸せになることにくらべれば取るに足りないと理解しなければならない。幸せになるには水に流すこと、こっちから手を差し出すこと。ほかの人たちに勝ちをゆずること。
だからといってあなたがまちがっているわけではない。なにもかもうまくいくのだ。水に流すことで心の平和が得られるし、ほかの人たちに勝ちをゆずる喜びが味わえる。
手を差し出せば、相手は心を開いて応じてくれるかもしれない。応じてくれなくてもがっかりすることはない。自分から手を差し出した満足感で、穏やかな心境になれるのだから。
<本稿は『新版 小さいことにくよくよするな!』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
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