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食後に眠くなる人に知ってほしい「食べ方」7ルール

 お腹がいっぱいになるまで、それもカロリーも気にせず食べていい。それでも体重を維持して血圧や血糖値の上昇を避けられる、緩やかな糖質制限を意味する「ロカボ」という食べ方があります。

 提案しているのは北里大学北里研究所病院副院長・糖尿病センター長、山田悟さん。山田さんは、食後に血糖値が急変動する影響により生じる「眠くなる」「だるくなる」などの体調不良を「糖質疲労」と名づけ、警鐘を鳴らしています。

 糖質疲労の原因は食事をとった後に、血糖値の上がり幅が大きい「食後高血糖」、その後に急激に血糖値が下がる「血糖値スパイク」。糖質疲労の段階ではまだ病気とは言えず、今すぐに薬を飲む必要があるわけではないものの、放置しておくと、いずれドミノ倒しのように糖尿病・肥満・高血圧症・脂質異常症に至る可能性があるといいます。

 これを避けられるロカボとはどんな食べ方なのでしょうか。山田さんの新著『糖質疲労』よりお届けします。

『糖質疲労』(サンマーク出版) 山田悟
『糖質疲労』

血糖値を上げる「糖質だけ」をセーブして、おいしいもので満腹に!

 かつて(2006〜2007年頃)の私は、糖尿病専門医でありながら、いまより体重が8㎏ほど重く、駅弁を食べて血糖値208㎎/㎗をたたき出し、血圧も140/90㎜Hgぎりぎりで、いつ糖尿病や高血圧症と診断されてもおかしくない状況でした。

 やせなければと、自己流でカロリー制限食に取り組み、ちょっと体重を減らしてはつらくなり、夜中にアイスクリームをほおばってリバウンドするという繰り返しでした。そして、昼食にはいつもざるそばを頼み、午後の外来では強い眠気に襲われていました。

 しかし、2009年からゆるやかな糖質制限、ロカボに取り組み、いまの体重は私の20歳の頃の体重で維持され、血圧も時に収縮期血圧(上の血圧)は100㎜Hgを切ることすらあります。午後の眠気もありません。日々、満腹になりながら、パフォーマンスも体重も適正化されていると思っています。もちろん、毎日糖質10g以内で嗜好品を楽しんでいますので、夜中のアイスクリームへの衝動も全くありません。

 これは、私だけの経験ではありません。ロカボ指導を受けた患者さんが10年経過しても集団としてリバウンドを示さず(もちろん、数人の例外はいらっしゃいました)、長く安全に血糖値を改善させていることをデータにしています(論文投稿中です)。

 このような長期の有効性と安全性を示したデータはほかの食事法にはありません。たとえば、日本人を対象にしたカロリー制限の論文では、3年たった段階で集団としてリバウンドを呈していました(集団の体重がカロリー制限開始前より増えていたのです)。

 また、極端な糖質制限とゆるやかな糖質制限とを比較した無作為比較試験では、ゆるやかな糖質制限では、試験期間の10週間の間、ずっと体重を改善させ続けていたのですが、極端な糖質制限では、6週目までは体重を改善させたものの、それ以後は完全にリバウンドしてしまいました。

 実は、リバウンドによって体重の上下動を繰り返す(これをヨーヨー現象あるいはウェイトサイクリングと言います)ことで、死亡率が高まることを示す観察研究のデータが存在しています。

 だから、私が自信をもってご提案するのは「ロカボ」な食べ方です。ロカボは理論と科学的根拠に支えられ、10年の継続が可能な実践的な食事法なのです。

ロカボとはどんな食べ方?

「ロカボ」とは、低糖質を意味する「ローカーボハイドレート」という言葉からの造語です。ゆるやかな糖質制限のみを指し、ゼロをめざすような極端な糖質制限ではありません。そして、糖質疲労を感じることの多い日本人にとっては、これこそが、適正糖質なのです。ロカボの7ルールは以下です。

ルール① 1日にとる糖質の量は70〜130g以内
     (1食20〜40g×3回、+間食で10g)
ルール② お腹がいっぱいになるまで食べる
ルール③ カロリーはいっさい気にしない!
ルール④ たんぱく質、脂質、食物繊維をしっかりとる
ルール⑤ 糖質とたんぱく質、脂質のバランスも気にしない!
ルール⑥ 糖質ぬきをめざしてストイックになるのはNG
ルール⑦ 早食いをせず、「カーボラスト」でとる

 ロカボは、「まさか、そんなうまい話があるなんて」がこれでもかと詰まった食事法です。「ゆるい糖質制限の食べ方」ですが、ポイントは、糖質をゆるく制限すること以上に、「脂とたんぱく質をしっかりとる」「満腹になる」というところが肝です。拙著『糖質疲労』でさらに詳しく解説しています。

<本稿は『糖質疲労』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)


【著者】
山田 悟(やまだ・さとる)
医師。医学博士。北里大学北里研究所病院副院長、糖尿病センター長。
1994年慶應義塾大学医学部卒業。糖尿病専門医として多くの患者と向き合う中、2009年米医学雑誌に掲載された「脂質をとる食事ほど、逆に血中中性脂肪が下がりやすくなる」という論文に出会い衝撃を受ける。現在、日本における糖質制限のトップドクターとして患者の生活の質を高める糖質制限食を積極的に糖尿病治療へ取り入れている。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医、日本医師会認定産業医。著書に『糖質制限の真実』(幻冬舎新書)、『運動をしなくても血糖値がみるみる下がる食べ方大全』(文響社)など。「ロカボ」という言葉の生みの親でもある。

『糖質疲労』(サンマーク出版) 山田悟

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