6年生の勉強時間、学習への取り組み「SAPIX流」の作法
中学受験に挑む小学6年生。どのような方針で、どれだけの勉強時間を充てて、どうやって学習の精度を上げればいいのでしょうか。
『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』よりお届けします。
6年生前半に基礎を固め、後半は入試に向けて準備を進める
6年生は「受験学年」といわれます。この1年間をどのように過ごすかで、最終的な結果が大きく変わってくるのは間違いありません。
とはいえ、6年生の前半の間は、引き続きどの教科も各単元の基礎を固めていくことになりますので、その点では5年生の学習と同じです。
ただし、内容はさらに高度になるので、より精度の高い学習が求められることになります。
学習の精度を上げるために必要なことは?
学習の精度を上げるためのポイントは、主に次の3点です。
①勉強時間をきちんと確保したうえで、課題に優先順位をつけて取り組む
②授業に集中する
③自分に厳しく取り組む
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
① 勉強時間をきちんと確保したうえで、課題に優先順位をつけて取り組む
6年生になると、扱う内容が高度になる分、問題を解いたりその直しをしたりするのに時間がかかるようになります。そのため、5年生のときよりもさらに学習時間を確保することが必要になります。SAPIXに通う6年生の学習時間についてアンケートを取った結果が次のグラフです。
これを見ると、塾のない日曜日などは8時間以上も頑張る子がかなりいることがわかります。
6年生になると、家庭で取り組むべき課題も一気に増えます。
参考までに首都圏のSAPIXの場合、6年生前半では、火曜日と木曜日の17時~21時に平常授業が、土曜日の14時~19時に志望校別の授業があります。平常授業と土曜授業のそれぞれについて算数・国語・理科・社会の教材があり、すべてこなすのは至難の業です。
無理にすべてこなそうとすると、一つひとつの学習が雑になりがちです。そうなってしまうと、学習時間に比して得られる効果がとても小さくなってしまいます。塾の先生のアドバイスをもとに、優先順位をつけて教材に取り組むとよいでしょう。
そして、優先度の高い教材については、内容を消化できるまできちんと時間をかけて取り組むことが大事です。
② 授業に集中する
「授業中に先生の話をしっかり聞いて、それを活用できる子は必ず伸びます」とSAPIXの先生は言います。
ポイントを具体的に挙げると以下の3点です。
(ア)先生の話を集中して聞くことができる
(イ)聞いた話を的確にメモできる
(ウ)テキストの解説に書かれた内容だけではなく、授業中に聞いた話の内容も復習する
(ア)と(イ)の重要性についてはすでに説明した通りですが、これらは(ウ)を実行するために必要なことです。
授業中、先生は単に問題の解説をするだけではなく、押さえておくべき概念の確認や、単元同士のつながりの紹介など、テキストには載っていない重要なことをいろいろと話しています。
それらをただ聞き流すだけにしてしまうのか、それとも、きちんと聞いてメモをとり、家で再度復習して理解を深めるのかで、得られる力は変わります。
授業に集中し、その場で理解を進められている子は、家でさほど長い時間をかけなくても復習を終えることができます。
限られた時間を上手に使うためにも、授業を有効に活用したいものです。
③ 自分に厳しく取り組む
いかに自分に厳しくできるか。最終的にはこの点が学力に大きく影響してきます。
6年生であったとしても、最初からこれができる子はごくわずかで、まだまだ自覚のない子も多いです。さまざまな経験をしていく中で精神的に成長し、徐々に受験生としての自覚が芽生えていくのが普通です。実際、「6年生の夏あたりからようやく受験生らしくなった」ということも少なくありません。
本来は何も言われなくても自分から勉強するというのが理想ですが、なかなかそうはならないものなので、親や塾の先生から、自覚を促していく必要があります。
とはいえ「〇〇しなさい」という指示だけでは、なかなか自覚は芽生えません。
本人と話し合いながら、努力することや、自分で工夫することの重要性を伝えるなど、大事なことに気づいてもらえるようにしたいものです。
たとえば、「目新しい問題を解くのは好きだけど、似た問題を繰り返し解くのは面倒……」と同じ問題を繰り返し学習することを嫌がる子は一定数います。
確かに、同じようなことを繰り返す勉強は面白いとはいえないので、忍耐力が必要です。
「でも、必要だからやらなきゃ」
こう思えるかどうかが大事です。
受験勉強を続けていく中では、気乗りしないときや、疲れていて早く休みたいと思うときもあるでしょう。無理しすぎるのはよくありませんが、そうしたときに、
「この問題だけは理解してから勉強を終えよう」と思うのか、
「なんとなくあやふやだけど、まあいいや」と思ってしまうのか、
で結果は変わってくるでしょう。
1回だとわずかな差ですが、積み重なれば大きな差になるものです。
<6年生でやっておくべきこと>
学習
□内容がさらに高度になるので、学習の精度を上げていく
□後半の時期には志望校対策も。過去問演習を通じて志望校の出題形式に慣れておこう
□模試を活用し、実戦に慣れる
□スランプに陥ったときほど、丁寧な学習を心がける
準備
□前期の間に第一志望の学校を定める
□後期には併願校を絞り込み、受験パターンを検討していく
□出願の準備は余裕をもって行う
Point 「自分に厳しく」勉強できるように!
<本稿は『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅勉強法』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock
【著者】
小川晶子(おがわ・あきこ)
教育・学習ライター、絵本講師
(協力)
SAPIX小学部