アップルとグーグルのルーツに通じる起業家の気質
普通の人とはまるで違う視点を持ってビジネスに挑む人は周囲から「異端者」と呼ばれ、時に蔑まれたり、疎まれたりします。しかし、そうした異端者こそが、ビジネスの世界では大きな成功を果たすケースがあります。
『起業マインド100』より20日連続でお届け。
10日目は「わが道を行け」
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著者:ケヴィン・D・ジョンソン(Kevin D. Johnson)
ジョンソン・メディア社の社長、連続起業家
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わが道を行け
大成功をおさめた有名な起業家の中に、若いころ異端だった人が何人もいるのは偶然ではない。また、この反逆的な性質は10代や20代前半に顕著で、このころ若者は自分の生きている世界に疑問を抱き、規則をつくる権威に挑む。
たとえば、怖いもの知らずのティーンエイジャーだったアップルの設立者、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックは長距離電話をごまかす違法な装置をつくり、無料で長距離電話をかけたい顧客に150ドルで売った。
こうした装置は1970年代にドラッグの売人やいかがわしい輩のあいだで広まった。通話履歴を追えないからだ。実際、バークレー・ブルーとオウフ・トゥバーク(それぞれ違法なビジネスをする際のウォズニアックとジョブズの偽名だ)は、あやしい客に装置を売ろうとしたところ、銃を突きつけられて装置を奪われた。もしジョブズと親友のウォズニアックが違法な装置にまつわる経験をしなかったなら、アップルは存在しなかっただろう、とジョブズは語ったそうだ。
おそらく、銃で脅された体験は、ふたりが闇市場ではなく株式市場でビジネスをおこなう動機になったにちがいない。
反骨精神が企業の要
25年ほど時間を進めると、現在の世界を変えた2人の異端者もよからぬことを企んでいた。「バックラブ」という新しい検索エンジンの設立者たちは、スタンフォード大学のコンピューター・サイエンス学部の建物の搬入口をせっせと下見していた。
ふたりの学生は新しいコンピューターを盗むつもりだった。それらは高い演算能力を必要とする学生独自の検索プロジェクトで使用されるために、コンピューター・サイエンス学部に納入されたものだ。
ふたりの盗人とは、グーグルの設立者、セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジだ。ふたりの担当教授によると、このコンピューター・サイエンス学部の備品に対する不敬な行為は驚きではなかったという。ブリンとペイジは教授のことを「あのやろう」呼ばわりして、よく挑戦してきたからだ。どうやら逮捕される可能性ぐらいでは、ふたりの異端者──あるいは、プロセッサーの海賊──がアイデアを追い求めるのを止められなかったようだ。
ちょうどその数年後、大学生の私は期せずして、反抗的な若い専門技術者がいたずら好きなエネルギーを起業家としての才能に変換する伝統を引き継いでいた。
私はギャングのような人間に製品を売ったり、所属するコンピューター・サイエンス学部からコンピューターを盗んだりもしていなかったが、大学の通信システムよりも評判のいいシステムを独自に開発したことで、思いがけず大学のシステムをひそかに貶めていた。
学生たちはネットワーキングの問題で頻繁に通信が途切れる大学のシステムよりも、ウェブをベースにした私のシステムを信頼した。
実際、話がしたいと学長から学長室に呼び出されるほどの影響力があった。私がこのシステムを開発したのは、ウェブをベースにしたソフトウェアを開発する提案を大学側に却下されたからでもある。このソフトウェアを使えば、学生同士のコミュニケーションが円滑になり、履修登録を電話登録からオンライン登録に移行できるのだ。
私が独自のシステムを開発したのは、却下されたことに対する私なりの仕返しだった。この体験が、そのあと起業家になり自分の会社を興したいという欲求の礎になった。
異端であれ
異端者たちが成長してもその反抗的な性質は残り、起業家としての成功に大きく貢献する。いわゆる10代の反抗は破壊的な革新を招き、現状を支持する層を混乱させるような新しい方法を生み出す。
こうした異端者は世界を変えるために進み続ける。
反逆者であり続けたいという欲求のままに生きる理由が必要なのなら、いまそれをひとつあなたは手に入れたことになる。
<本稿は『起業マインド100』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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