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小くよ76 知らないほうがいいこともある

 何かの出来事が起こると、そこから先のことを考えて心配になる。どんどん悪い方向のシナリオが浮かんでくるかもしれませんが、ほとんどの場合、そうはなりません。

 2月にスタートした「Sunmark Web」の特別企画として『新版 小さいことにくよくよするな!』が説く格言を100日連続でお届け。

 76日目は「知らないほうがいいこともある」

知らないほうがいいこともある

 むかしむかし、ある村に賢者が住んでいた。村人たちはなにか心配ごとがあるたびに彼のところに行っておうかがいをたてていた。

 ある日、村の農夫が大あわてで彼のところにやってきた。

「賢者さんよ、大変だ、助けてくれ。うちの雄牛が死んじまって、畑を耕す手助けがなくなっちまった。こんな最悪なことがほかにあるかい?」

 賢者は答えた。

「そうかもしれない、そうじゃないかもしれない」

 農夫は村に引き返し、賢者の頭がおかしくなったと村人たちにふれまわった。こんな最悪なことが起きたのに、なぜ賢者はわからないんだろう?

 その翌日、農夫の畑のそばに1頭の若くてたくましい野生の馬が現れた。農夫はその馬をつかまえて雄牛のかわりにしようと思いついた。馬をつかまえた農夫は有頂天になった。畑仕事がこんなに楽になるとは! 彼は賢者のところに謝りにいった。

「賢者さんよ、あんたは正しかった。雄牛が死んだのは最悪のことじゃなかった。あれは天の恵みが姿を変えただけだったんだ。雄牛が死んだからこそ新しい馬が手に入ったんだからな」

 賢者は、また言った。

「そうかもしれない、そうじゃないかもしれない」

 またかよ、と農夫は思った。こんどこそ賢者は気がくるったにちがいない。

 だが、その農夫はなにが起きるのか知るよしもなかった。数日後、農夫の息子がその馬に乗っていて振り落とされた。息子は足を骨折して畑仕事が手伝えなくなった。農夫はまた賢者のところに行った。

「あの馬をつかまえたのは最高のことじゃないって、なぜわかってたんだい? あんたの言ったとおりだったよ。わしの息子はケガをして畑仕事を手伝えなくなっちまった。こんどこそ最悪なことが起きたんだよ。あんたもそうだと認めないわけにはいかんだろう」

 だが賢者は彼を穏やかな顔で見つめ、同情のこもった口調で答えた。

「そうかもしれない、そうじゃないかもしれない」

 賢者があまりに無知なことに腹をたてた農夫は、地団駄を踏んで村に引き返した。翌日、ふいに火ぶたがきられた戦争のために健康な男を一人残らず徴兵しようと、軍隊が村にやってきた。農夫の息子だけが徴兵をまぬかれた。ほかの若者はみんな戦死する運命なのに彼だけは命が助かった。

 この小噺(こばなし)にはパワフルな教訓が含まれている。なにが起きるか私たちには知るよしもない──知っていると思っているだけなのだ。

 私たちはつい大げさに騒ぎたて、頭の中で悪いことばかり起きるシナリオを書きあげる。ほとんどの場合、それはまちがい。落ち着いていろいろな可能性に心を開いていれば、やがてすべてはよくなると信じられるようになる。

「そうかもしれない、そうじゃないかもしれない」を忘れないように。

<本稿は『新版 小さいことにくよくよするな!』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock


【著者】
リチャード・カールソン(Richard Carlson)
心理学者。ストレスコンサルタント。ユーモアにあふれ、率直でわかりやすく、しかも誰にでも実践できそうな「くよくよしない」ヒントを提唱。著作やテレビ出演、講演多数。著書に『(文庫)マンガで読む 小さいことにくよくよするな!』(サンマーク出版)などがある。

【訳者】
小沢 瑞穂(おざわ・みずほ)

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