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10〜12歳のコミュニケーション力を高める親の習慣

日常の中の小さなことから、人生を左右する大きな決断まで、子どもが大人になる過程では「自分で決めること」が数えきれないほどあります。

残念ながら、そのすべてに親が手助けしてあげることはできません。「自分で決められる子」になることが、子どもにとっても親にとっても最善の道なのです。

「自分で決められる子」になるために必要な力の一つが、「コミュニケーション力」。日々の暮らしの中でどんな習慣を取り入れられれば、コミュニケーション力を育めるのでしょうか。

「3〜9歳のコミュニケーション力を高める6つの習慣」(3月15日配信)に続き、『自分で決められる子になる育て方ベスト』より、10〜12歳の子どもが日々の暮らしに取り入れられる習慣を世界の最新研究からご紹介します。

『自分で決められる子になる育て方ベスト』(サンマーク出版) 柳澤綾子
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<10〜12歳 大人のコミュニケーションへの準備>

欧米教育の常識「show&tell」を家庭に導入する

 欧米の教育現場では、「show&tell」という時間があります。これは、自分の好きなものや事柄について短いプレゼンを行う時間のこと。日本の「朝の会(ホームルーム)」に近いイメージの時間帯に行われます。

 積極的に手を挙げて発言できる力は、コミュニケーション力の向上のみならず、この後に出てくる「自己肯定感」や「諦めない心」などにもつながっているといわれています。

 この「show&tell」は家庭でも子どもがプレゼンする機会を作ることで取り入れることができます。

お題「自分について」をプレゼン

 時間を取って、自分自身についてどんなテーマでもいいので発表してもらいましょう。初めは家族の中などの少ない人数で練習をして、少しずつ慣れてきたら段々と場所や規模を拡大していく方法がおすすめです。

 例えば、夕食の後の時間などに、今日発見したことについて家族で一人ずつ30秒くらいで発表してみるのもいいでしょう。慣れてきたら時間を1分、3分、5分と延ばしてみたり、「いつ、誰が、どこで、何を、なぜ、どのように」を組み入れるなどのルールを作ってみると、話す力が向上します。

プレゼンを質問で深化させよう

 自分に興味を持ってくれている人に悪い感情を抱くことは少ないといわれています。コミュニケーションとは一方的に話すものではなく相互のやり取りですから、家族内でのプレゼンに慣れてきたら、聞き手が質問するようにしましょう。

深掘りの質問をして能動的に会話に参加してくれると感じることは、双方にとっていい影響をもたらすといわれています。話している自分では気づけなかった視点に気づけたり、聞き手はこの後に「質問をする」と意識して聞くことで、話を深く聞く習慣を身につけられるのです。

お題「近未来の自分」で真剣ディスカッション

これから自分が何をやりたいのか、やるべきなのか、そのためにはどうしたらいいのかを具体的に考えて、子どもに話してもらいましょう。子どもの希望を聞いたら、「親に何をしてほしいのか」もディスカッションしてみましょう。

 コミュニケーションは、

1.               自分の立場、考えなどを適切に把握し、
2.               自らの考えを整理し、
3.               それを適切な方法と手段で相手に要約して伝え、
4.               4双方向の理解を得ること

 が求められます。

 まずは身近な人たちとの練習を通じて、この訓練をしていくようにしましょう。なかなか家族内でゆっくり話をすることもないと思いますので、いい機会だと思って、楽しみながら取り組んでもらえればいいですね。

 例えば、塾に行くか行かないかを話し合うとします。

「私はどうしてもサッカーを続けたいので中学受験はしたくないです。だから塾には行きたくないです!」「サッカーの強い中学校に行きたいので、そのためにお友だちの〇〇君が行っているあの塾に行きたいです」などのように、意見をまとめて、子ども自身の言葉で希望を伝えてもらいましょう。

「この辺りの子は誰も塾には行っていないのに、どうして自分だけ行かなくてはいけないのか、お母さん説明してください」など、親が説明を求められる場合もあるはずです。しっかりとディスカッションできると、よりよい効果が望めるでしょう。

<本稿は『自分で決められる子になる育て方ベスト』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>


【著者】
柳澤綾子(やなぎさわ・あやこ)
医師、医学博士。東京大学医学系研究科公衆衛生学客員研究員、国立国際医療研究センター元特任研究員。麻酔科専門医指導医。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。公衆衛生学を専攻し、社会疫学、医療経済学およびデータサイエンスを専門としている。15年以上臨床現場の最前線に立ちながら、大学等でも研究し、海外医学専門誌(査読付)に論文を投稿。年間500本以上の医学論文に目を通し、エビデンスに基づいた最新の医療、教育、子育てに関する有益な情報を発信している。自らも二児の母であり、データに基づく論理的思考と行動を親たちに伝える講演や記事監修、執筆なども行なっている。『世界一受けたい授業』『J-WAVE TOKYO MORNINGRADIO』『VERY web』など、メディア出演、連載記事執筆多数。現在は株式会社Global Evidence Japan代表取締役として、母親目線からの健康と教育への啓発活動も精力的に行っている。著書に『身体を壊す健康法』(Gakken)がある。

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