見出し画像

頼みごとに「忙しいので」と断るよりもカドが立たない言い方のコツ

 仕事を頼まれた時やプライベートな誘いを受けた時、上手に断れない人は少なくありません。言い方によってはカドが立つこともありますが、「断る=拒絶」ではないということにも注意が必要です。

 どうやって上手に断ったらいいでしょうか? 「よけいなひと言」を「好かれるセリフ」に言いかえるパターンを141例、15章のシーン別に分けて解説しているロングセラー『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑®』より、今回は「断り方」の言いかえパターン(×よけいなひと言、○好かれるひと言)を3つご紹介します。

『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑®』(サンマーク出版) 大野萌子
『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑®』

「イエス」と「ノー」の意味がある「大丈夫」は誤解を招く

✖️大丈夫です

○わかりました できません

「大丈夫」というのはもともと「立派な男」という意味で、「しっかりしていて安心できる様子」を表す言葉です。そこから派生して、「わかりました」「できます」の意味で使われることが一般的でした。

 ところが最近では、反対の意味の「やりません」「いりません」「できません」といった断り文句として、「大丈夫です」が使われるケースが目立ちます。そのため誤解が起きやすくなっているのです。

 私の講師仲間も、資料に載せる体験談の準備をお願いしたとき、「あ、それは大丈夫です」と言われて送られてくるのを待っていたら、相手は断ったつもりでいたため大変な目にあったことがあると言っていました。

 プライベートで親しい人と話す場合は、「大丈夫」の使い方ですれ違うことはあまりないと思います。お互いの〝話しグセ〟がわかっているからです。しかし、多種多様な人とやりとりするビジネスシーンで、「イエス」と「ノー」の正反対の意味を併せ持つ言葉を使うのはトラブルのもと。特に何か頼まれたときに、「大丈夫です」を使うのは危険です。

 できるときは「できます」「わかりました」、できないときは「できません」「厳しいです」と意味を明らかにすると、誤解を招かないので安心です。

「忙しい」は「あなたのための時間はありません」と言っているようなもの

✖️今ちょっと忙しいので

○今週は厳しいですが来週でしたら

 何か頼まれたときに、「忙しさ」を理由に断るのはよくあること。「忙しいので」「立て込んでいるので」「バタバタしているので」もよく耳にする言葉です。しかしこの断り文句は、「あなたのための時間はありません」と言っているのと同じで、失礼にあたります。失礼にならない方法は、「今週は厳しいですが来週でしたら」と、いつまでならできるのか明示すること。

 断る理由が忙しさではなく、仕事の内容に関する場合は、「その仕事に必要なスキルがまだありません」「業務内容の引き継ぎをしていません」というように、できない理由を、正直に伝えることです。そうすると言われたほうも、別の人に相談するか、できない部分をフォローする手段を検討するなど、対策を考えることができます。

 一番よくないのは、やりたくない仕事やできない仕事まで、すべて「忙しさ」を理由に断ること。そうすると、「この人は言い訳ばかりしてやる気がないんだな」と思われて信頼を失ってしまいます。断ること自体は悪くありません。しかし断り方を間違えると、相手との関係性が悪くなってしまうのです。

 ですから、まずは「できない理由」を伝えて、「代案」がある場合は提案すること。すると断られたほうも、「そういうことか」と理解して不快な思いをせずに済みます。代案は、次につなげる気持ちの架け橋です。

断るときには「理由」を詳しく言わないほうがいい

✖️できればやりたいのですが

○都合が悪いためできません

 空気を読んで人との摩擦を避けたがる日本人は、「イエス」「ノー」をはっきり言うことに慣れていません。そのため、頼まれたことや誘われたことを断るときも、「できればやりたいんですが」「本当は行きたかったんだけど」などと、ついついよけいなことを言ってしまいがちです。

 しかしそう言われると、「やりたいと言うならやってよ」「本当は行きたいなら来ればいいじゃない」と思ってしまう人もいるのです。場合によっては、「本当にその気があるなら他のことを調整してでも来てほしい」と突っ込んでくるかもしれません。

 また、「その日は別の約束があって」と言い訳するのもよくありません。別の予定を優先するのは、「あなたより大切なことがある」ととらえられ、相手の気分を害することもあるからです。断るときは率直に、「その日は都合が悪いので行けません」と言うのが一番です。

 また、断るときに、間違っても「病院に行く」などと嘘うそをつかないことです。

 実際、嘘をついて仕事を休んだ日にディズニーランドで遊んでいたら関係者と出くわして、またたくまに会社に噂うわさが広がって信用を失ったと嘆いていた人もいます。よけいなひと言で墓穴を掘ることもあるのです。

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock

<本稿は『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑®』サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>


【著者】
大野 萌子(おおの もえこ)
日本メンタルアップ支援機構 代表理事

◎関連記事