見出し画像

相手のよさは「ある」かどうかではなく「見る」かどうか

 お互い好き同士で恋愛結婚しても別れてしまう夫婦は少なくありません。日本では3組に1組の夫婦が離婚しています。

 そんな離婚相談を1万件以上受けてきた九州第1号の女性弁護士・湯川久子さんは、「多くの場合、結婚する理由と離婚する理由は同じ」「相手のよいところに目を向けてみると、防げる離婚もあります」と語ります。

 ロングセラー『ほどよく距離を置きなさい』よりお届けします。

『ほどよく距離を置きなさい』

長所も短所も、その人らしさを生み出す特徴

 たとえば「引っ張っていってくれて、決断力がある男」と結婚してみると「強引で、頑固で、私に何の権限もない」といって悔やんだり、または「私の行きたいところに連れていってくれて、ロマンティックなプレゼントをしてくれる男」と結婚してみると「お金にルーズで、浮気グセが発覚」という具合です。

 相談者の多くは「結婚したらあの人は変わってしまって」と言いますが、それは、突然変わってしまったのではなく、もともとそういう性格だったのに、最初はそれを魅力としてとらえていたのだということです。

 長所も短所も、その人らしさを生み出す特徴です。

 出会ったころや、相手にくびったけのとき、特徴は長所としてとらえられます。ところが、結婚して生活を共にしてみると、それが短所に見えてくるもののようです。

 だからこそ、夫婦仲がうまくいかないと思い悩むときは、〝消去法〟でもいいので、夫のいいところ探しをしてみることが大切です。

 私は、離婚の相談に来られた女性にこうたずねてみることがあります。

「次の9項目で、あなたの夫に当てはまるのはどれ?」

1 働かない
2 生活費を入れない
3 暴力を振るう
4 暴言を吐く
5 大酒飲み
6 浮気をしている
7 借金がある
8 子育てに協力しない
9 家事を手伝わない

 これらは、私がこれまで見てきた離婚の原因の中で、妻側からよく聞かされる9項目です。なかには1項目でも離婚を考えたほうがよいこともありますが、この質問をすることで「3項目は当てはまるけど、あとは当てはまらない」というように、夫のよいところに気づく相談者も多いのです。

 今も昔も、女性からもっとも嫌われる男の代表は、酔っ払いと暴力。男性中心の社会だったころは、「それくらい辛抱するべき」「口数の多い女が悪い」と言われることも多くありました。

 今はそういう時代ではありませんから、我慢せずに離婚するのは悪いことではありません。それでも、さっさと縁を切る前に、一度は客観的な視点を持って、相手のよいところに目を向けてみると、防げる離婚もあります。

3つ当てはまっても「あと6つはいいところ」

 以前、夫の暴力に耐えきれずに何度も実家に帰っていた妻が、殴られて腫れ上がった顔で離婚の相談にいらしたことがあります。「協議できなければ、調停を申し立てるほかない」と伝えると、「考えます」と言って帰っていかれたのですが、このとき、彼女に対して前出の九項目の質問をしていたのです。

 2年くらいたったころでしょうか。今度は夫婦で訪れた二人は、幸せそうに微笑み合っていました。

「主人がお酒をやめたら、すっかりいい人になりまして」

 そう語る妻の傍らにはニコニコする夫がいました。

「あのとき、先生が9項目の質問を示されたのです。私が、3、4、5にマルをつけたら、先生が『あと6つはいいところがあるのね』と言われて。そのときは反発していました」と言いながら、少し照れくさそうな妻。

「自分の苦しみを誰もわかってくれないと思ったんでしょう?」と私がニコッとすると、妻もパッと笑顔になりました。

「そうです。自分が世界で一番不幸だと思っていましたから」

 その笑顔のなんと晴れやかで美しいこと。

 一方夫のほうは、妻が弁護士のところにまで相談に行ったことを知り、本気で離婚を考えていることにあぜんとし、猛省したといいます。断酒を己に誓い、自己改革をやり遂げたとき、夫婦に穏やかな日常が戻りました。

 今まで悪いところしか見えずに狭まっていた視野が広がると、笑顔で帰られるということも少なくありません。

 これは、離婚問題にかぎらず、人生で起きるすべてのことに言えることなのです。

一点を見つめる人に
すぐに横に咲く花は
見えていない

――いつのまにか
「欠点メガネ」で
みていませんか?

<本稿は『ほどよく距離を置きなさい』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock

【著者】
湯川久子(ゆかわ・ひさこ)

◎関連記事