正しいことを言うときは、ほんの少しひかえめに
対人関係において、こちらが「正しい」と確信できることであっても、相手に強く言ってしまうと険悪になってしまうことがあります。
どのように言えばいいのでしょうか。60年以上にわたって、法で裁くことのできない人間模様を目の当たりにしてきた湯川久子氏が、人間関係の極意をやさしく説いたロングセラー『ほどよく距離を置きなさい』よりお届けします。
正しいことを言うときは、ほんの少しひかえめに
詩人の吉野弘さんの『祝婚歌』(しゅくこんか)をご存じでしょうか。
夫婦円満の秘訣が詰まった詩なのですが、生きる指針のようにも思えて、私がとても大切にしている詩です。なかでも、一番好きな節があります。
「正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい」
法律相談にいらっしゃる方の中には、弁護士に聞けば法律に基づいた《正しいこと》《正しくないこと》が明らかになり、勝ち負けの判断をしてもらえると思っている方もいらっしゃいますが、人間関係のもつれにおいて、正しさの追求は、解決を生みません。
なぜなら、人の心において、正しさは人の数だけ存在し、真実も、その正しさの定規によって、人それぞれ違って見えるからです。
たとえば、独身時代に貯ためたお金の存在を妻に隠していた夫がいました。法律で言うなら、独身時代の財産は個人のものですから何ら問題はありません。でも、「隠し事をされていたことがゆるせません。信頼されていない気がして」と言う妻からすると、夫は正しくないことをしたということになります。
また、明らかに自分が正しくて、相手が間違っているということがあったとしても、相手を責め、糾弾しても、何の解決にもならないのです。
ものごとのとらえ方は千差万別。
夫婦であろうと、親子であろうと、それを心に留めておくと、人間関係が少しやわらかくなる気がします。
正しさを追求していると
解決から離れていくことがある
――「正しさ」こそ、人を傷つけやすいから
<本稿は『ほどよく距離を置きなさい』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock
【著者】
湯川久子(ゆかわ・ひさこ)
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