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お金のためだけに働く人より好きでやっている人を雇うべき理由

 起業家が事業を広げていくために優秀な人材を雇う場合、金銭的報酬をいくら払うかということには特に目が向きがちです。確かに重要かもしれない一方で、働く側にとってお金だけが理由にならないということもあるかもしれません。

 『起業マインド100』より20日連続でお届け。8日目は「人はお金のためだけに働くわけではない」

『起業マインド100』(サンマーク出版)  ケヴィン・D・ジョンソン(Kevin D. Johnson)
『起業マインド100』

人はお金のためだけに働くわけではない

お金のために働く人ではなく、好きでやっている人を雇いなさい。

(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー 作家、哲学者)

 私はすっかり勘違いをしていた。幸いなことに、それは初歩的な失敗だったので、すぐに修正することができた。

 三番目のビジネスとしてカレッジマガジンを始めたとき、私は出版業のことをまるで知らなかった。私にわかっていたのは、数社の大企業が全面広告に6000ドルを払ってくれることだけだった。雑誌そのものをつくるコストは約2600ドルだった。創刊号では約16ページを広告にあてる予定だ。計算してみると利益率が非常に高そうなので、私は事業を進めながら学ぶことにしたのだ。

 高品質な雑誌をつくるのに膨大な仕事量が必要なことも私は知らなかった。それほど時間がかからずに出版できると思っていたので、出版業に参入した1カ月後に発売日を設定し、その日付を公表した。正式な発売日までの1カ月は、私がおぼえているかぎり最もストレスのたまる時間だった。私たちの小さなチームは懸命に働いた。

 長い話をまとめると、雑誌は発売日に間に合い、たくさんの読者を獲得して大きな成功をおさめた。キャンパスを歩き回り、私の雑誌を読む学生の姿を何度となく目にするのはすばらしい気分だった。ところが、発売前に見積もっていた大きな利益はすぐには実現しなかった。そうなるまでに数年かかった。利益が少なかったのは、人件費が高すぎたからだ。

無報酬のライターの方がいい仕事をする?

 雑誌を始めたとき、十分に成長した企業のように、スタッフに給与を支払うのはあたりまえだし誇らしく思っていた。学生がただで働いてくれるとは思ってもいなかった。どうして彼らがそんなことをしないとならないのだ? 私は、学生たちは小遣い稼ぎのために働くのだと思っていた。

 それはまちがいだった。

 雑誌が好評を博すにつれて、ライターからの問い合わせが増えた。予算の制限に達していたので、何人かのライターに無償で書いてもらうことにした。皮肉なことに、無償のライターの方が有償のライターよりもいい仕事をすることが多かった。その事実を呑みこむのに時間はかからなかった。

 少しずつわかっていったのだが、学生のライターはお金のことなど気にしない。両親から十分な小遣いをもらっているからだ。そのかわりに、経験や単位、最も重要となる大学での影響力を求めている。キャンパスで一番話題の雑誌のライターをしていると、たちまちインフルエンサーになれるのだ。こうした影響力は特に下級生には魅力的に映る。

 ほどなくして、私はもうライターと金額の交渉もしなければ、話し合うことすらしなくなった。そのかわりに、コンサートのバックステージパス、授業の単位、ジャネット・ジャクソンにインタビューする機会、MTVスプリングブレイクへの旅行、一流企業への推薦状などの便宜をはかった。私は雑誌を活用し、それに付随するさまざまな特典を使って優秀な人材を集めた。

対価はお金だけではない

 こうした経験を通じて私は、人がお金以外のもののために働くことを知った。それどころか実際には、無償の方が一生懸命働く人もいた。

 人を動かしたり、相手の情熱と自分の目標が一致するものを見つけられたりしたら、人材を選び、その人材をチームにとどめておくうえで完璧な立場に身を置いていることになる。私は若くて経験も浅かったため、お金以外には価値のあるものを提供できないと勘違いしていた。それは大きなまちがいで、私は文字どおりその代償を払った。

 サービスの対価を決める前に、金銭的報酬の代わりに提供できるものがないかじっくり考えよう。相手がほしいものを自分がもっていて、それを活用できるかもしれない。

<本稿は『起業マインド100』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock

【著者】
ケヴィン・D・ジョンソン(Kevin D. Johnson)

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