変わった人こそ起業家に向いていると断言する理由
他人から「変わっている」と言われるような人と、非の打ち所がないような人。起業家に向いているのは前者です。
『起業マインド100』より20日連続でお届け。
7日目は「変わっていても、それでいい」
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著者:ケヴィン・D・ジョンソン(Kevin D. Johnson)
ジョンソン・メディア社の社長、連続起業家
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変わっていても、それでいい
誰よりも成功し裕福な起業家を思い浮かべるとき、人は変わり者の集団を思い浮かべない。そのかわりに、おそらく尊敬を集める優秀な人物を思い描くだろう。そうした人物はバランスがとれていて、落ちつきがあり、リーダーとしてのすばらしい資質を備えていると思われている。
だが皮肉なことに、調査結果は正反対だ。起業家は、特にテック系の場合、かなり変わっている。むしろ、データによると、変わっている方がふつうなのだ。
キャスビジネススクールのジュリー・ロギンがおこなった起業家に関する最近の調査によると、調査対象の35%が失読症を患っていたという。失読症患者は人口全体では10%しかいない。こうした人々が雇われるより起業を目指す傾向があるのは、ひとつには、失読症が読解力や理解力に影響のある学習障害のため、これに対処するために彼らの業務を委託して人に任せてしまうからだと考えられる。
現代で最も有名な失読症の起業家は、アップルのスティーブ・ジョブズ、シスコのジョン・チェンバース、ヴァージングループのリチャード・ブランソンだろう。
ふつうでないからクリエイティブ
別の研究では、注意欠陥障害(ADD)も起業家のあいだではよく見られるという。エコノミスト誌の最近の記事で、「ADDの人が最終的に自分のビジネスを経営する割合は平均よりも6倍多い」とあった。ADDの人は整理整頓が苦手で、物事を先延ばしにし、集中力を欠くことで知られている。こうした性質はふつう悪いものとして捉えられる。
だが、キンコーズの設立者、ポール・オーファラのように、こうした障害をもつ起業家の中には、その特徴を長所として捉える人もいる。それは、ADDの人が「ふつう」の人とは異なる方法でクリエイティブだからだ。
さらに、多くの起業家がアスペルガー症候群の症状を示す。
メイヨー・クリニックによると、これは「社会性や他者と効果的にコミュニケーションをとる能力に影響を及ぼす発達障害」だという。軽度の自閉症という人もいる。アスペルガー症候群の人は、私のようなソフトウェア開発者の中に一番多いだろう。
彼らはオフィスの隣の席の人にでも、直接話すよりメールやショートメッセージを送る方を好む。私たちにはロボットのようで、共感性がないように見えることが多い。
シリコンバレーでは、アスペルガー症候群の症状を示す起業家が何人もいる。むしろ、そうしたふるまいはクールなのだ。
大半の人からはおたく呼ばわりされるだろうが、シリコンバレーでは、社交家の方が変わり者と見なされる。
奇行は投資家をひきつける
こうした障害や疾患や症候群にくわえて、起業家には単にはっきりとおかしな習慣がある。スティーブ・ジョブズにはLSDの使用など、かなりおかしな習慣があった。それどころか、彼は自分の創造性はLSDの使用のおかげだとしていた。他のCEOにも女装してカラオケを歌ったり、長さを測らずにはいられない強迫観念があったり、水中で想像にふけったり、毎日同じ服を着たりといった話がある。
おかしなことに、優れた起業家に共通する、いわゆるこうした奇行が投資家をひきつけている。コンピューター・サイエンスの用語を使うと、パターンマッチングが広まっているのだ。
同じようにすばらしいテック企業2社のCEOのどちらかに資金提供するとして、ひとりは快活でひとりは内向的だったら、後者が選ばれるだろう。いくぶんバカげているように思えるが、こうしたことはますます頻繁に起きている。
そのため、起業家として成功するのなら、変人でいて損はない。それに、成功して富裕層になったら、本当はあなたがどれほど変わっているかなど、周りの人は忘れてしまうだろう。そして、いずれにしても、誰もがあなたと友だちになりたがる。
<本稿は『起業マインド100』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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