本だからこそ濃密に描ける「葛藤と対立」について - Book Lover REPORT vol.2
こんにちは、サンマーク出版の黒川精一です。
2024年9月にスタートした「Book Lover LABO 本の未来研究所」の第1回のイベントでは、「本じゃなくていい時代の本のつくり方」というテーマでお話をさせていただきました。
そこでは、本は「行先(目的)」と「ルート(手段)」で構成されていて、多くの本がたとえば、
やせたい
お金を増やしたい
英語が話せるようになりたい
時間を効率よく使いたい
といった普遍的な「行先」に対して、自らの本の「ルート」の優位性を強調する本作りに終始した結果、読者から見ると「違いがよくわからない」状態になっていることをお話ししました。
この「ルート合戦」を行っている以上、他の本との違いが出せないどころか、スマホを通して触れるあらゆるメディアに可処分時間を奪われ続けてしまう。
これからの本づくりにおいて大切なのは、「ルート」ではなく「行先」を変えることだとお伝えしました。
『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス / ダイヤモンド社)は、それまで多くの本が「お金を増やす」という行先に向けてどういうルートがあるかを説明してきたのに対し、お金を使い切って「ゼロで死ね」という新しい行先を提案してベストセラーになりました。
そして、その考え方に対してテレビで賛否が話し合われたり、具体的な手法がスマホを通してみるYouTubeやインスタグラム、Xで語られたりもしました。
『DIE WITH ZERO』は、これまでの本と行き先を変えることで、スマホはライバルではなく味方になることを証明してくれています。
*2024年9月のイベントをまだご覧になっていないメンバーさんは10月31日まではLABOのアーカイブでご覧になれます。また、メンバーになれば10月31日までご覧になれますので、以下からどうぞ。
◎どうすれば本の「新しい行先」を思いつきますか?
そのイベントの後、LABOの何人かのメンバーさんから、「行先を変えることの大切さはよくわかりましたが、どうすれば自分に新しい行先が思いつくようになるのでしょうか?」というメッセージをいただきました。
確かに、そのためには日々の練習のようなものが必要で、それを繰り返し行うことで、自分にそれまでなかった視点がプラスされ、新たな行先を思いつくようになるものです。
今回のレポートでは「どうすれば自分に新しい行先が思いつくようになるのか?」というご質問に対する僕なりのアンサーをしようと思います。僕も七転八倒の途中であり、「こうしたほうがいい」と断言できることはありませんが、創作に対する何らかのヒントになれば嬉しいです。
まずは、『グランメゾン東京』というドラマの話から始めます。
◎本づくりのヒントが詰まったドラマ『グランメゾン東京』
料理に人生を懸け、パリに店を持って二つ星を獲得した型破りなフランス料理のシェフ・尾花(木村拓哉)が、自身のおごりから招いた事件により店も仲間も全てを失ってしまう。そしてどん底に転落した尾花が、シェフ・倫子(鈴木京香)と出会い、日本に戻って再びシェフとして生き直そうと奮闘する姿を描く物語です。
木村拓哉さん演じる尾花は天才的なシェフであり、料理に対して一切の妥協を許しません。そんな尾花はときに仲間の緩い仕事ぶりを許すことができず、厳しく当たって怯えさせたり、対立したりします。
尾花と日本で共にフレンチレストランを経営することになった鈴木京香さん演じる倫子は、尾花の料理への情熱と探究心に惹かれながらも、チームと不協和音を起こす彼に手を焼きます。
尾花も、倫子も、それぞれの信念を持ちながら、次々と起こるトラブルに心を乱され、その度に前進したり後退したりしながら成長していく姿を描いたドラマ。それが『グランメゾン東京』です。
僕はドラマや映画、芝居、ミュージカル 、音楽、料理などが好きで、仕事柄、それらを見たり聴いたりしながらそこに「本づくりのヒント」がないかを探しています。
実際、ヒントになる要素はたくさんあるのですが、その中でも特にどこにフォーカスしているかというと「葛藤」です。
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