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認知症を遠ざけたい人に知ってほしい食事の3原則

「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は(各年齢の認知症有病率が一定の場合)、2025年には約675万人(有病率18.5%)と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています(生命保険文化センターHPより)。

人生100年時代、人が生涯に「食べる」回数は数万回も増えることとなりました。何をどう食べるかで、体も、脳も、心も変わる中で、認知症を遠ざける食事はあるのでしょうか。『100年栄養』よりお届けします。

『100年栄養』(サンマーク出版) 川口美喜子

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「血管」と「腸」を整える食事に変えよう

 残念ながら、「これで認知症にならない」という食べ物や薬はありません。「認知症」自体、まだわからないことが多く、いまのところ栄養療法は確立されていないのです。

 しかし、いくらかわかってきたこともあって、第一に、「認知症の発症には生活習慣病が深く関わっている」とされます。ですから認知症の予防には、まず「慢性疾患を防ぐ」が大切で、食生活や運動、休養、持病の治療など、基本的な健康づくりが必要です。

 その上で、食事では次の3つのポイント「血管を健康に保つ」「腸を鍛える」「ファイトケミカルをとる」を意識して、健康的な暮らしを整え、続けていきましょう。

 全身に酸素と栄養を運ぶ「血管」。この血管の健康を保つためにはバランスのいい食生活が大切で、とくに「糖質が食事全体の6割を超えない」を守ることが大事です。

 菓子パンだけ、麺だけ、お餅だけ。そのような食事はほとんど糖質オンリーで、食後に血糖値が急激にアップダウンして血管を傷つけます。また、糖質をとりすぎると、脂肪をため込む体質になり、筋力や免疫力が落ちていきます。

腸活と認知症予防に「豚汁」を飲もう

 もう1つのポイントは、「腸によい食事」ということです。そもそも人間の脳は、腸から進化したもので、腸と脳のすこやかさは相関するとされているからです。

 腸によい食習慣は、「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」を組み合わせてとる、「シンバイオティクス」を続けることです。

 ……と、難しいカタカナが登場しましたが、このカタカナを覚える必要はありません。まず、プロバイオティクスとは「腸ではたらく善玉菌を多く含む食べ物」のことで、おもに発酵食品があげられます。味噌、納豆、ぬか漬け、キムチ、ヨーグルト、チーズなど。これらを食べると、善玉菌の数量アップが期待できます。

 一方、プレバイオティクスとは「善玉菌を育てる食べ物」のこと。オリゴ糖や食物繊維(水溶性食物繊維と不溶性食物繊維)を多く含む食べ物をとると、それらが善玉菌のエサとなって、菌が活性化します。ブロッコリー、シイタケ、キャベツ、タマネギ、トウモロコシ、ワカメなどがあげられます。

 これら、「善玉菌を多く含む食べ物」と、「善玉菌を育てる食べ物」の両方を合わせてとるのが、「シンバイオティクス」という考え方です。組み合わせて食べることで、2つの効果がねらえると同時に、相乗効果も期待できます。

 この組み合わせの食べ方ができるおすすめが、「豚汁」です。

 味噌はご存知、発酵食品として、プロバイオティクスの代表格であり、そこに、食物繊維の多いゴボウ、コンニャク、きのこなど、プレバイオティクスの食材が豊富に入った、具だくさんの豚汁は、腸内環境を整えて、認知症予防にもいい影響をもたらすものと考えられます。食卓に頻繁に登場させましょう。

 また、雑穀類を入れて炊いたごはん(食物繊維が豊富)を、きな粉をまぶしたおにぎりにして、ぬか漬けなどの漬物(発酵食品)と一緒に食べても、シンバイオティクスが成立します。

 ヨーグルト(発酵食品)にキウイフルーツやデーツなどのドライフルーツ(食物繊維が豊富)を入れて食べるのもOK。ブロッコリー(食物繊維)などの蒸し野菜を食べるなら、マヨネーズだけでなく、そこに味噌(発酵食品)を加える。「発酵食品と食物繊維を一緒にとる」を合言葉にしましょう。

細胞を酸化ダメージから守るファイトケミカル

 さらに、「ファイトケミカルをとる」という視点から、毎食どこかに、色鮮やかな野菜や果実をとりいれます。色が鮮やかな食べ物には抗酸化作用の高い「ファイトケミカル」が多く含まれます。

「ファイトケミカル」とは、そもそも植物が、紫外線や虫から身を守るためにたくわえている成分です。人間にとって必須栄養素ではないものの、脳をはじめ、体の細胞を酸化のダメージから守るはたらきがあるとわかっていて、健康づくりのためにぜひ、十分にとりたい成分と考えられています。

 脳細胞が減少して起こる認知症の予防として、ファイトケミカルを多く含む次の食品をまんべんなく食べていきましょう。

[身近なファイトケミカルの例:色/おもな食品/成分名]
・赤/トマト・スイカ・金時人参/リコピン
・黄/アスパラガス・ブロッコリー・トウモロコシ・イチジク/ルティン・ゼアキサンチン
・橙/にんじん・カボチャ・パプリカ・その他の緑黄色野菜/β-カロチン
・紫/ナス・ブルーベリー・紫イモ・黒豆/アントシアニン

<本稿は『100年栄養』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

川口美喜子
(撮影:吉濱 篤志)

【著者】
川口美喜子(かわぐち・みきこ)
医学博士、大妻女子大学家政学部教授、管理栄養士