起業家は「ライバルを定めたほうがいい」と言える根拠
ビジネスの世界において競合相手はほとんどの場合、存在します。緊張関係から抜き差しならない状態になることもありますが、張り合う相手がいるということはプラスの側面もあります。
『起業マインド100』より20日連続でお届け。
13日目は「敵を見つける」
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著者:ケヴィン・D・ジョンソン(Kevin D. Johnson)
ジョンソン・メディア社の社長、連続起業家。数百万ドル規模のマーケティングとコミュニケーション企業を数年率いており、フォーチュン100に選ばれる最も重要な企業との仕事も多い。革新的なリーダーとしてABCの番組〈グッドモーニングアメリカ〉、CBS、オプラ・ラジオに出演。ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルにも取り上げられる。さらに、CNNにも度々出演している。
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敵を見つける
ビジネス史上最大のライバル関係のひとつはアップルとマイクロソフトだろう。
この巨大企業2社は何十年ものあいだテクノロジーの分野を席巻している。アメリカだろうが中国だろうが世界のどこに行こうと、同じ展開が待っているだろう──アップルのユーザーがマイクロソフトのユーザーを嫌う。その逆もまたしかり。
この2社の設立者のあいだにさえ、東海岸と西海岸のラッパーの対立のようなライバル関係がある。アップルの共同設立者、スティーブ・ジョブズはマイクロソフトの共同設立者、ビル・ゲイツについて次のように言っている。「ビルには根本的に創造性がなく、何ひとつとして生み出していない。だからこそ、ビルはいまテクノロジーよりも慈善活動に満足しているのだと思う。彼はまるで恥ずかしげもなく人のアイデアを盗んだ」
反対に、ゲイツはジョブズについてこう言った。「(スティーブ・ジョブズは)テクノロジーのことはまったくわからなかったが、何が効果的かについては驚くほど鼻が利いた」。他にもゲイツはジョブズのことを「根本的におかしい」とか「奇妙な欠陥がある」と表している。ふたりの設立者が軽蔑し合っている証拠はいくらでもある。
ライバルを探せ
アップルとマイクロソフトのように、ビジネス界には他にもたくさんのライバル関係がある。いくつか例を挙げると、コカ・コーラとペプシコーラ、マクドナルドとバーガーキング、フォードとゼネラルモーターズ、ベライゾンとAT&T、ボストン・レッドソックスとニューヨーク・ヤンキースなどだ。
こうした企業やチームはマーケットシェアと世界制覇をめぐって争っている。企業スパイを送り込んだり訴訟を起こしたり、きな臭い事態になることもある。
ネガティブな側面はあるが、このような激しいライバル関係にはあまり語られないメリットがある。ライバル企業は、自社が成長するモチベーションとなる、競争の激しい環境を助長するのだ。起業家ならこの現象と、それを自社のアドバンテージになるよう利用する方法をしっかり理解しておいた方がいい。
アトランタの雑誌出版社として、私はすぐに競争相手を1社見つけて特定した。この戦略はうまくいった。私たちの目標は、その会社に打ち勝つことだった。
倒産まではいかなかったが、私たちは市場の勢力争いを激化させた。私たちのつくるものはすべて、絶対に競争相手のものよりはるかに質が高くなるようにした。実際、私たちの雑誌が成功すると、ついに競争相手はコストをかけてカラーで印刷するようになった。その時点で私たちの勝ちだとわかった。このわかりやすい変更が起こった結果、私のチームのモチベーションが上がり、競争相手を圧倒すべくさらに活気づいた。
起業したらすぐに、打ち負かしたい敵を選び出そう。
宿敵を定めることで、共通の目標を中心にしてチームが団結し、自然とモチベーションが高まる。1対1の試合で負けたい人はいない。四半期に売り上げを35%増やすといった格式ばった目標を据えてチームを鼓舞するのと、互いに憎み合っている明確な敵を中心にしてチームを奮い立たせるのは別の話だ。
こうした基本的なゲームの手法を取り入れた戦略を実行することで、競争心が高まり、少なくとも誰にとってもビジネスがもっとおもしろいものになる。
<本稿は『起業マインド100』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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