「人の管理はできない」と痛感した男が達した悟り
人を雇う経営者、あるいは部下を従えるリーダーにとって、「人の管理」は大きなテーマ。しかし、それはとても難しいことでもあります。
『起業マインド100』より20日連続でお届け。
11日目は「人を管理せず、期待値を管理する」
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著者:ケヴィン・D・ジョンソン(Kevin D. Johnson)
ジョンソン・メディア社の社長、連続起業家
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人を管理せず、期待値を管理する
おそらく私は史上最悪の管理者のひとりだろう。それは、私が人よりもコンピューターを相手にする方がうまくやれる内省的な性格だからだ(コンピューターは鼓舞する必要もなければ、締め切りに間に合わないのを子どものせいにもしない)。起業したあとで、私は管理するのが苦手なことに気がついた。だが、すぐにわかったわけではない。
会社を設立してから最初の3年間は、従業員を管理するうえで問題はなかった。むしろその時期は、自分以外の誰かを管理していたとすら思えない。最初の数年間に私の会社に入った人は全員、報酬をもらっていなかった。
彼らはただ、可能なかぎり最高の、ウェブをベースにしたパブリッシング・ソフトウェアを開発するという展望を共有し、それを実現するべく熱心に働いていた。彼らの大半は私のような技術系の人間で、それほど管理の必要がなかった。
私たちは疲れを知らない労働倫理と高い期待値を共有し、何も言わず献身的に取り組んでいた。最新のすばらしい管理用ソフトを導入して、従来のように管理し始める必要もなかった。たとえそうしたかったとしても、そうするだけの時間はなかったのだが。
モチベーションが違う人と働く
ところが、給与をもらうことばかりでアイデアにもチームにも興味のない人間を雇い始めると、問題が起こった。同じモチベーションを共有していない人を仲間に入れると、耐えがたい頭痛の種が新たに生じるのだ。
例を挙げると、私はあるグラフィックデザイナーを雇ったのだが、彼は遅刻の常習犯で、いつもその言いわけを用意していた。彼は当時の私よりもずっと年上だったので、私には対処の仕方がわからないような言いわけをたくさんした。妻のせいにし、子どものせいにし、ぼろい車のせいにした──あらゆるもののせいにした。
思いきって、「そうした事情はもう考慮しない」と伝えるまで、彼が締め切りに間に合わないことを許してしまったため、チームの制作に遅れが生じた。特に苛立ちが募る時期だったが、やがて私は直感的に悟った。
人ではなく数字を管理する
人を管理することなどできない、管理できるのは期待値だけだということに私は気がついたのだ。葛藤が生じるのは期待が外れたときのことが多い。私とグラフィックデザイナーとの関係もこの原則をよく表している。
このデザイナーに明確な期待値や、その期待値が守られなかった場合にどうなるのかを伝えるかわりに、手のかからない同僚たちと同じように、私は彼を扱ってしまったのだ。これは変えなければならなかった。
その結果、私は、わが社とチームが彼に求めることを詳細かつ念入りに記載した文書にした。彼はその書類にサインした。その時点から、もし彼がデザインを遅れて納品したら、私は彼のサインと期待値が書かれた文書に言及した。彼自身が同意した書面に勝る言いわけなどなかった。これは強力な管理ツールだった。
結局、私はそのグラフィックデザイナーを解雇するしかなかった。仕事はすばらしかったが、めったに締め切りを守れず、彼の性格と労働倫理はチームに合わなかった。それどころか、彼はチームの士気に悪影響を与えた。
このデザイナーや他の手に余る従業員に対処することで、私は貴重な教訓を得た。人を管理することは不可能なので、しないこと。そんなことをしようとしたら、頭がおかしくなるだろう。そのかわりに、いっしょに働いたり雇ったりする人の期待値を明確にし、それを管理するのだ。
関係が始まる最初の段階から期待値をはっきりと表し、それを守らせることで、あとで困惑したり誤解を生んだりするのを避けられる。こうすれば、起業した当初の私よりもはるかに上手に管理する道を歩んでいることになる。
<本稿は『起業マインド100』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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