何をどう食べるか無頓着な人に知ってほしい「食べることで体が変わる」の意味
「食べられない」
「食べているのに元気がでない」
「病気で食が細い」
低栄養は、病気になりやすくし、その予後も悪くします。健康長寿をかなえるためのポイントの一つが食べ方を変えること。高齢者栄養ケアの第一人者が“長生きする食べ方”を指南した『100年栄養』より冒頭の試し読みをお届けします。
人は20年間で2万回以上食べている
みなさんはじめまして。おいしく食べること、食べてもらうことが大好きな管理栄養士、川口美喜子です。
私は大妻女子大学家政学部で未来の栄養士や、管理栄養士を育てる教育に携わっています。大学に来る前には、2013年3月まで故郷である島根県の、島根大学医学部附属病院の「栄養治療室」に勤務していました。
高度医療を提供する急性期病院で、病気やけがで入院した人の栄養状態を診断し、必要な栄養が整った病院食を提供するのが仕事でした。
いまも、自分自身のフィールドワークとして、東京都内のいくつかのクリニック、そして、病気や介護相談のキーステーションとなっている施設で、管理栄養士としてお食事の支援や、栄養相談、訪問栄養ケアなどを行っています。
ところでみなさんは、人生で何回ごはんを食べると思いますか?
人生が50年、80年時代だったころと比べて、いまや100年時代ですから、1人の人が生涯に「食べる」回数は格段に増えることとなりました。20年分とは数にして2万1900回分。大きな差ですね。
しかも多くの人は、何をどのように食べたら健康になれるか、体内で栄養はどんなふうに使われるのか、くわしく教わる機会がほとんどないまま、自由に食べ続けます。
そして、やがてみな平等に「老い」を迎えます。すると、食べて代謝する機能は衰えるので、何を食べて十分な栄養をとるかは、若いとき以上に重要になります。それは人生の後半の質を左右すると言っても、言いすぎではないかもしれません。
何をどう食べるかで、体は変わります。体調が変わると、脳や、心も変わります。
よりよく生きるために、体のために、「選べる」のが栄養です。ほとんどの人は無理やり誰かに「食べさせられる」ことはありませんから、食べるという行為は本来、自発的で、自律的なもの。自分で「選べる」ことなのです。
「健康で長生き」を選ぶのは自分。何をどう食べるか、という選択肢を、私たちは常に「選んでいる」わけです。すこやかに天寿をまっとうするためのヒントを、本書ではたくさんご紹介しましょう。
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【著者】
川口美喜子(かわぐち・みきこ)
医学博士、大妻女子大学家政学部教授、管理栄養士