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肩こりのひどい人が「もむと、ますます肩がこる」悪循環の正体

 デスクワークの後のマッサージ、首や肩のストレッチ、温めグッズ――。肩こりに悩む人なら覚えがあるでしょう。でも、不思議なことに、こった箇所を一生懸命ほぐしても、翌日にはまた同じ状態に。

 世界的に見ると「肩こり」に悩む国民は日本人が圧倒的に多いのです。なぜでしょうか? そして、なぜ私たちは今までの対処法で肩こりを根本的に解決できないのでしょうか? その謎を解く鍵は、意外にも私たちの「常識」の中に隠されていました。『肩こり、首痛、ねこ背が2週間で解消!「巻き肩」を治す』よりお届けします。

『肩こり、首痛、ねこ背が2週間で解消!「巻き肩」を治す』(サンマーク出版) 書影画像
『肩こり、首痛、ねこ背が2週間で解消!「巻き肩」を治す』

こっているところをもんでも、肩こりは解消しない

 肩こりで悩んでいる方に、「肩のどの辺がツライですか?」と伺うと、答えはふたつに分かれます。

 半数の方々が「ここ!」というのは、僧帽筋(そうぼうきん)という筋肉の上側。もう半数の方々は、そこよりも少し背中側にある菱形筋(りょうけいきん)と、肩甲挙筋(けんこうきょきん)のちょうど境目あたりです。

 自分の肩こりの場所は、僧帽筋の上側と思っている人は多いのですが、よくよく話を聞き、からだを見てみると、本当にこりを感じているのはそこではなく、その裏にある菱形筋と肩甲挙筋あたりであることも多いのです。

 では、それらの筋肉を、上から直接グイグイ押したり、強くもんだり叩いたりすることで、その肩こりは解決するのでしょうか?

 残念ながら、答えは「いいえ」です。

 自分がこっていると感じるところに直接触れ、強くもんだり押したりする古典的なやり方は、一時的な緩和にはなりますが、根本的な解決にはなりません。

 では、どうすれば肩こりは治るの?

 これについての正しい答えは、それらの筋肉がどこから来て、どこへいっているか、どこから出て、どこへつながっているか、を知ることがカギになります。

 菱形筋は背骨の両サイドからはじまり、肩甲骨の内側全体にくっついています。肩甲挙筋は首の骨の両サイドからはじまり、肩甲骨の上側にくっついています。一番大きな僧帽筋でさえも、首~背骨の両サイドから始まり、大きく背中半分を覆うような形で、肩甲骨の上半分にかぶさっています。

 つまり、肩こりとはただ筋肉そのものに原因があるわけではなく、「背骨と肩甲骨」にあることがわかります。

 背骨と肩甲骨を正しい位置に戻す。そうすれば、菱形筋と肩甲挙筋と僧帽筋という、3つの筋肉が不必要に伸ばされたり、引っ張られることはありません。すると、必然的に肩はこらなくなるのです。

「イタきもちいい!」にだまされるな!

 こんなこと、ありませんか?

・なぜかマッサージに通えば通うほど肩がこる
・デスクワークでは10分もしないうちに背中の真ん中が張ってくる
・片方の肩や首ばかりがこる
・寝るときにも肩がこっている
・いつも同じ側だけ下着やエプロンの肩ひもが落ちる
・シャツやスーツなど、どちらかの袖が短くなる
・いつも同じ側だけでカバンや買い物袋を持っている

 ひとつでも思い当たる項目のある人は、おそらく肩こり以外にも、慢性的な頭痛や腰痛などにも悩まされているのではないでしょうか?

 マッサージにいかれる人のなかには、最初は月に1回でも十分だったのが、2週間に1回、週に1回、と効果の持続もだんだんと短くなってきて、最近ではもんでもらった翌日にはもう、昨日と同じ状態に戻っている……という人もいるかもしれません。

 残念ながら、マッサージにいって「こり」をもみほぐしてもらっても、肩こりは治りません。

 それどころか、強いマッサージでますます肩はこってしまうのです。

「ほぐし」とは気の利いた表現ですが、結局は筋肉を強く押すということです。

 ただでさえこって硬くなった筋肉を、親指でグイグイ押してマッサージをすると、筋繊維はいったん壊れます。そしてそれが再生するときに、より強きよう靱じんな繊維に変性していき、筋肉はかえって「硬く」なるのです。

 強く押せば押すほど筋肉が「ほぐれ」て柔らかくなると思いがちですが、残念ながら人間の筋組織の構造は、そのようにはなっていないのです。

「イタきもちいい!」という感覚を求めて、筋肉を強く押したりもんだりするマッサージ行為を長年くり返している人の肩や背中は、まるで鉄板のように硬く変性しています。

肩こりは都市伝説である!?

 私の整体施設を訪れる方でも肩こりを治したいとおっしゃる方は多いですし、あなたの周囲にも「肩こりでつらい」という方々も多いのではないかと思います。

 でも、世界でも圧倒的に肩こり人口が多いのは、日本だけだということをご存じでしょうか?

 それではなぜ、日本人だけに肩こりは多いのか?

 それは「肩こり」という言葉があるからです。

 肩こりという言葉が存在しない国には、肩こりの人はいません。もしもあなたが肩こりという言葉を知らなかったとしたら、あなたの肩はこっていなかった!?

 たとえば今までまったく肩こりの自覚がなかったのに、温泉や美容院などでマッサージをされたときに「こってますね!」といわれ、「そうか、自分は肩こりなのか」と思い込むことで肩こりがはじまる人もいます。

 不思議なことに、肩や背中がパンパンに張っていても、まったく肩こりの自覚がない人もいれば、逆に肩も背中もユルユルで、筋肉には何の問題もなさそうなのに、口を開けば肩が重い・だるい・こる・張ると訴える人もいます。

「筋肉が硬い=肩こり」

「筋肉が柔らかい=肩こりではない」

 と、考えがちですが、一概にそうともいえないのです。問題は、筋肉の硬さではなく、筋肉の中身です。

 どんなに表面上は硬くても、中で流れるものさえ流れていれば、こりや重だるさはどこにも感じませんし、中の流れが滞っていれば、触れた感じの表面上は柔らかくても、本人はまるで筋肉が固まっているような張りやイタ苦しさを感じます。

 筋肉は骨から骨へとつながっているため、たとえば骨格がズレることによって筋肉が常に伸ばされていると、その筋肉の中にあるものも同じように伸ばされます。

 筋肉の中にあるもので、肩こりに関係するものといえば、血管・リンパ管・神経の3つですが、この中でもとくにカギとなるのは血管です。

 何らかの理由により伸ばされた筋肉の中では、血管も同じように伸ばされていますから、それによって血流が悪くなっている場所では、たとえ表面上は筋肉が柔らかくても、あたかもこってしまったような重だるさや詰まりを感じます。

 筋肉の中にある血管を輪ゴムに例えるとわかりやすいかもしれません。たとえば輪ゴムの両端を持って左右に引っ張ると、ほんの少し引っ張るだけでもゴムは細くなりますよね?

 この輪ゴムと同様に、筋肉の中では血管にも同じことが起きます。しかし輪ゴムと違って血管の中は空洞ですから、引っ張られて細くなると内径の空洞も伴って狭くなり、必然的に血液が通りにくくなります。そして血管内の血流が悪くなると、あらゆる老廃物が排泄(はいせつ)されにくくなり、さらに筋肉内の酸素も少なくなります。

 つまり、重い・だるい・こる・張る・詰まる・痛いという感覚は、筋肉自体の硬さによって感じているものではなく、血流が滞った場所に溜(た)まる老廃物(乳酸やピルビン酸など)が排泄されなくなることで感じる症状なのです。

 老廃物そのものによる症状、老廃物から排泄される物質により、神経が刺激されて感じる症状、血流が悪くなることで筋肉内の酸素が不足し、筋の酸欠状態から発生する症状など、痛みやだるさの原因は同じ肩こりでもいろいろあるのです。

<本稿は『肩こり、首痛、ねこ背が2週間で解消!「巻き肩」を治す』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by shutterstock


【著者】
宮腰 圭(みやこし・けい)
整体家/「骨と筋」代表/「アカデミー骨と筋」主宰

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