見出し画像

ブラックフライデーに店を閉めたアウトドアブランドが大成功を収められた理由

 企業経営者が同じ業界に属する他社の動向をにらみ、他社と似たような戦略を取ることは少なくありません。

 一方、カリフォルニア大学バークレー校で大人気の授業「Becoming a Changemaker」。講義を担当するアレックス・ブダク氏は「業界全体が同じ方向に進もうとしているとき、大胆かつ原則に基づいた行動を取れる企業は、その戦略の恩恵を受けられる」と説きます。

 今回はアウトドアブランドの2社の端的な例をご紹介。著書『自分の能力が変わるカリフォルニア大学バークレー校超人気の授業』より、お届けします。

★★★★★★★★★★★★★★
著者:アレックス・ブダク
社会起業家、カリフォルニア大学バークレー校教員
★★★★★★★★★★★★★★

『自分の能力が変わるカリフォルニア大学バークレー校超人気の授業』(サンマーク出版)
『自分の能力が変わるカリフォルニア大学バークレー校超人気の授業』

「世間一般」の逆をいく

 パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナードは、1953年にロッククライミングを学んでいた14歳のときに自然への愛に目覚めた。

 一般的な起業家とはまるっきりタイプの異なる人物で、創業当初からビジネス界の常識に反する会社を築き上げ、最初に開発した製品は再利用可能なスチール製のハーケン〔クライミング時に岩や氷に打ち込んで支点や手掛かりを確保するための釘〕。ロッククライミング界に革命を起こした。

 しかし、このハーケンは予想外の環境への悪影響ももたらした。利益よりも自らの価値観を優先させた彼は、当時としては異例の決断をして、大きな収入源であったこの製品の販売を完全に中止した。

 その後、アウトドアウェア分野に軸足を移したシュイナードは、パタゴニアをライバルとは一線を画す企業に育て上げる。同社は1985年から収益の10%を環境保護団体に寄付し始めた(2002年に売上の1%に変更)。

 従業員には無料の託児所やオープンプランのオフィスを提供し、カリフォルニア州ベンチュラのビーチ近くに本社を建て、昼休みに従業員がサーフィンできるようにした。自由闊達な気風は現在も変わらず、同社は価値観やビジョンに沿った独自の路線を歩みつづけている。

 パタゴニアが製造するほぼすべての衣料品にはリサイクル素材が使われている。環境負荷を減らすために無駄な買い物を控えるよう、ニューヨークタイムズの広告で「このジャケットを買わないで」と衣料品メーカーらしからぬ呼びかけをしたことでも知られている。

 独自の道を歩んでいるにもかかわらず──あるいは、だからこそ──シュイナードは愛され、持続可能で、影響力のある会社を創り上げた。シュイナードは、世間の価値観に迎合せず、その逆を行く。

 この特性は、役割や分野を超えて成功したチェンジメーカーの多くに見られるものだ。業界全体が同じ方向に進もうとしているとき、大胆かつ原則に基づいた行動を取れる企業は、その戦略の恩恵を受けられるだろう。

皆が割引するなかで「突出」する方法

 ストックホルムに住んでいたとき、私はスーパーマーケットの棚に並ぶアメリカ製の商品を見るのが好きだった。コンブチャのボトルからヤンキースの帽子まで、様々な品がはるばるスカンジナビア半島までやってきていた。

 その中に、1つだけ衝撃を覚えた輸入品があった。それは、「ブラックフライデー」(感謝祭の翌日に店舗で大売り出しが行われ、人々が大量に買い物をする習慣)だ。とくに不思議に思ったのは、スウェーデンでは感謝祭を祝う習慣がなかったことだ。

 だが私の釈然としない思いとは裏腹に、このアメリカ独特の伝統は、ショッピングモールにもストックホルムの文化にも浸透していった。

 ブラックフライデーのコンセプト自体はごく単純な試みとして始まった。

 もともと、年間の売上目標の達成のためにホリデーシーズンを頼りにしていた店舗の多くは、感謝祭の翌日に特別セールを行い、1か月間のクリスマス商戦の幕開けにしていた。

 だが次第に、店舗同士の競争が熾烈さを増す。その結果、ブラックフライデーにできるだけ長時間営業するために、金曜日の朝6時に開店する店が増えた。この流れはすぐに歯止めがきかなくなり、金曜日の午前0時に開店する小売業者も出てきた。さらに時間は早まり、ついには木曜日の夕方6時にブラックフライデーを始める店も出てきた。それは皮肉にも、感謝祭当日に家族が自宅に集まり、神に感謝を捧げて食事すべきとされた時間だった。

 ブラックフライデーをできるだけ早く、積極的に展開しようとする動きはアメリカの小売業界全体の潮流となり、どの店舗も追従せざるを得なくなった。たとえそれが感謝祭の伝統的な祝い方を崩すものでも、競合他社よりも早く開店すれば利益が得られたからだ。

 アメリカの企業全体が同じ方向に進む中で、独自の道を切り開く勇気ある企業もあった。

 2015年、アウトドア・ブランドのREIは、ブラックフライデーに店舗を完全に閉め、消費者に家族や友人と自然の中で1日を過ごすよう呼びかけた。この「#OptOutside」(買い物への執着をやめて、屋外で過ごそう)キャンペーンを展開するのは大きなリスクだった。

 REIの最高顧客責任者ベン・スティールは「まわりからは正気を失ったのかと驚かれた。『なぜ年一番の売上が見込める日に店を閉めるのか?』とね」と回想している。

ブラックフライデーに休んだ結果、売上9・3%増

 たしかにリスキーな決断だった。だがそれは会社の使命に根ざしたものであり、REIのビジネスに関わるすべての人に恩恵をもたらした。

 休日に働かなくてもよくなった従業員はこの決断を歓迎した。消費者からも支持された。ソーシャルメディアによれば、91%もの人が好意的な反応を示している。

 投資家の受けもよかった。ブラックフライデーの休業を初めて実施した2015年、REIの店舗全体の売上は前年比で9・3%も増加した。

 世の中の逆を行くのにCEOや影響力のあるリーダーである必要はない。この考えは誰でも実践できる。

 まずは好奇心を持ち、小さなトレンドに注目することだ。

 ある分野や集団、チームが決まりきった思考や行動をしていると気づくことができれば、その逆に進めばどのような結果が生じ得るかを推察できる。

 人間は集団に従うようにできている。だからこそ、REIのように自らが信じる価値観を貫いたり、シュイナードのように使命やビジョンに結びつく手を打ったりできれば、大きなメリットや変革をもたらすチャンスを得やすくなる。

 それは、企業の戦略を転換するといった大きな行為だけではない。家族内に新しいルールをつくる、子どもの学校で新しいアプローチでボランティアをする、といったことかもしれない。世間一般の考えと逆の行動を取るのは、何よりマインドセットの問題だ。

 そしてこのマインドセットは、あらゆる領域や状況に当てはまるものなのだ。

<本稿は『自分の能力が変わるカリフォルニア大学バークレー校超人気の授業』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock

◎関連記事


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!