小くよ29 いい聞き手になる
いい聞き手になる
子供のころ、私は自分がいい聞き手だと信じていた。だがいまの自分は、10年前よりはましになっているといっても、「まあまあの聞き手」にすぎないと認めざるをえない。
いい聞き手とは、相手の話を途中でさえぎる癖をもたないだけではない。自分の番がくるのをイライラと待つのではなく、相手が言いたいことをすっかり話し終えるまで満足して聞き手にまわるということだ。
ある意味で、相手の話がうまく聞けないというのは私たちの生き方を象徴している。私たちはコミュニケーションを一種のレースのようにとらえがちだ。相手の話が終わると同時に話し出すという時間競争が目標になっているかのようだ。
最近、妻とランチを食べているときに周りの客たちの会話を耳にした。だれも相手の話など聞いていない。「相手の話を聞かない競争」が繰り広げられていた。私も同じことをしてるんだろうか、と妻に聞いてみた。彼女はにっこりしながら「ほんのときどきだけど」と言った。
反応する速度をゆるめて相手の話をじっくり聞くと、もっと穏やかな人になれる。プレッシャーがなくなるからだ。
目の前の相手(電話の相手でも)がなにを言うだろうか、それにどう応じようかとじりじり待つのは、ものすごくエネルギーがいるしストレスもたまることにお気づきだろう。だが相手の話を終わりまでじっくり聞いていると、そのプレッシャーが消えることに気づくだろう。たちまち気分がリラックスし、その気分は相手に伝染する。相手もあなたと時間競争をする必要はないんだと感じて、ゆったりする。
いい聞き手になると忍耐強い人になれるだけではなく、人間関係の質も向上させられる。みんな自分の話をちゃんと聞いてくれる人と話をしたがるものだ。
<本稿は『新版 小さいことにくよくよするな!』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
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