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フランスの衣類廃棄禁止令から地球のことを考えた

モノが増えると、時間は減るし、お金は減るし、ストレスは増える。

お金や教育、家事などの身近なことから、政治や環境問題などのグローバルなジャンルにおいて、「日本において常識とは考えられていないこと」が、実は「世界の常識となっていること」は意外と少なくありません。

ドイツ在住の日本人実業家であり、世界に精通する人気インスタグラマーの谷口たかひささんが48例に及ぶ世界のシン常識をまとめた初の著書『シン・スタンダード』よりお届けします。

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世界初! フランスが売れ残った衣類の廃棄を法律で禁止

 ファッションブランドの売れ残りの廃棄は社会問題化している。

 国連によると、現在起きている気候変動において、世界の温室効果ガス排出量の10%が繊維産業だという。

そんななか、世界初の試みとして、フランスが売れ残った新品の衣類を企業が焼却や埋め立てによって廃棄することを禁止した。

 フランスでは2020年から、循環経済に関する法律が定められているのだが、食品以外で廃棄を規制する法律は世界で初めてだという。

 さて、ファッション業界では衣料に使われる原材料のコットンは中国で作られ、縫い合わせる作業はバングラデシュで行い、販売する場所は日本やアメリカ、といった具合に、原材料の調達から消費されるまでの期間がとても長いという特徴がある。

「期間が長い」ということは、それだけエネルギーも大量に消費することを意味し、温室効果ガス排出量は航空業界と海運業界を合わせた値以上だそうだ。

「ファッション」には地球を守るための伸びしろがある

 またファッション業界はその他の資源も大量に消費する。

 例えば、デニムを1本作るのに必要な水の量は約1万リットル。現在世界で水不足に苦しむ人が増えているが、1万リットルの水があれば、一人の人が10年間助かる計算となる。

 世界の真水はなんと、その20%がファッション業界だけで消費されているというのだ。

 さらにコットンは、他のどの作物よりも農薬に頼っており、我々の多くは、約100グラムの農薬が使用されたTシャツを着ていることになるのだとか。

 ナイロンやポリエステルなど合成繊維を作る時には「亜酸化窒素」が出るのだが、その温室効果はCO2(二酸化炭素)の約300倍。

 こうして数値化してみると、なんともまあ、ファッション業界の惨憺たる現状が浮き彫りになるわけだが、これだけでこの話は終わらない。

 そうやって作られている衣類のうち、そのほとんど(85%)は使用可能であるにもかかわらず、エネルギーを使って焼却したり、埋め立てたり、海に流したりしているのだから。

 それによって、海の生き物を窒息させて死なせていることも現実問題として起こっている。

 そう考えると、「ファッション」は、僕たちが地球を守るために個人で改善できることが盛りだくさんであり、伸びしろしかない分野なのだ。

・むやみやたらに買い物をしない
・捨てる前にリメイクしてみる
・リサイクル品や、長く着れるものを買う
・セカンドハンド(中古品)を買う
・人にゆずる(もらう)
・寄付する
・布を枕カバーやタオルにする

 僕は、もう4年以上世界のどこにも家を持たずに、世界各地を転々とする生活をしているが、所有物はリュックひとつだけ。そのなかに入った衣類は3日分のみだ(冬用にコートとマフラーだけは母の家に置いてもらっているが)。

命は時間でできている

 この話の流れでこう言うと、環境のためにそうしていると思われるかもしれない。

 だが、本来の目的は実は全然違う。

 僕の一番大切なものは、命だ。

 命は時間で、できている。

 そして、モノが増えると、時間は減るし、お金は減るし、ストレスは増える。

 物欲が強い人がいるが、その多くは、精神的に満たされていない部分を、モノを買うことで満たそうとしているだけに見える。

 人間は寝不足の日は、睡眠欲の満たされなさを食欲で埋めようとするため、暴飲暴食しがちだ。

 物欲の異常な強さも同じで、心が満たされていないことを埋め合わせようとしている場合が多いのである。

 だったら僕は、物欲を満たすためにお金と時間を使いたくはない。お金と時間は自分の心を満たすために使いたいのだ。

 そういう意味で、僕は僕の心を満たすためにリュックひとつで十分なのである。

<本稿は『シン・スタンダード』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)


【著者】
谷口たかひさ(たにぐち・たかひさ)
1988年大阪生まれ。日本の大学在学中に留学費用の工面のため10代ながらインターネットビジネス会社を起業し、イギリスのマンチェスター大学へ留学。卒業後、チェーンストアのエリアマネージャー、アフリカのギニアでの学校設立支援、メガバンク/M&A/メディアのコンサルタント、グローバルIT企業の取締役を経験。その後、社会の課題解決を志してドイツへ移住し、起業。2019年、ドイツで気候危機の深刻さを目の当たりにし、「みんなが知れば必ず変わる」をモットーに、気候危機の発信や日本では報道されない世界情勢にまつわる講演を開始。世界中から講演に呼ばれるようになり、日本では1年で515回、全都道府県での講演を達成。2021年には国連総会の司会とスピーチも務めた。趣味は旅と勉強で、訪れた国は約80ヵ国。保有資格は国際資格や国家資格を含め30個以上。

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