一本調子な話し方とメリハリのある口調「人に与える印象」の圧倒的な差
抑揚をつけて楽しそうに話すか、一本調子で話すか――。同じ内容だったとしても、それだけの違いで相手が受ける印象は変わります。
私たちは普段、「何を話すか」ばかりに気を取られがちです。しかし実は、「どのように話すか」という声のトーンが、コミュニケーションの成否を大きく左右しています。
行動科学的な視点から、人間関係における「トゲ」をなくして他者と生きる術に迫った『あいては人か 話が通じないときワニかもしれません』よりお届けします。
「抑揚」が楽しそうに聞こえる
話し手が抑揚のある変化に富んだトーンで話していたら、たいていはポジティブに解釈される。
たとえばスウェーデン人には、ノルウェー人の話し方が楽しそうに聞こえる。ノルウェー人の声のトーンは抑揚があって、とても変化に富んでいるからだ。そうした話し方は、会話に活力をプラスする。
これと対極にあるのが、一本調子でまったく抑揚のない話し方だ。この場合、決して機嫌は悪くないのに、どこか不機嫌に聞こえてしまう。会話にも活気がなくなる。
会話中は、変化に富んだ声のトーンを心がけよう。そうすれば会話に活気が生まれ、相手とも気持ちよく心を通わせることができる。
疲れているときは、どうしても単調な話し方になりやすい。私自身もそう。だから、疲れているときは特に意識して抑揚をはっきりつけるようにしている。
声だけにしたとたん「不機嫌」に聞こえやすくなる
相手とじかに会うときは、さまざまなコミュニケーション手段が使える。手段はたくさんあるが、おもなものは4つ。「言葉」「声のトーン」「ボディランゲージ」「顔の表情」だ。
ところが、電話で話すときにはそうした手段が見えない。この場合、コミュニケーション手段はいくつあるだろうか? 答えは2つ、「言葉」「声のトーン」だ。つまり、こちらのボディランゲージや顔の表情を、「声のトーン」によって伝えなくてはならない。
電話での話し方がニュートラルだと、たいていは少し不機嫌だと解釈される。電話の場合、メッセージを解釈する手がかりは声だけだ。そのため、対面のときと同じ効果を得るには、語調を強めなければならない。対面のときよりも声に活気を持たせ、より抑揚のある話し方をすれば、それが手がかりとなり、こちらの意図どおりのメッセージが伝わる。
ここでも、やはり意識することが重要だ。あなたの声のトーンはどんなものだろうか? 変化に富んでいる? それとも単調な感じ? その話し方で本当に送りたいシグナルが送られているだろうか?
また、ストレスを感じているときは、どんな話し方になるだろうか? ストレスを感じると、私たちは少ない言葉で伝えたり、単調な話し方になったりする。自分の送りたいシグナルが送れるように、ぜひ声のトーンを意識してほしい。
「温かな口調」がバッドニュースも受け入れさせる
相手との関係が対等でない場合、声はさらに重要になる。
そうした上下関係は、上司と部下のような社内の序列にかぎらない。たとえば、会話のテーマについて、どちらかいっぽうの人が精通している場合もそうだ。
医師は、医学知識をとおして権力がある。このほか教師、さまざまな分野の専門家、カスタマーサービス担当者など、幅広い職種でいえる。
おもしろい研究を紹介しよう。職場の上司がポジティブなトーンとネガティブなトーンで話した場合に、社員の反応がどう変わるかを明らかにしたものだ。リーダーの感情豊かな話し方には大きな影響力があるため、それが社員たちに「伝染」する可能性がある。
実験は、上司が悪い知らせやうれしい知らせを社員に伝えるという形で行われた。「きみが目標を達成しなかったので私は落胆している」という言葉を温かい口調で伝えた場合、どの社員もそれをポジティブな対話として受けとめた。
逆に、「きみは目標を達成した」という、うれしい知らせを怒っているような口調で伝えると、うれしい知らせとして受け取れなかった。
また、上司がポジティブな口調で話すグループの被験者は、グループ内の雰囲気がよくなったと報告した。しかも、そのグループは作業をうまく調整し、少ない労力でたくさんの仕事をこなしたという。
いっぽう、ちょくちょく不機嫌になる上司のグループは、協調性に欠け、仕事もあまりはかどらなかった。
<本稿は『あいては人か 話が通じないときワニかもしれません』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 SUNMARK WEB編集部)
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【著者】
レーナ・スコーグホルム(Lena Skogholm)
行動科学の研究者。講演家、教育者。年に80回近く講演や講義を行い、スウェーデンで最も人気のある講師100人の1人に選ばれた。温かさとユーモアにあふれる語り口と、明快でわかりやすい解説には定評があり、2021年には、スウェーデンのすぐれた講演者に与えられるStora Talarpriset賞を受賞した。25年にわたり研究を続ける脳科学にもとづいた人づきあいのメソッドは、職場や私生活で今すぐ役立つツールとして、高く評価されている。
本書『The Connection Code』(Bemötandekoden:konsten att förstå sig på människor och få ett bättre liv.)は、スウェーデンで発売と同時に売上ランキング上位に入り、ベストセラーとなった。国内外で話題の本となっている。
【訳者】
御舩由美子(みふね・ゆみこ)