ネコにとっての「運動不足とストレス」は人間と同じく大敵だ
ネコを飼っている人に知ってほしいのは、人間と同様にネコもストレスが健康の大敵だということ。
栄養に配慮した食事や病気への備えも欠かせませんが、ネコの健康を守るシンプルな方法は、ストレスを減らし、リラックスできる機会を増やすこと。
どうすればリラックスして毎日を過ごしてもらえるのでしょうか?
ネコ心理学者・高木佐保さんの著書『猫がゴロゴロよろこぶCDブック』からお届けします。
猫の健康は運動と環境が決める
おうちでまどろみながらゆったりとしているネコを見ると、「このコの幸せがずっと続きますように」と祈るような気持ちになるものです。
いつも私たちに癒やしを与えてくれるネコたちが、健康でいるために必要なことはなんでしょうか。
栄養や病気に気をつけることももちろん欠かせませんが、ここではネコという動物、さらにはネコの祖先腫であるリビアヤマネコの生態や特性から考えてみましょう。
リビアヤマネコは単独性の動物で、縄張りを持って生活しています。
縄張りの維持には何が必要でしょうか?
ヒトに置き換えて考えてみましょう。
「ここからここまで私の縄張り〜!」としてある土地の一画を自分の縄張りにしたとしましょう。そこに生えている木になる果物は、自分の収穫物です。
そこで心配になるのが、だれかが自分の気づかないうちに縄張りに侵入してきて、せっかく実った果物を横取りしてしまうことです。
リビアヤマネコ、野生のネコが動き回る理由
それを防ぐために必要な行動は……パトロールです!
自分の陣地を頻繁に見回って縄張りの主であるアピールをし、不届き者を見つけたら、追い払う必要があります。これはかなりの運動を要します。縄張りを持つリビアヤマネコもこれと同じことをします。
一方、ネコの社会性はリビアヤマネコより柔軟です。
餌場の質や量に応じて、ネコ集団を作ることもあるからです。そのため、リビアヤマコと比較すると、縄張り維持のための運動量は少ないかもしれません。
多くの野良ネコが暮らすいわゆる「ネコ島」では、船着き場きや特定の民家周辺にネコ集団が見られます。より身近な例だと地域ネコ活動している公園でも見かけることがあります。ネコは祖先種のリビアヤマネコと比較して、人やネコに対する社会性が発達しているのかもしれませんね。
しかし、野生のネコは自分で食料を調達しなければなりません。
肉食に特化しているネコの主食はもちろん肉! 代謝も肉用に特化しているため、植物では満たされないんです。
狩りにはものすごくエネルギーを使います。獲物ももちろん生きるために必死なので、成功率もそこまで高くありません。
ネコ科動物がいつも寝てばかりいるのは、多くの運動を要する狩りに備えて、余計なエネルギーを消費しないためでもあるんです。
以上2点を考えると、リビアヤマネコ、野生のネコは共に日常的によく運動を行っていることがわかります。
ネコを肥満にさせないために
ところがおうちのネコはどうでしょう?
侵入者がいないので、縄張りのパトロールは最小限でよく、おいしいご飯をちゃんともらえるため、借りをする必要もありません。
でもネコなので1日の大半は寝て過ごします。
こうなると気になるのが運動不足です。
そのため、飼い主がネコと積極的にネコと遊んで、運動不足を解消することが健康への第一歩になります。
肥満になってしまうと、さまざまな疾患にかかる確率も上がってしまいます。若いネコだと家中を走り回る大運動会をすることがあるかと思いますが、有り余るエネルギーを発散させるための解決法なのかもしれませんね。
また運動だけでなく、リラックスできる環境を整えてあげることも大切です。
これはすべての動物に共通していますが、あまりにストレスの多い環境に置かれると、肉体的には元気なのに、精神的な元気がなくなってしまいます。ヒトでいう「うつ」状態が動物にも見られるのです。
例えば動物園や水族館では、動物福祉の観点から展示方法が見なされています。従来型のいかにも檻で動物を展示する方法から、段差や掘などをつけることで、檻なしで動物が脱走しないように留意し、その動物の生活スタイルに近いような展示方法に移行しつつあります。
木や草を生い茂らせたり、身を隠せる場所を作ったりして、動物が常に気を張っているような状態を避け、リラックスできる場所を増やす工夫もされています。
やはり自分より大きな異種(ヒト)から常に見られているのは、動物にとってもストレスのようです。
この点、ネコにも同様のことがいえます。
頻繁に家具の位置を変える、知らない人が絶えず家を訪れるなどの環境の変化に対して、ネコはストレスを感じてしまいます。安定した環境のなかでゆったりリラックスしてもらいましょう。
ネコにリラックスしてもらうためには、リラックスを妨げ、ストレスの元になる変化をいかに減らせるかが重要です。
<本稿は『猫がゴロゴロよろこぶCDブック』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock
【著者】
高木佐保(たかぎ・さほ)
麻布大学特別研究員、ネコ心理学者、日本学術振興会特別研究員(SPD)
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