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会社の中で「孤立を感じる人」と「組織とのつながりを感じる人」を分ける3つの条件

 自分は会社に属しているはずなのに、どこか孤立しているような気がする――。

 そんなふうに思って日々を過ごしている人は少なからずいるはずです。組織に属しているかいないかの「境界線」はどこに?

「結果を出したいと頑張る人に陥ってほしくない心理」(5月28日配信)に続き、「変化への不安」の根底心理を探り、「行動できる」自分に変わる方法を解いた『命綱なしで飛べ』よりお届けします。

『命綱なしで飛べ』(サンマーク出版)
『命綱なしで飛べ』(

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【著者】
トマス・J・デロング(Thomas J. DeLong)
ハーバード・ビジネススクールのベイカー基金教授、フィリップ・J・ストンバーグ記念講座元教授(組織行動領域の経営手法を担当)。専門は個人および組織の成功要因。
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組織に属しているかいないかの「境界線」

 ある集団に受け入れてもらうには、そこにかかわろうとすることが不可欠だ。

 残念ながら、あなたもほかの多くの人と同じように、さまざまなことが要因となって、仕事と組織へのかかわりが薄れているかもしれない。

 意識しているいないにかかわらず、組織のメンバーと気持ちが通じ合っていないのだ。

 自分が除外されていると感じたことが原因かもしれない。

 あるいは会社とビジネスが縮小したことでやる気を失い、上司の指示を忠実に遂行できなくなったのかもしれない。

 理由が何であれ、キャリアにも、会社にも、仕事にも、以前のような気持ちで臨むことができない。それができないことで、組織の中で孤立し、より一層孤独を感じることになる。

 自分が実際に孤立しているのか、そう思っているだけかはどちらでもいい。そこから不安が生じて新しいことに挑戦できなくなるし、仕事のやり方を変えられないのだから。

 その結果、「恰好悪くてもいいから望ましいことをしよう」とする勇気を絞り出すことができない。

マッキンゼーは「仕組み」で解決

 社員を組織に受け入れることをコアバリューに据える企業。そんな組織で働ける幸運な人もいる。

 そんな職場なら、自分は自分の仕事に強くかかわっているという「コミットメント」の感覚や、組織の目標と価値観との結びつきを強く感じられるはずだ。

 たとえば、コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーでは、働く人の多くが不安を感じることはない。マッキンゼーが社員を組織に受け入れることを使命に掲げているからだ。

 マッキンゼーの元ディレクターは、次のように話す。

「マッキンゼーについて何か悪いことを言いたいのですが、いい思い出しかありません。何よりいいと思ったのは、私が社を去ると決めたときの対応です。おかげでこの会社で仕事ができて本当によかったと思いました。辞めたあとも会社に迎えられていると思えます」

 この元ディレクターは15年以上マッキンゼーに在籍していた。だから丁重な扱いを受けたと思われるかもしれない。

 だが、2、3年で辞めた人もほぼ同じことを言う。

 マッキンゼーは社員ひとり当たりの支援費用を、ほかのどの会社よりも多く捻出している。社員には6か月の有給も与えられる。

 こんな会社だから、たとえ退社しても誰もがマッキンゼーの一員であると感じるのだ。

 キャリアカウンセリングは、仕事や役職を問わずすべての社員が受けられる。

 さらに驚くべきことに、マッキンゼーを離れた人は、会社とのコミュニケーションが増す。マッキンゼーは、社を離れた人たちが将来、会社に仕事をもたらしてくれる、支援してくれると信じているからだ。

「アンカー」が制約になる

 ここで言いたいのは、会社が社員のことを考えようとすれば、個人が会社に献身しようとする思いも増すということだ。

 だが、会社に献身しているという思いは、会社から与えられるのではなく、個人の「こうしたい」という夢や、「あんなことしなければよかった」という悪夢から生まれたり消えたりすることもある。

 結果を出したい、成功したいと思う者は、自分がどれほど強く会社と密接につながっているか、自分にも他人にも言い聞かせる。会社に忠実で仕事熱心であると思おうとする。

 仕事にも組織にも自分はもはやつながっていないと感じることを認めたくないからだ。

 だが、彼らはマッキンゼーのような活気ある会社で働いていてもアノミー[親密感の欠如によって生じる疎外感]を感じてしまう。

 会社の文化も上司も同僚も、「君はまぎれもなく社の一員だ」と感じさせようとしてくれているのに、自分の内なる何かによって「孤立している」と思い込んでしまうのだ。

 組織とつながろうとすること、そして離れようとすることを理解するために、1970年代後半に心理学者エドガー・H・シャインが唱えた「キャリアアンカー」(キャリアを固定する錨いかり)の考え方を見てみよう。

 キャリアアンカーは「価値観」や「動機」、「必要性」から成っており、これらが私たちの仕事を進める手段や方法になる。

 シャインによると、仕事を通じて「動機」も「才能」も「自己イメージ」も形成される。ここから私たちのキャリアがすべて導かれ、制約を受けるのだ。

 事実、この自己イメージがキャリアアンカーとして機能し、キャリアの選択時にも転職を決断する際にも影響をおよぼす。そして個人の将来の目標を形作り、未来のビジョンに彩りを添える。

 要するに私たちは、さまざまな要因によって、仕事や会社に縛りつけられている、もしくは結びついているなどと無意識下で感じている。

 次の3つを考えてみよう。自分は組織につながっているか、それとも孤立しているか、感じ取れるはずだ。

①技術的な能力
②昇級を続ける「階層の旅」
③組織に属しているかいないかの「境界線」

①技術的な能力──すべては「スキル」あってこそ

 最初に、知識と技術(スキル)を考えてほしい。

仕事を始めるにあたり、まずはしかるべきスキルの習得に邁進しなければならない。これにより、チーム、グループ、組織の戦力として迎えられることになる。高いスキルを身につければまわりから認められ、組織との絆も築ける。自分もそこにつながっていると感じることができる。

 会社としては、技術的な専門知識を身につけた人には、責任を持って多くの仕事をこなしてほしいと求める。個人としては、能力を発揮すれば報酬が得られ、会社とつながっていると感じることができる。

 一方、新たなスキルを習得できなかったり、能力を発揮できなかったりすると、自分は劣っていると感じてしまう。以前は好意的に受け止めてくれていた人たちに、「『あなたは思ったほど賢くない』『仕事もできない』『出世できない』と思われている」と勘ぐってしまうのだ。スキルを習得できなかったことで、もはや自分は会社に期待されていない、排除されていると思い込んでしまうことになる。

 人はそれぞれのレベルで学習する。法律事務所に新しく入れば、法律を知るだけでなく、組織内での円滑な業務の仕方も学ばなければならない。サポートしたり、サポートされたり、ほかの人たちとの働き方を学ぶ必要がある。ほかの人からの支援やフィードバックがない状態でも仕事が進められるようにもしなければならない。税金、訴訟、不動産など、法律の特定分野に長たけているとまわりに思われる必要もある。

組織内の査定や評価もそうだが、「自分は組織に属しているのか」「中心メンバーか」という認識も、マーケティングやセールス、高い生産性といった身につけている技術によって決定される。

②昇級を続ける「階層の旅」──梯子はやっぱり上りたい

 次にしなければならないのは、いかに組織内の梯子(はしご)を上がって昇級を遂げるかということだ。

 子どもが学校に入学するにしろ、教授が大学で仕事を始めるにしろ、新たに組織に加われば、梯子が何本か上に向かって延びているのを目にすることになる。家庭人としても社会人としても成長するには、目の前に立つ梯子を上っていかなければならない。

 昇級し、大きな責任のある仕事を次々に与えられれば、自分は組織の一員だと感じられる。

 だが、組織から外れてしまった、仲間に後れをとっていると思うことがあれば、出世競争に敗れつつあると不安が生じ、居ても立ってもいられなくなる。自分の能力に疑問を持たずにいられなくなるのだ。

 重要な仕事が自分でなく別の人に与えられることがあれば、自分は組織に受け入れてもらえていないある種の「証拠」を突きつけられ、いよいよ不安に駆られる。

 自分ではない誰かが目をかけられているのではないか心配になる。

 ハーバード・ロースクール教授アシシュ・ナンダは、あらゆる昇進条件を満たしてきた、ひとりの若く野心溢れる弁護士の例を挙げている。

 この若い弁護士は香港で国際的な任務にあたるように命じられた。

 ロンドンの本社を離れて5年後に戻ると、大変なスピード出世を果たした同僚たちがいて、自分は後れをとっていると思った。本社を離れてから、会社が重視するものも変わっている。

 どのパートナーも自分の専門分野に集中している。

 自分もパートナーになれたが、本社の新しい部署の責任者には別の人が命じられた。自分より若い人が選ばれたのだ。

 もはや自分は要職に就ける社員ではなくなった。並の弁護士に身を落とし、若手からは早く引退して自分たちにポストを明け渡すべきだと思われている。若い弁護士に陰口をたたかれているのも知っている。

 自分は出世競争に敗れたと思った。これが長年この法律事務所に尽くしてきた結果だ。金の時計は得られず、くやしさで腹部に激痛が走った。

 今話した弁護士の認識が正確かどうかは、ここでは問題にしない。

 彼は新しい部署の責任者に命じられなかった。その事実が、彼に見知らぬ土地に迷い込んだように感じさせたのだ。

 高度な能力と弁護士としてのステータスがあったにもかかわらず、追放されたと思い、さまざまな不安に苛まれることになった。

③組織に属しているかいないかの「境界線」──「思い込み」が現実に影響しはじめる

 3番目に対処すべき局面は、ほかの2つとは違って具体的ではない。だが決して重要でないわけではない。自分は会社の中枢に受け入れられているかどうかという意識にかかわるからだ。

 自分は組織に属しているかどうか考えたとき、次のようなことを自問すると思う。

・自分は組織、チーム、グループと「精神的なつながり」があるか?
・組織の方向性や目的を決めるうえで、「自分の発言」が生かされているか?
・この組織で自分は小さいながらも「意味のある役割」を果たしていると思うか?

 自分はグループや組織とつながっていないと感じる人が、どんな行為を取るか。容易に想像がつく。

<本稿は『命綱なしで飛べ』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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