巧みな質問で相手から深い話を引き出せる人のスゴ技
人と会話するときに「どんな質問をすれば話が盛り上がるかわからない」という人は少なくないでしょう。質問をきっかけに相手と深い話をするために心得ておきたいことは?
齋藤孝さんが40年にわたって続けてきたコミュニケーション講義のエッセンスを紹介した『「考えすぎて言葉が出ない」がなくなる』よりお届けします。
「すごいインタビュアー」を自分に降ろしてくると、質問がしやすくなる
質問が苦手という人は、遠慮がちなところもあると思います。
そんな場合は、自分がインタビュアーになったつもりで相手の話を聞いてみましょう。
とあるユーチューブで聞いた話です。
その人は基本的には話すのが苦手だけれど、尊敬するプロデューサーを自分に降ろしてくると、なぜか話せるようになる。いつもは緊張するけれど、急にどんどん質問ができるようになって、思い切った提案までしてしまうのだそうです。
自分の人格にとらわれているとできないけれど、「自分じゃなくて、その人になり切れば話せる」「プロデューサーという立場だったら話せる」ということがあるのですね。
他の人や別の立場になりきらなくても、頭の中で「これは取材の場面だ」とイメージして、自分の視点を切り替えてみると、今までのぎこちなさが噓のように消えて、話を聞き出しやすくなるでしょう。
私の授業でも、コミュニケーションが苦手だという学生に「インタビュアーになってみよう」と助言した途端、急に優秀なインタビュアーに変身するのを何度も目の当たりにしてきました。
自分の意識を変えるだけで、相手との関係が変化し、話しやすくなります。
相手と深い話ができるプロのインタビュー術
相手に一歩踏み込んだ深い質問ができると、相手との関係も深まることがあります。
そんな質問をするには、二つの方法があります。
① その場で引き出す
一つは、相手に対する事前情報を一切入れずに臨む方法です。
これは、相手とのその場の空気感によって、質問を変えていくやり方です。事前に情報がない分、相手の話を「そうなんですか!」と新鮮に受け止め、生き生きとした受け答えをすることができます。
② 事前情報をしっかり入れる
①とは逆に、事前情報をしっかりと仕入れて臨む方法です。
メディアによく登場している方の場合、何度も同じことを聞かれていることが多いのですが、それは結構つらいものです。
しかし、インタビュアーがその人のことをよく調べていると、「エッ、そんなことまで知ってくださっているの? じゃあ、前提は飛ばして、一番大事なところを話しますね」と、一気に核心に切り込むことができるようになります。
メディア取材の話ではなくても、お近づきになりたい人がいたら、先にSNSで調べておくと、話も深まりやすいでしょう。
最近、旅行をしたとか、仕事で成功した、何か新しい経験をした、といった投稿をSNSで見つけたら、それについて聞いてみると、相手は喜んで話してくれるかもしれません。ほかの人がしないような、一歩深い質問をすることで、関係性を深められるでしょう。
●「初めて聞かれた」質問は心に残りやすい
相手の記憶に残りやすいのは、「そんなこと、聞かれたことがない」という、クリエイティビティの高い質問です(相手が話したい範囲の質問であることは前提ですが)。
この場合、いい意味で相手を驚かせる効果があります。すると「そういう質問を受けて、今初めて考えたんだけど」と、相手がまだ誰にも話していないことを話してくれるかもしれません。
プロのインタビュアー、対談のプロはそうやって、これまでに出てこなかった話を聞いて、話をどんどん発展させていくことができるのです。
<本稿は『「考えすぎて言葉が出ない」がなくなる』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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【著者】
齋藤孝(さいとう・たかし)
明治大学文学部教授
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