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所ジョージさんが近所の男子中学生と交換ノートをしている理由

「え? アレってまだ続いてたんですか?」

「そうだよ、コロナ終わりぐらいからだから、もう4年もやってるよ」

 これは、最近、所ジョージさんと交わした会話。

 どうも! はじめまして! クリタヤスシともうします。ボクは情報番組系をメインに、「バラエティ、お笑い、ドキュメンタリー、報道までなんでもソコソコにこなすよね~」という業界評のおっさん放送作家です。

 そんな微妙なキャリアの中で、所ジョージさんとは35年もの長い間、テレビやラジオの番組で仕事をし続けられていることだけが、取り柄というか自慢というか、いや、とんでもないラッキーに恵まれておるのです。

 今年3月に発売された所さんの新著『幸せのひきがね』(ネコ・パブリッシング)の構成のお手伝いをして、そのときにこれまで、ボクが所さんから頂いた「!!」という数万のオドロキを、ボケつつある頭の中から掘り起こしたのですが、本に書ききれなかった素晴らしいオドロキがある!これは、世に残さなくてはならぬ!と、思い立ち、Sunmark Webで連載としてスタートすることになりました。

 題して「所さんと仕事して驚いたコト」。第1回をお届けします。


所さんとのオドロキの日々

 で、ここ最近では一番のオドロキが・・・

所さんは近所の中学生と交換ノートをしている。

ということだ。

 近所の中学生と交換ノートする大人というと、おそらく悪ガキを正しい道に導く保護司さんくらいしか居ないのだろうけど、もちろん、所さんは保護司はしていない。

 それはある日、所さんの元に一冊のノートが届いたことから始まった。送り主は小学生。そのノートには・・・

 自分は所さんの大ファンであること。

 遠い地方から近所に引っ越してきたばかりであること。

そして

「ボクと絵しりとりのノート交換をして下さい!」というお願いが書いてあった。

 子供というのはオソロシイものでなんと、所さんと「『絵しりとり』のノート交換をしましょう!」と言い出したのだ。

 所さんの忙しさを知らないのだから、仕方ないかもしれないけれどノート交換って……。

所さんの仕事の多忙さは?

 所さんは現在、NHKと民放あわせて地上波で7本、BS1本とレギュラー番組を8本持っている。だから、平日は毎日テレビ番組の収録がある。

 それだけで超大忙しだ。

 これに4月と10月のテレビ改編期、年末年始に単発の特別番組が加わる、さらにCMの撮影など様々な仕事が入ってくるので、所さんのスケジュールには蟻の入る隙間もない。

 だから「日本一キャスティングが難しいタレント」と呼ばれていたりする。

 所さんは、こんな生活を45年以上続けている、というか若い頃はもっと殺人的な仕事量をこなしていた。

 ひも解いてみると、所さんが地上波で司会としてデビューしたのは1979年、当時まだ24歳だった時のこと。

 その頃、ラジオのパーソナリティとして「ラジオ王」と呼ばれマニアックな人気を誇っていた所さんが、テレビ東京の「ドバドバ大爆弾」という番組のメイン司会に抜擢され、その番組は大ヒットし、所さんは瞬く間に各局で争奪戦が行われる売れっ子タレントになった。

 後年、とんねるずが26歳の頃、ダウンタウンが30歳頃にブレイクしたことを考えても、かなり早いブレイクなのだ。

 所さんは、20代後半から10本以上のレギュラー番組のメイン司会、さらに無数の番組のゲスト出演に加え、ドラマ、映画、声優まで仕事の幅を広げ、CMの出演数は昭和、平成、令和と3つの時代をあわせて、もっとも多いと言われている。

 当時のことについて御本人は「寝る時間なんてない、気絶した時だけ休めた」と言うくらいの忙しさだったそうな。

 また、所さんの番組で特徴的なのは、息が長いということ。

「世界まる見え」「笑ってコラえて」「目がテン」は30年以上、「そこんトコロ」は20年も続いてる。

 そして、いずれも、誰かを傷つけるようなものではなく、安心して子供にも見せられる番組ばかりだ。

「目がテン」は科学番組で、ボクも30年ほど構成に関わったのだけど、取材先で、科学者や技術者の方が「目がテン」を見て、科学に興味を持ったことがその仕事に就くきっかけになったと言ってくださることが多く、制作者としては嬉しいかぎり。

 それも、所さんが独自の視点を持って、科学の楽しさ、面白さを伝えてくださったおかげなのだ。

 以前、長寿アニメ番組「ドラえもん」のスタッフに聞いたことがある。

「番組は15年続くと、子供の頃に見ていた人が、親になって子どもと一緒に見るようになる。30年続くとその子供が、また自分の子供に見せるようになる」と。

 確かに今、70代のお年寄りから小学生までの幅広い年齢層に認知されているタレントは、所さんくらいだろうと思う。

 もはや、所さんは「ドラえもん」状態なのかもしれない。

例の小学生はどうなった?

「まさか、引き受けたんじゃないでしょうね?」

「ん? やってるよ、ノート交換!さっきも自転車で届けに行ったし」

「え? ご自分で届けてるんですか?」

「そうだよ。近いからね。いちいち会って渡さないで、ポストに入れてんだよ」

 冒頭でご紹介した小学生が所さんに「絵しりとりのノートを交換しましょう!」とお願いしてきた話。

 絵しりとりとは、イラストだけでしりとりをしていくゲームで、言葉でイラストの説明を書かないで、「そのイラストが何なのか?」を考え合ってコミュニケーションを図るもの。

「りんご~ゴリラ~ラッパ」のような単純なしりとりでは無くて、なるべくひねったしりとりにするのがポイント。

 例えば「割れたコップ~プリンアラモード~どじょうすくい」みたいに、知識や想像力、イラスト力が要る。

 驚いたことに所さんは、会ったこともない小学生のお願いを聞き入れたのだ。

 おそらく所さんらしい、絶妙に面白い「絵しりとり」を作ってノートに書いて、その日に、自転車を漕いで小学生の家のポストに入れに行ったのだ。

 一流芸能人で、自分で自転車を漕いで、近所の小学生に絵しりとりの交換ノートを届けている人なんて、所さんしかいないだろう。

「なんで、引き受けたんですか?」

あの子は、引っ越してきたばかりで、友達がいないじゃん。

だから、ワタシが一番最初の友達になってやろうと思ってさ」

 以来、所さんは、その子と月に1~2回、ノートを交換し続けている。

 ボクはてっきり終了しているかと思っていたけど、今も続いていて、ノートは4冊目になっているそうな。

 ある時、男の子からのノートがぱったりと届かなくなった時があった。

 所さんは、もう飽きたのかな?なにかあったのかな?と心配されたそうだけど、男の子からしばらくぶりにノートが届き、

そこには

「中学受験で勉強に集中しなくてはいけなくて、返せなくてすいません。所さんもお忙しいようでしたら、あまり無理をしないで下さい」

と書いてあった。

「無理するなって(笑)自分からしようって言い出したくせに(笑)」

 所さんは、男の子が少し大人になった様子をとても嬉しそうにしていた。

 ノート交換なんて、面倒くさいことだけど、面白そうだ、と始める。

 時を重ね、やがて男の子は所さんの小さな友達になって行った。

 いつか男の子は大人になり、ノート交換も終わるだろう。

 でも、それは所さんにとっても、男の子にとっても、楽しい人生の記憶になるにちがいない。

所さん流の楽しい人生を作る方法って?

「心が動かされることが多いほうが、人生楽しいんだよ」

 所さんが折りに触れて言う言葉だ。

 じゃあ、心が動くにはどうしたらいいんでしょ?

 所さんの答えは

「面倒くさいことをすすんでやる」だ。

 面倒くさいことをする中で、予想外の事柄が起きる、知恵を使って工夫をして解決する。

 自分で動いて考えるからドラマが生まれて、心が動くのだという。

「他人任せにしたら、他人の人生になっちゃうじゃん。そんなもったいないことしませんよワタシは!」

 言葉通り、所さんは暮らしの中で、面倒くさいことをご自分でする。

 例えば買い物。

 所さんくらいの立場になれば、お付きのマネージャーがいて細々とした買い物なんて代わりにやってもらっいても不思議はないと思うけれど、所さんは自分でコンビニにも行くし、ホームセンターにも行く。

 そして、買い物の中で普通の人とは違うのは

 通販で買ったものは、自宅には送らないということ。

 必ず、事務所に届くようにして、自分の手で自宅に持って帰って・・・
「今日はこれを買ったのだ!」と家族の前で発表会をするようにしていること。

 ボクが「なんで、そんな面倒くさいことをするんですか?」と聞いてみると「子供が、お父さんはなんか物をもって帰ってくる楽しい人だ! って思うようになるじゃん」と、教えてくれた。

 誰だって、普段当たり前にやっていることを変えるのは難しい。

 だけど、ほんの些細な日常の変化を積み重ねると、人生に大きな違いを生む。

ということを、所さんは知っている。

 最後に1つお知らせさせてください。

「当たり前の手前に、幸せのひきがねがある」

 これは、所さん流の幸せな人生についてご本人が書き下ろされた新著『幸せのひきがね』(ネコ・パブリッシング)のメインテーマ。

 この本には、たくさんの幸せな人生のヒントが書かれています。(御本人いわく「立ち読みでいいよ、折りシワつけないでね!」だそうです)

次回は「所さんの人差し指はスマホが反応しない」です!

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部) 


【著者】
クリタヤスシ
放送作家