独学で勉強したい人にChatGPTを勧めたい理由
『83歳、いま何より勉強が楽しい』の著者で経済学の大家、野口悠紀雄さんが、自分で勉強するための強力な手段として挙げるのがChatGPTをはじめとする対話型生成AI。「ChatGPTを使って独学で勉強することもできる」と言います。どのように活用すればいいのでしょうか。検索エンジンとの違いとは?
聞きたいことを直接教えてくれる
対話型生成AIは質問をすると答えてくれます。そして、実にいろいろなことを教えてくれます。
これまでの検索エンジンでは、知りたいことが含まれているであろうウェブサイトを教えてくれるのですが、対話型生成AIは聞きたいことを直接教えてくれます。このため、聞きたいことが簡単に分かります。
IT機器の使い方をChatGPTに教えてもらう
スマートフォンの使い方で分からないところが時々あります。ウェブを見ればさまざまな説明があるのですが、すぐに適切な答えが見つからない場合があります。
そこで、例えば、次のように聞いたらどうでしょうか?
「私は65歳のものです。昔ワープロを使ったことはあるのですが、スマートフォンを使ったことがありません。孫がスマートフォンを買ってくれたのですが、使い方が分かりません。まず、どうしたらよいでしょうか?」
IT機器の使い方に関する記事はウェブに山ほどありますが、適切な内容でないものが多いと思います。私は、タスクバーの使い方がよく分からなかったので、ChatGPTに尋ねてみました。まずは、Teamsのアプリをタスクバーから外せないことの対策。
「PCで、ウィンドウズ11を使っています。Teamsのアプリをタスクバーから外したいのですが、どのようにしたらよいでしょうか? 最も正確に説明しているウェブの解説記事を教えてください」
これに対して、[ウェブを検索して使い方の記事を見るより、適切な説明]が簡単に得られました。
ChatGPTにプログラミングを教えてもらう
プログラムのコードをChatGPTに書いてもらうのは面白いことです。魔法のようです。自然言語でどうしたらよいかを尋ねるとコードを教えてくれます。これを見ていれば、コードが何をしているのかが分かります。専門的な知識がなくても、プログラムを書いていくことができます。Excelの計算等が自動化できます。
また、これで自分のホームページを作ることもできます。今はレンタルサーバーを借りる料金はそれほど高くはありません。自分でホームページを構築することをやってみたらどうでしょう(なお、スパムの攻撃を受けることがあります。決して簡単ではありませんが)。
プログラミングのサービスを有料で提供して、収入を得ることが可能でしょう。現在はネットを通じて、全世界的に職を得ることが可能です。体を動かすのが苦手、人と話すのが苦手と言った人にとっては、適当なアルバイトになるでしょう。
ただしこの分野は若い人たちが大勢競っていますから、それらの人たちと競争するのは、決して簡単な課題ではないと思います。高齢者の独自分野を見いだすのがよいでしょう。
ChatGPTを「先生役」にする
ChatGPTに先生役を頼んで勉強をすることもできます。
テーマは何でも構いません。趣味に関わることであってもいいし、歴史の勉強をするのもよいでしょう。また、読書の話題をするのもよいでしょう。
資格試験に応用することも可能だと思います。電気工事、司法書士など、さまざまな資格があります。簿記や法律等のもっと高度で専門的な分野で、勉強して資格を取ることも考えられます。人手不足の時代に、こうした資格を持っていれば、老後生活の収入を得ることができるでしょう。
ただし自分が興味が持てないものではやる気になれないでしょう。またどの程度の収入があるかということも気になるところです。こうした点について ChatGPT に尋ねてみましょう。
何を勉強すればよいかを教えてもらう
全くの新しい分野を、いったいどこから勉強を始めてよいのかが分からないときに、AIとの対話をすることが有効です。ChatGPTにカリキュラムの相談をすることができます。
「これこれについて勉強したい場合、どのようなことから始めればいいでしょうか?」と言うような問いかけをしてみます。
あるいは、「シニアの勉強は何をやればいいですか?」と聞きます。そうすると、コンピュータが、「シニアとは、何歳ぐらいの人ですか?」と聞いてくる。それに対し、「75歳」と答えます。
すると、「会社に勤めていた人ですか?」と聞いてくる。それに対し、「会社に勤めて、退職した」と答えます。このように、どんどん相手が適切な誘導をしてくるわけです。そして答えを出してくれます。
検索エンジンとChatGPTの決定的な違い
勉強したいのだけれど、何を勉強したらいいか分からないと考える人は、とりあえず身近なことでもいいですから、質問を投げかけてみるとよいでしょう。
これまでの検索エンジンと違うのは、ChatGPTは答えを出してくれるだけでなく、もっと掘り下げるべき課題をいくつか出してくれることです。
「3つのうちどれについてもっと詳しく知りたいですか?」と言うように質問の候補を示してくれます。この中から、自分の関心にあったことを選んで行きます。
このような対話を続けていくと、自然に問題を掘り下げていくことができます。自然な会話で進めていくので、誰かと実際に対話しているような気持ちになります。
私は、リスキリングは、これだけやればいいと思います。それ以外のことをやる必要はありません。
細かい個別の事項について聞くことも可能です。例えば、なぜこうなっているのかと言うようなことです。例えば、「経済分析では、GDPと言う概念をよく使いますが、なぜ他の指標ではなくGDPを使っているのですか?」などと聞きます。
「資格試験」についてChatGPTに聞いてみた
「法律の専門的知識を持っていないものが行政書士の資格を取るには、普通どのくらいの時間が必要なのですか?」という質問は、「人によって違う」という答えが出てくるかと思っていたのですが、「人によって違うけれども、2、3年」という親切な答えを出してくれました。
また、「それよりも難易度が低い国家資格はあるのでしょうか?」と聞いたら、宅地建物取引士や社会保険労務士など、いくつかの候補を出してくれました。
これらは、これまでの検索エンジンでも調べれば分からなくはないことですが、問いに対して知りたいことだけを直接教えてくれるという点では大変便利です。
しかも、どのように勉強するかということについても適切なアドバイスをしてくれました。
それはこれまでの試験問題を見るということです。私はこの方法は大変重要な方法だと思い、逆向き勉強法という名前をつけているのですが、そのような方法をChatGPTも効率的な方法だと考えているようです。
なお、以上のことは、別に高齢者に限ったことではありません。年齢のいかんによらず、やろうと思えばできることです。ただし、現役で仕事をしている場合には、勉強のために時間を割くのが難しいでしょう。
高齢者が有利であるのは、勉強のためにいくらでも時間を使えることです。その時間をどう使うかによっていくらでも勉強ができるということです。
<本稿は『83歳、いま何より勉強が楽しい』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by shutterstock
【著者】
野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年、東京に生まれる。63年、東京大学工学部卒業。64年、大蔵省入省。72年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専攻は日本経済論。経済学者としての著作のほか、大ベストセラーとなった『「超」整理法』『「超」勉強法』シリーズをはじめ、学びについての著作も多数。近著に『「超」創造法』(幻冬舎新書)、『生成AI革命』(日経BP)など。
◎関連記事