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読書できない人が「耳で聴く」なら頭に入るかもしれない根拠

 読書が苦手、ビジネス書を1冊読むのに1ヶ月かかる、という人は意外と少なくありません。読書が得意な人は3人に1人という研究結果もあります。一方、読書が苦手な人は視覚よりも聴覚で情報を処理するのが得意な人なのかもしれません。

 そうした人たちに精神科医の樺沢紫苑さんがおすすめしているのが、耳から読書する「オーディオブック読書術」。著書『読書脳』からお届けします。

『読書脳』 サンマーク出版 樺沢紫苑
『読書脳』

「聴覚優位型」の人には「耳学」がお勧め

 イギリスの教育学者、アリスター・スミスは、1998年、新しいことを覚える際、子どもたちの情報の取り入れ方の違いによって、3つのパターンに分類されることを明らかにしました。

 ・視覚優位型(Visual):視覚情報の処理に優れている
 ・聴覚優位型(Auditory):聴覚情報の処理に優れている
 ・運動感覚/触覚優位型(Kinesthetic):触ったり動いたりすることを通して学ぶ

 これは、それぞれの頭文字をとって、「VAKモデル」と呼ばれています。

 視覚優位型の人は、視覚からの文字情報によって理解し、記憶する能力に長けていますが、聴覚優位型の人は、それが苦手。目を使う読書よりも、耳から聞いたほうが、記憶に残りやすいのです。

3人に2人は読書が苦手

 アメリカの教育学者であるミラーの2001年の研究では、小・中・高校生のうち29%が視覚優位型、34%が聴覚優位型、37%が運動感覚/触覚優位型であると報告されています。視覚優位型は、3人に1人。読書が得意な人は3人に1人にしかすぎず、逆にいうと3人に2人は読書は苦手というわけです。

 もしあなたが、「読書が苦手」と感じているならば、視覚優位型ではないのかもしれません。聴覚情報の処理に優れている聴覚優位型の人にとっては、耳から学ぶ「耳学」のほうが理解しやすく、記憶に残りやすいのです。

 そんな人にお勧めなのが、オーディオブックです。プロのナレーターが書籍を朗読した音声のコンテンツで、本の内容を、そのまま耳から学ぶことができるのです。

 オーディオブックの現在の主要なサービスとしては、アマゾンの「Audible(オーディブル)」と「audiobook.jp」があげられます。

 オーディオブックは1冊ごとに購入できますが、単品だと紙の書籍を購入するよりも高額になってしまうことがあります。Audible、audiobook.jpそれぞれ「定額聴き放題サービス」がありますので、そちらがお得です。

 オーディオブックの最大の特徴は、「ハンズフリー」です。例えば、通勤の途中に聴く。散歩やエクササイズをしながら聴く。車を運転しながら聴く。掃除や洗濯など、家事をしながら聴くこともできます。

 移動時間、エクササイズ時間、家事の時間を、「学び」の時間として活用できる。これは、時間術的に非常に有利です。本を持てないような満員電車でも、音声を聴くだけなら可能ですし、車での移動時間が多い人は、オーディオブックを活用すれば、数日で本が1冊読めてしまいます。

紙で読んだ本の復習にも使える

 意外な活用法としては、紙で読んだ本をオーディオブックで改めて聴くこと。復習に使うのがお勧めです。本を読んだときに得られる「気づき」と、耳から聴いて得られる「気づき」がかなり異なるのです。本をしっかり読んだはずなのに、「あれ、こんなこと書いてあったかな?」ということを、しばしば体験します。1冊の本を、2倍、3倍と深めて理解することができるのです。

 エクササイズ中の耳学もお勧めです。私は、ウォーキングマシンでジョギングしながら聴くことがあります。有酸素運動でドーパミンやノルアドレナリンが活発に分泌されますが、ドーパミン、ノルアドレナリンには、記憶増強効果があります。

 実は運動しながら、あるいは運動直後に勉強、暗記すると、圧倒的に記憶に残りやすいのですが、意外とやっている人が少ない。電車でじっと座って聴くのと、エクササイズしながら聴くのとでは、エクササイズしながら聴いたほうが、記憶に残りやすい。学びの効果が大きいのです。

 オーディオブックを体験したことがない人は、1度、聴いてみることをお勧めします。実はあなたが「聴覚優位型」だとすれば、読書以上に、オーディオブックのほうが自己成長を実感できるかもしれません。

<本稿は『読書脳』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock

【著者】
樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家

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