腰痛を「腰だけで」治そうとしている人の根本的な勘違い
日常的あるいは時折の腰痛に悩まされているという人は少なくありません。その「黒幕」は意外なところにいます。
『腰痛が4週間で解消! 「大腰筋」を強くする』よりお届けします。
マッサージに行っても腰痛が治らない理由
腰を痛めたとき、あなたはどこに行きますか?
整形外科ですか?
でもぎっくり腰ではなさそうだし、痛みはあるけどとりあえず仕事はできるし、病院ではなさそう……。
では鍼灸院(しんきゅういん)でしょうか?
鍼(はり)は行ったことがないので、何だか不安だな……。
それなら整骨院でしょうか? それともカイロプラクティック?
どこに行けばいいのかわからず、とりあえず近所にあるマッサージ屋さんに行く、という方も多いのではないでしょうか。
確かにマッサージ屋さんに行き、痛みが出ている腰の筋肉をもんでもらえば、痛みが消えてなくなりそうな気もします。
しかし、残念ながら、腰の筋肉だけに集中して、30分、60分と時間をかけて丹念にマッサージをしてもらっても、腰痛は治りません。
それどころか同じ場所を繰り返しもみすぎてしまうと、かえって悪くしてしまう場合もあります。
腰痛を引き起こしている「真犯人」
腰痛を治そうとするとき、いちばん陥りがちな間違いは、腰痛を「腰だけで」治そうとすることです。
なぜなら、腰痛を引き起こしている原因は、腰の筋肉ではないからです。
では、腰痛を引き起こしているその原因とは何なのか? まず、腰痛の本当の黒幕についてお話しするところから始めましょう。
痛みが生じている場所は、「腰」。それなのに、その腰痛を引き起こしている場所は、腰そのものではない。そう、「からだの前」にある。
冒頭でお伝えしたように、腰痛を引き起こしている原因は「大腰筋」です。
「え、腰が痛いのに、悪いのは腰じゃないの?」まずはこの事実に、驚かれた方もいるかもしれません。
「腰痛の黒幕」であり、腰痛改善の鍵を握る正体、それが、大腰筋なのです。
大腰筋は、おなかの奥、腸の後ろにある腰椎(ようつい)からスタートして、股関節(こかんせつ)の下──太ももの骨にある小転子という部分へとつながっている筋肉です。
ちょうどリュックサックの肩ひものような状態で、腰椎と股関節の下をつないでいます。長さはその人の太ももの長さと同じくらい、太さは板に乗ったかまぼこをひと回りかふた回り小さくしたくらいの大きさです。細長い筋肉ですが、全身の中では大きい筋肉に分類されます。
大腰筋は、おもに脚を上げるときに使われる筋肉です。立っているときには骨盤が前や後ろに倒れたりしないように、そして腰椎が前や後ろに曲がりすぎたりしないように、からだの前側から支えています。
上半身と下半身を直接つないでいる唯一の筋肉であるため、大腰筋の筋力が低下すると骨盤と腰椎との支えが弱くなります。腰痛は、そんなふうに上半身が不安定な状態になることから起こるのです。
ステーキ肉の「ヒレ」「ロース」「サーロイン」にたとえると?
大腰筋はステーキ肉でいうといわゆるヒレ肉にあたります。赤みがたっぷり、脂肪がまったくなく、とてもヘルシーで上質な筋肉です。先述したように〝リュックのひも〟ですから、人の場合も、動物と同様、大腰筋はひとりあたり2本しかありません。
ちなみにロースというのは、背骨の両脇にある背中側で一番長い筋肉のことで、人のからだでいうと脊柱(せきちゅう)起立筋という筋肉です。
また同じロースの中でも、人の腰にあたる部分には「サーロイン」という特別な呼び名があり、これは肉の中でも最高級とされている部位ですよね。
ですから、腰が痛いというとき、痛いと感じるのはサーロイン(脊柱起立筋)の部分だけれども、黒幕であり改善させるポイントとなるのはヒレである大腰筋。そうおぼえていただくといいでしょう。
人のロース──脊柱起立筋は「かまぼこ」くらいの太さですが、動物の脊柱起立筋はとても太くて頼り甲斐(がい)があります。ちなみに、一般的に食べられている牛ステーキ肉は、牛の脊柱起立筋を輪切りにしたもの。人の脊柱起立筋の10倍以上も太いのではないでしょうか。
仮にですが、人にもそれだけの太さの脊柱起立筋があったなら、たとえからだの前側にある大腰筋に多少の不具合があっても、腰痛になるようなことはまずなかったでしょう。
そもそも人は、腰痛になりやすい構造的な欠点を持っており、腰痛とは縁が切れない宿命を背負っているともいえるのです。
<本稿は『腰痛が4週間で解消! 「大腰筋」を強くする』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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【著者】
宮腰 圭(みやこし・けい)
整体家/「骨と筋」代表/「アカデミー骨と筋」主宰