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メンタルがどんどん弱くなる人と強くなる人の差

 他人に振り回されやすい、すぐ不安になる、他人と比べて落ち込む……そんな豆腐メンタルの持ち主の40代女性ライター高木が、元自衛隊メンタル教官で心理カウンセラーの下園壮太先生に率直に心の悩みをぶつけた『とにかくメンタル強くしたいんですが、どうしたらいいですか?』

 メディアで人気の心理カウンセラーによる世界一敷居の低い、がんばらずにメンタルを強くする方法をまとめた本です。

 ライター高木の「とにかくメンタル強くしたいんですがどうしたらいいですか?」という最初の質問に下園先生から返ってきた言葉が、

「このままではメンタル弱くなりますよ」

 いきなり出鼻をくじかれて始まった取材。今回は本書の一部を抜粋してご紹介します。

『とにかくメンタル強くしたいんですが、どうしたらいいですか?』(サンマーク出版) 下園壮太
『とにかくメンタル強くしたいんですが、どうしたらいいですか?』

心をほんとうの意味で強くする方法

高木:あの……なんで私はこのままだとメンタル弱くなるんでしょうか? 「心を強くしたい」って聞いて、いきなり「弱くなりますよ」だなんて、ひどくないですか!?

下園:すみません。高木さんがとてもいい質問をしたので、いきなり、ほんとうのことを言ってしまいました。

高木:ほ、ほんとうのこと!?

下園:はい。この本では、私が今まで、さまざまな心の悩みを抱える人たちのサポートをしてきて実感したことを、嘘偽りなく、正直に話します。みなさん、「とにかくメンタルを強くしたいんです」って言うんです。

高木:だって、メンタル強くしたいんですもん! 今の時代、とても大事じゃないですか。〝メンタルがすべて〟と言っても過言ではない気がします。

下園:はい、おっしゃる通りです。ポイントは〝とにかく〟です。まず、「心を強くしたい」「メンタルを強くしたい」とおっしゃる時点で、高木さんは、「心が弱い人」「メンタルが弱い人」と自分で思っていますね。だから強くしたい。

高木:はい、そうですね。メンタルさえ強ければ、こんな生きづらさを感じずにすんだんじゃないかと思います。

下園:そこですね。

高木:ど、どこですか?

下園:とにかくメンタルさえ強くなったら、人生超ハッピーって思っていない?

高木:ちょっと思ってます。超ハッピーにとまでいかなくても、もっと私のメンタルが強ければ……。

下園:強ければ……?

高木:……。

下園:じゃあ、本題に入りますよ。みなさん、メンタルについて幻想を抱いているんです。大げさに言えば、メンタルを強くしたらスーパーマンみたいになれると思っている。鋼の心みたいなのがあって、それさえあれば、最強になれる、無敵になれると。でもそれは仕方がないんです。心は目に見えないから。どうしても幻想を抱きやすい。

高木:自覚はなかったですが、確かに鋼の心みたいなのがほしいと思っていました。スーパーマンになれないんですか?

下園:はい、なれません。てか、スーパーマンって何ですか?(笑)

高木:(笑)でも、これさえやれば、最強のメンタルを手に入れられますよ、みたいなのってありませんか? ほら、先生は自衛隊のメンタル教官だったわけですから、自衛隊で教えていた極秘プログラムみたいなのを教えてください!

下園:いいですね~! そういう魔法のような「これさえやれば」というのを求める人が、まさしくどんどんメンタルが弱くなる人の特徴です。

メンタルがどんどん弱くなる人と、メンタルがどんどん強くなる人

高木:ええ、どんどん弱くなるんですか……。

下園:そうですね。負のスパイラルです。書店の自己啓発コーナーに行けば、「1分で幸せになる」とか「1分で不安が消える」と謳った本ってたくさんあるじゃないですか? ああいう本って、実際に幸せになったり、不安が消えたり、するんです。でも正確に言えば、幸せになった気がするだけなんです。

 自己啓発本っていうのは、あくまでも、〝栄養ドリンク〟なんですね。栄養ドリンクって飲むと疲れが消えたような気になりますが、ほんとうに疲れが消えたわけではないんです。

高木:それ、すごくわかります! 自己啓発本読んで、そのときはすごくやる気になるんですが、1か月、いや、1週間もすれば、元に戻って、別の本を……。

下園:栄養ドリンク的な自己啓発の本も意味がないわけではないです。「ここぞ!」というとき、元気を出したいときに飲むのは確かに効果がある。でも根本治療ではない。この本ではそれを目指しません。そういう本のほうが売れるかもしれないですが……。

高木:今まで私は自己啓発本をいくつか読んで、なんで私は、何冊も本を読んでいるのに、変われないんだろう、って思ってました。

下園:まさしくそれです! 今、すごくいいこと言いましたよ!

高木:え? 何がですか?(笑)

下園:今、「なんで私は変われないんだろう……」と自分を責めましたよね?

高木:自分を責めている意識はあまりなかったです……でも「変われない私、ダメだな……」って自分で思ってます。

下園:「自分責め」というのが大事なポイントです。これが自分で自分のメンタルを弱くしている原因でもあります。

高木:自分で自分のメンタルを弱くしている?

下園:はい。メンタルが弱っているから「メンタルを強くしたい」と思いますよね。そこで「心の強さ」「メンタルの強さ」について、明確な基準を持っていない状態で、やみくもに「なんでメンタル弱くなるんだろう」「メンタルを強くする方法を知りたい」とあがき、魔法のようなものを求め、しんどくなる。

高木:ああ! そうです! なんで私はもっと、〝みんなみたいに〟〝昔みたいに〟がんばれないんだろう、って思っていました。

下園:そのとき、つらかったでしょう? だって、基準(ものさし)がないところで、もがいているわけですから。スーパーマンにはなれないのに、スーパーマンになろうとして、なんで「私はスーパーマンになれないんだ」って嘆いている状態です。

そうすると「私は何をやってもダメだ」という「自分責めモード」に突入していくわけなんです。

ゴールなきメンタル強化は、「害」になる?

高木:ええー! すごくバカじゃないですか。

下園:そういうことが、メンタルは目に見えないから、起こるんですよ。高木さんは、大谷翔平選手はご存じですか?

高木:もちろん! 今の日本で大谷翔平選手を知らない人はいないです!(笑)

下園:大谷選手が高校時代に使っていた目標達成シートというのがあるんですが、そこに〝メンタル〟という項目があるんです。

高木:(スマホで検索して……)あ、これですね! 9マス×9マスのシートに書いている。

下園::そうです。そうです。そこには「頭は冷静に心は熱く」「雰囲気に流されない」「一喜一憂しない」など、具体的な目標が8個書かれています。このように大谷選手が書けるのは具体的に「自分に必要なメンタル」がどういう状態かイメージできているからなんです。

このように具体的にイメージできていれば、何か失敗をしたとしても、「今日は雰囲気に流されてしまったな」と反省をして、次に生かせます。自分責めモードになることは少ないでしょう。

高木:今思い返していたんですが、私、自分責めモードよくなるんです……。

下園::自分責めモードには、実は大きな弊害があります。「自分ってダメだなぁ」という罪悪感が湧き上がってしまうため、自信がなくなったり、自己肯定感が低くなったりしてしまうんです。すると、心はどんどん弱っていく。今の高木さんは、すでに心が弱っている状態だと思うので、仮に具体的な目標を立てたとしても、自分責めのサイクルから抜け出せないでしょう。

高木:ひぇー、それは困ります。

下園:今、もしかして具体的な目標を立てて、がんばろうとしていません?

高木:はい! 大谷選手みたいに私もメンタル鍛えようと!

下園:何でもすぐにチャレンジしようとする姿勢は買いますが、高木さんの場合、すでに「自分責めモード」に入っているのでちょっと危険です。具体的な目標を立てても、できない自分にばかりフォーカスして、また自分を責めてしまい、さらに心が弱ってしまいます。

高木:負のループですね。メンタル鍛えようとがんばって、また落ち込んでより一層弱っていくなんて。しかもその理由が、「他人」じゃなく、ほかならぬ自分自身にあるなんてなんだかバカみたい。この負のループから抜け出したいです。ちなみに、どんどんメンタルが強くなる人ってどんな人ですか?

下園:それは、〝大人の心〟を持っている人です。

あなたの心は大人の心? 子どもの心?

高木:おとなのこころ?

下園:はい。高木さん、「心が強い」「メンタルが強い」って聞いてどういうことをイメージしますか?

高木:そうですね。難しい仕事をバリバリこなして、何があってもめげずに、毎日的確な判断を下しているイメージでしょうか。急に仕事を振られたり、大きなトラブルがあってもめげずに、スマートな顔をするイメージです。

下園:簡単に言えば、ガマン強い感じ?

高木:そうですね、簡単に言うとそんな感じです。

下園:多くの日本人がイメージするのは、その〝我慢強い〟〝忍耐強い〟といったことなんですが、こういう強さのことを僕は「子どもの心の強さ」と呼んでいます。

高木:子どもの心って聞くと、「天真爛漫」とか、「裏表がない」みたいなイメージしか浮かんできませんが。

下園:そうですよね。ここで言う「子どもの心の強さ」とは、「子どもの頃に大人から植え付けられた〝人間とはこうあるべき〟」みたいなものだと思ってください。子どもの頃は、がんばればがんばっただけ、能力も体力も精神力も伸びていきます。

この時期に多くの大人は「我慢しなさい」「ひとりでやるのが大事」「苦しくても逃げない」「最後までやりきる」「人に頼らず迷惑をかけない」と子どもに言い聞かせます。特に日本では。小学生の頃、親や先生から、こんなふうに口うるさく言われた経験はありませんか?

高木:あります! あります! 「人の3倍がんばれ」とか。今でも不思議と覚えています。

下園:特に勉強は、このような姿勢で取り組めば、結果が出やすかった。そして「えらい」と評価された。

高木:確かに。がんばれば確実に「褒められる」「報われる」世界ですよね。

下園:そうそう。これって、簡単に言えば、大人にとって(組織にとって)扱いやすい人になるための指導だったんですよ。

高木:えええ。

下園:昔はこれでよかった。経済が成長している時代は、みんなと同じように努力していれば幸せになれた。ところがどっこい、社会に出ると、努力や我優だけではうまくいかないことが、急に増えますよね。たとえば恋愛。これは相手ありきのことですから、「努力」だけでなんとかなるものじゃない。ビジネスだって、この予測不可能な時代に、がんばれば成果が出る時代ではなくなった。

【「子どもの心」とは】
・〝我慢強い〟〝忍耐強い〟
・大人から植え付けられた
〝人間とはこうあるべき〟
・昭和の時代に合った価値観
・硬い心。
ポキンと折れてしまうことがある

(この続きの記事は後日公開予定です)

<本稿はとにかくメンタル強くしたいんですが、どうしたらいいですか?』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部) 
Photo by Shutterstock


【著者】
下園壮太(しもぞの・そうた)
NPO法人メンタルレスキュー協会理事長。元・陸上自衛隊衛生学校心理教官。
1959年、鹿児島県生まれ。82年、防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理幹部として、自衛隊員のメンタルヘルス教育、リーダーシップ育成、カウンセリングを手がける。大事故や自殺問題への支援も数多く、現場で得た経験をもとに独自のカウンセリング理論を展開。2015年に退官し、その後は講演や研修を通して、独自のカウンセリング技術の普及に努める。主な著書に『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』(朝日新聞出版)などがある。

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