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必要以上に落ち込む人は「できなかった」でなく「できた」に目を向けて

「『私、メンタルが弱くて』と相談されること、めちゃくちゃ多いんですが、結論から言うと、メンタルが弱いことに悩む必要は全然ありません」。

『メンタル弱いまま楽しく生きてく』の著者で精神科医の木村好珠さんは、「そもそも、マイナスの感情を持つことは、全く悪いことではありません」と言います。

『メンタル弱いまま楽しく生きてく』 サンマーク出版
『メンタル弱いまま楽しく生きてく』

「〜しかできなかった」ではなく「〜までできた」と事実をプラスで考える癖をつける

 たとえば、誰かと喧嘩したとき、何か失敗したとき、失恋したとき、落ち込むのって当たり前の感情です。

 あなたのメンタルが正常に動いている証拠なので、むしろ安心してほしい。

 精神科医として、「メンタルが弱い」と言う人にアドバイスできることは、その弱さをちゃんと認めることだと思います。

 マイナスの感情になったことをそのままで受け入れることが何より大切なのですが、多くの人が、それができずに、マイナスの感情と上手に付き合っていくのを苦手としています。

 必要以上に落ち込む人、もしくは自分は落ち込んでなんかいないと強がって認めない人、人に見せないようにしなければと作り笑いでごまかす人、こういう人たちは感情を受け止められていません。

 そのまま受け入れるというのは、〝○○ということが起こった結果、今私は落ち込んでいる〟と落ち込む原因となった行動と結果を結びつけて考えることを指します。

しんどくなった原因はどこにあるか見つけよう

 感情は何かの行動と結びついています。

 マイナスの感情になった行動を見つけてみましょう(人によっては、点として何があったではなく、長期的な変化によって感情が生まれる場合もあり、そちらは少し気がつきにくいかもしれません)。

 落ち込んだ、怒ったなどマイナスな感情のとき、人間はその感情に対してどうにかしようとしがちですが、それが起こる以前の行動があるわけなので、そちらにも照明を当ててあげてください。

 その上で、その行動に対する改善策を考えましょう。

 必要以上に大きく落ち込む人は、行動を振り返れていない人。または、状況が整理できていないか、とにかく誰かに共感してほしいという気持ちが強くなっている人です。

 強がって認めなかったり、作り笑いでごまかしたりする人は感情に目を向けられていないのです。

 どちらの場合も、心のモヤモヤが消化できず、解決策を考えられないので、自分の機嫌を自分でとるための妨げになっています。

 これは自分にとって結構損なこと。

 行動を振り返れたら、改善策が見えて、前を向けます。落ち込んだ事実から、改善のための次の行動に移ることができます。

 また、感情に目を向けられないと、周りから見て、「ちゃんとわかってるのかな?」とか「反省してなくない?」となり、必要以上の攻撃を受けてしまう可能性があります。

しょっちゅう落ち込む人は語尾に気をつける

 また、落ち込む頻度が高い人は、なんでもマイナスに捉えがちな人。

 そもそも人間の脳は、マイナスなことほどフォーカスします。

 人間も動物なので、危険が迫っているときにちゃんと察知するため、幸せな気持ちでのんびりしていても、本能で危機に反応できるようになっています。

 しょっちゅう落ち込んでしまうという人は、「嬉しい」「楽しい」「ラッキー」など、幸せアンテナを意識的に立てていきましょう。

 何か起きたときに、幸せアンテナを立てているか、マイナスアンテナを立てているかで、その後のパフォーマンスが変わってきます。

 ずっと落ち込んでいる状態だと、〝落ち込んでいる〟ことに脳のワーキングメモリーが支配されてしまうので、その分、他のことが入るスペースが減るんです。

 たとえば、「仕事が60%までできた(幸せアンテナ)」ととるのか「60%しかできなかった(マイナスアンテナ)」ととるのか。

 どちらで考えても、60%という事実は変わらないわけです。

「60%しかできなかった。なんて自分はダメなんだ」と考える人は、これがたとえ20%でも30%でも90%でも、できなかった事実にしか気持ちが向いてないので、落ち込みます。

 そして「こんなんじゃ、ダメだ」の〝こんなんじゃ〟の中には、仕事が全部終わらなかった自分だけでなく、会社のこと、家庭のこと、その他のいろんなできない自分を込み込みで入れてしまうので、脳のワーキングメモリーを相当使います。

 ワーキングメモリーがマイナスなことで占められてしまうと、次にすべきこともなかなか考えづらくなりがち。

語尾に否定をつけて考えることをやめる

 まずは、述語を「できなかった」で終わらせる癖をやめましょう。

 とりあえず「60%まで終わった」という事実を「60%までできた」と肯定的に捉える癖をつけるのです。

「残りは40%」という事実を解決するためにどうしたらいいかを考えればいいのです。「あ、意外といけるな」と思えるかもしれないし、「さすがに40%残っていると間に合わないから、もうちょっとだけ頑張ろう」という動機付けになるかもしれません。

 失敗しちゃって落ち込んでいるというときは、そのままの気持ちで改善策をセットで考える練習をしてみてください。

 変えるべきは、メンタルが弱いあなたではなくて、その原因になった行動です。

 次はこうしてみようと前を向けることが大切です。

 前向きになるには、まずは自分の今を事実として受け入れて、失敗の原因を探してみる。

 同じようなことが起きたとき、考えた解決案を試してみる。その解決案が失敗したとしても、また新しい解決案を考えればいいのです。

 解決案が成功したら、成功体験を一つ獲得できて、自己肯定感がアップします。

「できない」をカウントするのではなく、小さくてもいいので「できた」を積み重ねていくことで、落ち込む回数は減り期間も短くなります。

 とは言っても、長年培ってきた考え方の癖を変えるのは簡単ではないので、「60%しかできなかった」と思ってしまったときも、「違う、違う! 60%もできただった」と細かく補正しながら、少しずつ慣れていきましょう。

<本稿は『メンタル弱いままたのしく生きてく』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by shutterstock


【著者】
木村好珠(きむら・このみ)
精神科医、スポーツメンタルアドバイザー、産業医、健康スポーツ医

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