見出し画像

堀江貴文×深津貴之「今後なくなる仕事、残る人」

生成AIの普及、さらなる進化によって私たちの仕事をめぐる状況は大きく変化していきます。なくなってしまう職業や仕事が出てくるのは必至でしょう。人はどんな役割を果たせばいいのでしょうか。

著者の堀江貴文さんを中心に、4人の識者(深津貴之さん、緒方憲太郎さん、佐藤航陽さん、茂木健一郎さん)の知見を踏まえ、まとめた『ChatGPT vs.未来のない仕事をする人たち』。堀江さんと株式会社note CXOでありインタラクションデザイナーの深津貴之さんの未来予測は? 本書より一部抜粋、再構成してお届けします。

『ChatGPT vs.未来のない仕事をする人たち』(サンマーク出版) 堀江貴文
『ChatGPT vs.未来のない仕事をする人たち』


◎オススメの記事


Q)ChatGPTでなくなる仕事は? メディアは?

・機会が処理できる作業のうち、人間のトレーニングにかかるコストが高いものは代替されやすい
・AIに代替されやすい仕事がある一方、AIと共同作業をしていく仕事もある

最終的に残る仕事は「決めること」と「責任をとること」

深津 貴之(インタラクションデザイナー、株式会社note CXO):生成AIの進化が多くのホワイトカラーにも影響を及ぼすと予測されています。

 より詳しい見立てとしては、機械で処理できる単純作業のうち、人間のトレーニングコストや学習期間が長いものほどAIと入れ替えられやすいでしょう。具体的にいえば、弁護士や会計士などの士業は、油断すると危ないかもしれません。

 一般に、こうした士業に就いて働きはじめるまでには長い学習時間が必要で、そのための費用も多くかかります。そうした人材育成をすっ飛ばし、たとえば月額数千円程度でAIが専門業務を代行してくれるなら、AIに任せてしまったほうが圧倒的にコストパフォーマンスがよくなってしまう構造があります。

 逆に、コンビニ店員のように長期間にわたる年単位の特別な教育コスト投資がなく、さらに物理的に複雑な職業はAIに代替される可能性は少ないとみています。

 将来的に予想される生成AIの進化から、小学生の「大人になったらなりたい職業ランキング」に出てくる職業を考えてみると、漫画家やイラストレーター、あるいはユーチューバーはかなり高い確率でAIと共同作業するようになることが予想されます。

 もしくは、人間ではなくAIがライバルになる可能性も。なかでも「試してみた系」や「実録系」の動画は、AIにリプレイスしづらいので、二人三脚でやるのではないかと思います。

 一方、女子に人気のパティシエや看護師は物理的な作業を多く必要とするので、AIが代替しづらい職業として残っていくのではないでしょうか。

人間にできるのは、「ラーメンの食レポ」と「決めること」

 このまま生成AIが進化していくとなると、最終的に人間ならではの仕事は、目の前にあるラーメンを食べてレビューするくらいな気がします。たとえカメラ自体が発達し、味の分析ができるようになっても、それはあくまでも外側の話。「麺の中には実はチャーシューが隠れていた」みたいなことはカメラではわからないわけです。

 なので、人間と同じレベルでラーメンを食べてレビューするまでには少なくとも10年以上はかかると思います。一方、「食べずレビュー」は可能でしょう。

 ジョークとしてよく言うのは、土下座をして謝って責任をとるのは人間にしかできない、というものです。機能として謝罪をAIに実装することはできても、それでは誰も納得してくれません。もちろんカジュアルな謝罪であればAIで済む場面はあるでしょうが、総理の代わりにAIが謝ってもほとんど意味をなさないでしょう。

 ただ、気になるのはフェイク映像の精度が高まり、本人と見分けるのが難しくなってきていることです。政治家の疑惑の証拠も捏造(ねつぞう)できるし、その反論の証拠も捏造できる、カオスの世界になりつつあります。

 今後生成AIが進化し続ければ、一時期いわれた「ポスト・トゥルース(*)」がさらに進み、誰も何が本当かわからない時代に突入していくでしょう。もしかしたら、さらに一周回って、どれが本当のことなのか、誰も気にしなくなるという状況も起り得るかもしれません。

*ポスト・トゥルース:それが噓や間違いであっても個人の感情に訴えるもののほうが強い影響力を持つ状況。

 僕は、最終的に人類に残される仕事は「決めること・選ぶこと」「責任をとること」に集約されていくと思います。ただ、こうした見立ては究極論であって、全人類がこの二つに収まるわけではありません。たとえるなら、料理に近い。コンビニ飯がどれだけ充実していても、料理をする人はいる。電子レンジを使う人もいれば、自然解凍を好む人だっている。つまり、技術が進歩したことで過程をスキップできる選択肢ができたという話なのです。

私たちが気づかぬうちに世界はいつの間にか変わっていく

 ただ、今までお話ししたような状況がすぐにくるかというと、まだだと思います。

 きっと、多くの人にとっては、「気がついたら、いつの間にか世の中が変わっていた」というふうになるでしょう。iPhoneが登場したばかりの頃、このテクノロジーによって5~10年後の社会がどう変わるのかを、予見できていた人はほぼいなかったはずです。

 世の中が少しずつ便利になっていくので気づきづらいですが、数年単位でその変化を追うと、実は私たちの価値観や生活様式は劇的に変わっています。生成AIに関しても、iPhoneと同じく普段の暮らしに溶け込みながら、いつの間にか私たちを遠くまで連れていっているのではないかとイメージしています。

 20世紀を代表する、フランスの美術家マルセル・デュシャンは「芸術とは何をやるか、何をやらないかを選ぶことだ」的な哲学を持っていました。つまり、自分のやりたい表現をどういう形で実行するかを「選ぶこと」こそ芸術の本質というわけです。生成AI時代に僕らの心を支える至言だと思います。

当たり障りのない仕事はすべてChatGPTに代わる

堀江 貴文:自分がやる必要がなく当たり障りのない仕事はすべてChatGPTにアウトソースしてしまったほうがいい。

 真っ先に思いつくのは校長先生や町長の挨拶。皆さんに身近なところでは結婚式のスピーチなんかもあるだろうか。まず、平均的な合格点を出したいのであれば、真っ先にChatGPTに頼ってしまったほうが早い。

 様々な仕事に対するAIの影響について考えてみよう。

・スライド資料の作成
 AI研究の第一人者である東大の松尾豊さんは、生成AIがほとんどすべてのこれまでのホワイトカラーの仕事に影響を与えるとの見解を示している。私がすでにテキスト作業をChatGPTに代替させているように、アウトソーシング可能な作業から順次生成AIに取って代わられていくだろう。

 簡単なスライド資料の作成はもちろんのこと、日本の官僚がお家芸的に作成するパワポ曼荼羅(まんだら)だってAIが作ってくれるようになる。むしろ、より万人にわかりやすい形で改良してくれるだろう。だとすれば、大企業のビジネスパーソンが従事している仕事のほとんどが影響を受けざるを得ないのもうなずける。

書類仕事は、今後人間がやらなくて済むだろう。

 私は、2023年3月にリリースされたGPT-4をロケットの事業にも利用しはじめている。

 ロケット事業には役所へ提出するための膨大な書類作業がつきまとう。むしろ、文章を書くことが仕事の7~9割を占めるといっても過言ではない。その書類作業でChatGPTが大活躍するのだ。また、ロケットの打ち上げに必要な推進剤の流量の計算を頼むと、ChatGPTが結論を含めて計算式まですべて作ってくれる。これまで人間がやっていた地道な作業をChatGPTが代替してくれたことで、一気に生産性が上がった。

・裁判官
 国内外でChatGPTが大学入試や専門職試験を次々と突破しているニュースが伝えられている。知識とロジックだけが問われる試験はChatGPTが最も得意な部類の試験なので、ある意味で当たり前だろう。司法試験さえAIが突破できるなら、裁判官すらBOTでいいのではないか。

 裁判官に限らず、知識を使ったエキスパートは、AIに代替されやすいように思う。

・テレビの仕事はほぼなくなる

 AIに音声合成技術を組み合わせれば、テレビ番組のナレーションやMCは要らなくなるだろう。深津さんが言うように、ChatGPTは万人向けのコンテンツを作るのが得意なので、当たり障りのないことばかり言っているMCは不要だ。

 同様に情報番組やバラエティ番組の放送作家が書く、予定調和で進む台本はAIでも書けそうだ。

 MCはVチューバー(*)のようなCGキャラクターに代行させ、天の声として出演者にコメントを求めればいい。「リアクションしてください」と出演者に指示出しするADなんかもiPhoneのようなリモコンのボタンで用が足りる。

*Vtuver。本人ではなく、2Dや3DCGなどで作られたキャラクターで動画配信を行なう人のこと。VはバーチャルのV。

 では、制作者ではなく演者はどうか。

 私は予定調和を壊すノイズを出すことこそが人間の役割だと思っている。その意味で、芸人などは生き残っていきそうに思われるが、実はそうでもなさそうだ。人間が思うギャグとしての面白さや突拍子のなさをChatGPTに学習させれば、きっと絶妙なコメントだって返せるようになる。

 究極的には、M-1名場面集を学習させることで、漫才やコントのようなオリジナリティを求められるコンテンツすらAIは作れるようになるはずだ。

・編集者やライターは不要になる

 2023年春に、ChatGPTを使ってビジネス書を1冊作ってみた。タイトルは『夢を叶える力 あなたの未来を変えるための7つのステップ』。タイトル、コンセプト、章立て、カバーの写真まですべてAIによって作られている。正直いって、違和感はないだろう。

 制作のほとんどに私はかかわっていないのだが、当初はみんな気づいていなかった。Kindle Unlimited(キンドル・アンリミテッド)に出したら、結構読まれていて驚いた。ついているレビューの数から推測するに、そこら辺にある本よりは売れていると思う。

 今回なぜAIに制作を任せる実験を行なったのかといえば、私が出す本が売れるのは内容が新しいからなのか、内容の焼き直しでも構わないのかを検証するためだ。

 結果は明らかで、内容は10年前から私が言い続けていることだとしても普通に売れる。ある意味くだらないのだが、あまりに先進的なことはむしろ読者が理解できないことも多い。なので、AIが時代に合わせて過去の発言をまとめるほうがちょうどいいのかもしれない。

 少し話がずれたが、今後、こうしてAIを使いこなす新しい作家が出てくるとすれば、ほとんどの編集者は不要になるだろう。

 そもそも当初、私は自分自身で本を書いていた。ただ、それも最初の2~3冊ほど。それからはライターにインタビューしてもらい書いてもらう形式にした。ある時期からそれもやめ、テーマに沿って私のブログやメルマガを再編集してもらうことにした。途中まではその原稿を私自身でチェックしていたのだが、最近はスタッフや校正チェックツールに完全に任せている。

 そして今後は、これらの作業がAIだけで完結するかもしれない。著者である私としては、人間の編集者とライターによって作られた本なのか、それともAIによって作られた本なのかはどちらでもいい。

写真集もAIでよくなってきている。キンドルの「写真」のカテゴリーのランキングの上位にAIの写真集が入っていたことがあった。つまり、被写体が人間であることすら必要ないことが証明されてきている。

 ちなみに、私が出資しているパパ活アプリの会社でも、サービスのバナーにAI美少女を掲載したことがあった。すると、効果が3倍に上昇したそうだ。もちろん、その美少女はAIなので100万通りであろうが1000万通りであろうが、パターンを無限に生成して試すことができる。広告クリエイティブの世界で今後も生身の人間を使い続けるのは、コスト面からいっても非合理的になっていくだろう。

 今後は、F1のレースと人間の陸上競技が分かれているように、人が書いた本とAIが書いた本のカテゴリーは分かれるかもしれない。結果、AIが書いた本が売れることだってあるだろう。

 ついでに通信社の記者の仕事もAIに代替してもらったほうがいい。考えてみれば、通信社の記者がやっているのは情報の要約だ。へんに人間の思想が入り込んでしまうくらいなら、要約作業が得意なChatGPTに正確な情報を提供してもらうほうがよっぽどいい。

・プログラミングの仕事が最初に危ない

 実は、生成AIによって真っ先に取って代わられそうな仕事として思いつくのがプログラマーだ。

 すでに半自動でプログラミングのコードが生成できるようになっている。人間が「こんなプログラムを書いて」と自然言語で指示してあげれば、ChatGPTがコードを書いてくれるのだ。

 そもそもコードを書く作業自体が不要になりつつある。

 先日、私がファウンダーとなっているロケットの会社で「フォートナイト」上のゲームを作ったのだが、その制作でも大掛かりなプログラミングの作業をすることなく、ほぼノーコードで完成してしまった。建物やゲームの仕掛けなどをブロックのように組み合わせるだけで、マップやゲームが作れるのだ。

 きっと今の若い人は、デジタル版のブロック遊びと呼ばれる「マインクラフト」などのゲームに慣れ親しんでいるので、レゴを作る要領でゲームさえも作ってしまうだろう。

 試しに「『ファイナルファンタジー』の世界観をベースに、ポケモンのモンスターが出てくるゲームを作って」と指示すれば、それなりに動くゲームがすでに作れる気さえしている。

・介護ビジネスはAIと3Dで変わる
 ソニーが開発している空間再現ディスプレイは、高精細の3DCG映像を裸眼で見ることができる技術だ。人間が投影できるサイズのディスプレイでチャットボットを実装すれば、音声認識を介して普通にコミュニケーションがとれるようになる。この仕組みでバーチャルな孫を作ってしまえば、話し相手には困らないし、ボケの防止、アンチエイジングにも活用できるだろう。

・先生はドラえもん!?

 序章ですでに私たちがドラえもんを手にしていることには触れたが、教育にドラえもんを持ち込んでしまうのはどうだろうか。AIと音声合成技術さえあれば、生徒に合わせた対話と授業が可能になる。必要に応じて先生らしき身体を用意してあげればいい。子どもそれぞれがドラえもんを持つイメージだ。

*編集部註 序章についてはこの記事の末尾に『ChatGPT vs.未来のない仕事をする人たち』の試し読みリンクを設けていますのでぜひご覧ください

 当然のことながら生身の先生とは違い、AIは疲れないし、どこまでも根気強く子どもと向き合ってくれる。AIは世界中の知識を備えているので、どんな人間の先生よりも知識が豊富で、質問をすればなんだって的確に答えてくれる。

 正直な話、読み書きができて自分の頭で考えられる人は、インターネット上の教材で自習ができる時代だと思う。わからないことがあっても自分でネット上の文献を読めばそれなりに理解できる。しかし、後で触れるが、世の中には文章を読めない人が意外と多く、ネットの恩恵にあずかれていなかった可能性がある。

 最近は、あらゆるコンテンツを動画でも観られるようになり、今まで文章で知識を得ることが難しかった人も多くの情報にリーチできるようになった。これで全人口の7~8割くらいはカバーできるようになったと思う。

 それでも残ってしまう残り2~3割の人たちに集中するために、教育の仕組みを変えていくべきだろう。

・食レポはカメラで
 深津さんはAI時代になっても、目の前にあるラーメンを食べてレビューできるのは人間だけだと言う。だが、私は違う意見を持っている。最近のカメラはISO感度(デジタルカメラが光をとらえる能力を表す値)や解像度が格段に向上している。このまま進化を続ければ、最終的には原子や分子を観測できるレベルに近づいていくだろう。

 たとえば、高性能のカメラでラーメンを撮影すれば、含まれるアミノ酸量などの成分を分析できるようになるはずだ。これに加え、インターネット上にある画像や映像を学習すれば、それっぽいレビューを書くことくらいはAIにも容易だろう。

 AIに謝罪を代行させることに関しても、私はそれなりに機能するのではないかと考えている。現代でも、多くの人がLINE上で気軽に謝っている。カジュアルなものであれば謝罪BOTを作ってしまえばいい。政治家に関してはCGを作ってそれに謝らせればよいのではないか。

<本稿は『ChatGPT vs.未来のない仕事をする人たち』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>


【著者】
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
1972年10月29日、福岡県生まれ。 現在はロケットエンジン開発や、アプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙する等様々な分野で活動動する。 会員制オンラインサロン『堀江貴文イノベーション大学校(HIU)』では、1,000名近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開している。
ビジネス系に特化した起業家向け会員制コミュニケーションサロン『neoHIU』でも会員とともに様々な事業を展開している。著書『不老不死の研究』(予防医療普及協会と共著。幻冬舎)、『信用2.0』(朝日新聞出版)、『2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全』(徳間書店)など。

Photo by Shutterstock

この記事が参加している募集

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!