転職後「また会社辞めたい」とループする人が入り込む迷路の出口
給料を上げたい。別のスキルを磨きたい。働きがいを見つけたい。将来性のある仕事に就きたい。残業を減らしたい。苦手な上司や同僚から離れたい――。
前向きな理由にしろ後ろ向きな理由にしろ、何かを変えようと転職した人の中で、また「やめようかな…」とモヤモヤしてしまうことがあります。
なぜそんなことになるのでしょうか。「社会人3〜4年目で転職に挑む人に知ってほしいモヤモヤの正体(7月5日配信)では、転職が孤独だということがモヤモヤ要因の一つだと解説しました。それ以外にも、要因はあります。
「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 転職後も武器になる思考法』よりお届けします。
「自己分析」や「自分探し」で自分がますますわからなくなる
新卒の就活で身につけた常識もまた、私たちに嘘をつかせる原因になります。
就活で「自己分析」や「自分探し」で唯一無二の自分を探して、かえって自分がわからなくなった人もいるのではないでしょうか? でも、実際に働きはじめると「本当の自分がいるなんて単純な話ではないのでは」と気づいた人もいるでしょう。
「向いている」と思っていた仕事にそこまで打ち込めなかったり、「苦手だ」と思っていた人たちと不思議と気が合うとわかったり。その中で「実は本当の私なんてないんじゃないか?」と気がつきはじめる人がいます。
そして、多くの人は「上司の前と家族の前では、まったく違う自分が出てくる」と思っているのではないでしょうか? 友人の前、家族の前、取引先の前、上司の前、それぞれ違った自分がいて、一貫性があるようなないような……。
「本音磨き」はこのような感覚を大切にします。
「唯一絶対の本当の自分がいる」ではなく、「自分は複数いる」と考えます。
「ブレてみよう」と思い切ると、ブレなくなる
「いや、自分はひとりしかいないでしょう」
そう思うのも自然です。ここで「分人主義」という考え方をご紹介します。第120回芥川賞を受賞した『日蝕』の他、数々の作品を世に発表している作家の平野啓一郎氏が提案している考え方です。平野氏は私たちに馴染みのある「個人主義」と比べながら、「分人主義」をこのように提案します。
平野氏が「対人関係ごとに見せる複数の顔が、すべて『本当の自分』」と提案するように、本書でも「本音は複数ある」と考えます。
たとえば、「顧客と丁寧に接したい自分もいれば、顧客を嫌う自分もいる」ということです。そこから「それはつまり、本当は対等な関係を望んでいるのではないか」という本音まで行き着きます。
本音Aと本音Bが対立しているように見えるときにも、どちらも否定しません。「両立させたいというもうひとつの本音Cがあるのでは」と考えます。どの本音も否定する必要はありません。
「好きなことを仕事にしていてブレない生き方」をしている代表例にも見えるミュージシャンでも「ブレる」と話しています。「キズ」というバンドのボーカリスト・来夢氏にインタビューしたとき、こんな言葉を発していました。
私たちはもっとブレていいのです。今ブレないように見える人も、「ブレている自分」を認めブレた過去を経て今があるのでしょう。だから「ブレてみよう」と思い切ってみる。その後に「ブレても戻ってこれるしなやかな自分」になれます。
<続きの記事は後日公開予定です。本稿は『「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock
【著者】
佐野創太(さの・そうた)
日本初かつ唯一の「退職学®︎(resignology)」の研究家/生成AIを活用した情報発信のパートナー
◎関連記事