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私が株式投資を究めるため「関ケ原の戦い」の現場に行ってみた理由

 あなたは普段生活していて「不公平だな」と感じることはありませんか?

 企業の人事評価で、明らかに結果を出していない人が評価されて昇進した。

 同じ仕事をしているのに、「経験年数が短い」という理由で他の人より給料が低い。

 自分の住む自治体は友人の住む自治体に比べて子育て支援が充実していない。

 こうした「不公平」は、世の中に数えきれないほどあります。特に企業の人事制度は、どれだけ「公正に評価している」と言われても、100%の公正さはあり得ないものです。

 それに比べて、株式投資の世界では市場の評価が極めて公正です。複眼経済塾という投資・経済スクールの塾長を務め、1冊で2000ページに及ぶ株式情報誌の定番中の定番『会社四季報』を27年間で108冊全ページ読破する渡部清二さんの新著『そろそろ投資をはじめたい。』よりお届けします。

この世で唯一と言っても過言ではない公正な評価

 株式投資の面白さは、誰もが自分なりのストーリーを立てられること。

 例えば、「タピオカが流行る」と思ってタピオカ屋さんの株を買ったとします。その結果が株価に反映されます。自分の考えが正しければ株価が上がり、間違っていれば下がる。この結果は市場が決めるのです。

 市場の評価は非常に公正で、株式市場に参加する全員に対して同じ基準で行われます。世の中では人事評価が間違っていることが多いですが、株式市場は株価が上がるか、下がるかという点で、世の中で唯一、正しく評価してくれるのです。これは株式投資を始める上でも、大きなモチベーションになります。

株価はどのように決まるか?

 株式市場は森羅万象を含む。

 これは株式投資における大原則です。

 株式市場では、買いたい人が1000人いれば、売りたい人も1000人いなければ値段(株価)はつきません(正確には、買いたい株式数と売りたい株式数が一致します)。買いたい理由や売りたい理由はそれぞれ異なりますが、それが市場の評価となります。実際には、1000人以上の人々の思いや理由が反映されて値段が決まります。株価が上がるか下がるかは、市場がそれらの思いや理由をすべて織り込んで一つの評価にまとめた結果なのです。

 つまり、買いたい人の裏に売りたい人がいて、売りたい人の裏に買いたい人がいる。必ず自分とは正反対の見方をしている人がいるということです。

私が「日本の古戦場」を巡って見えたこと

 私自身、長年株式投資の世界に身を置いていますが、「この感覚を身をもって理解したい」と思い、数多くの「日本の古戦場」を巡った時期があります。

「株式投資の理解のために古戦場巡り?」と疑問に思ったかもしれませんね。実は、株式投資の世界と合戦の世界には共通点があるのです。

 例えば、関ケ原の戦いでは東軍の徳川家康と西軍の石田三成が対峙します。これは株式市場で「売りと買いが対峙」しているのと同じです。どちらにも理由があり大義名分があるのも、合戦も株式市場での売り買いも同じです。また、どちらが正しいかというのは誰にも判断できません。しかし、結果として、合戦では勝ち負けが決まり、株式市場では株価の上がり下がりが決まるのです。

 関ケ原や桶狭間、長篠、賤ケ岳、姉川など、さまざまな古戦場を訪れて実際に両方の陣営の立場に身を置くことで、お互いの考え方や心境を想像し、二つの視点を理解することができます。

 すると、売りと買いの関係と非常に似ていることがわかり、売りたい人の理由や買いたい人の理由を想像することができるようになったのです。二つの視点がわかれば、あとはどちらの陣営につくかを決めることが、株を買うか買わないかの判断になります。

 株式市場はまるで1000人ずつの賛成派と反対派が公平に値段を決めているようです。合戦と株式市場は全く同じで、評価は公正で覆しようがありません。勝ち負けや株価の上がり下がりも同様です。

 このように株の値段である「株価」は、最終的には需要と供給によって決まります。売りたい人と買いたい人が相互に合意した値段が株価となるのです。

 この仕組みは非常に興味深く、ある意味で奇跡的です。株価を予測することは難しく、まるで自然界の神秘のようなものです。売りたい人にはさまざまな理由があり、買いたい人にも同様にさまざまな理由があります。

 これらの理由は外部からはわかりにくく、時には「惑星が地球にぶつかるから売らないといけない」といったような他人には理解しづらく、非常に個人的で、予測不可能な理由も含まれるかもしれません。

 このように、人々の多様な思惑が交錯する中で、売りと買いが必ず一致するポイントに株価が形成されます。基本的なメカニズムとして、売りたい人が多ければ株価は下がり、買いたい人が多ければ株価は上がります。このシンプルな需給の法則が株価の動きを決定するのです。

<本稿は『そろそろ投資をはじめたい。』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by shutterstock


【著者】
渡部清二(わたなべ・せいじ)
複眼経済塾 代表取締役・塾長
1967年生まれ。1990年筑波大学第三学群基礎工学類変換工学卒業後、野村證券入社。野村證券在籍時より、『会社四季報』を1ページ目から最終ページまで読む「四季報読破」を開始。25年以上継続しており、2024年秋号の『会社四季報』をもって、計108冊を完全読破。2013年野村證券退社。2014年四季リサーチ株式会社設立、代表取締役就任。2016年複眼経済観測所設立、2018年複眼経済塾に社名変更。清泉女子大学にて就職講座を6年担当するなど、投資家以外への教育にも熱心に取り組んでいる。『会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方』(東洋経済新報社)がベストセラーになり、その後著書多数。

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