4年生の「算数」学習、SAPIX流が大事にする3つの土台
「算数が嫌い」と感じるお子さんが増えるのは小学校3〜4年生と言われるようです。
特に少数や分数がはじまる小学4年生は、難易度も急に上がり、苦手意識を持ちやすいのではないでしょうか。しかし基本的な計算であるだけに、ここでつまづいてしまうと、その後、ついていくのが大変になってしまいます。
教育・学習ライターの小川晶子さんは、大手中学受験塾のSAPIX(サピックス)小学部に取材してまとめた著書『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』において、小学4年生の頃に算数の力を積み上げていく土台を作るために大事なことを3つ挙げています。
学習習慣のリズムをつける
4年生は中学受験対策としての単元学習が始まります。
授業で習ったことを、家庭学習を通じてしっかり定着させる習慣をつけるのが何より大事です。
授業の記憶が新しいうちに一度触れておくと定着しやすいので、おすすめは授業の当日か翌日に復習することです。そして、数日経ってから、数値だけを変えたような類似の練習問題を解きます。
1週間区切りで、こういったリズムを作ることを優先しましょう。
SAPIXでは週に2回授業があり、授業で学習したことを翌週の授業で行なう小テストで確認するサイクルです。
算数が苦手な子は、答えになかなかたどりつけずに、勉強時間が長くなってしまうことがあります。まずはリズムを作ることが大事なので、基本的な問題については、長時間考えるよりも答えを見てしまってOKです。解説を読んで理解したら、次は見ないで解くことにチャレンジします。
余裕のある子は、学習のリズムをつけることに加えて、手ごわい問題にも取り組んでみてください。時間の制約を気にせずに考え続けることも大事です。
4年生の算数で確実に身につけたいこと
4年生は、これからの学習を積み上げていくための土台を作る学年です。
そのため、4年生で学習するすべてが大事、と言っても過言ではないのですが、その中でも特に重要なものが次の3つです。
(1)数と計算
(2)図形
(3)特殊算
●数と計算
数と計算については、
①数のしくみを理解する
②四則計算を、小数・分数計算も含めて習熟するまで練習する
③各種計算のしくみについて考えを深める
④計算の工夫のしかたを学び、器用さを上げておく
の4点がポイントになります。
たとえば整数に関してだけでも、「約数と最大公約数」「倍数と最小公倍数」「素数」「素因数分解」「等差数列とその和」など、応用範囲が広い重要な内容が目白押しです。これらについては、計算方法を習得して答えが出せる段階で満足せず、その計算のしくみや、その計算をすることで何がわかるかについて、考えてみることが大切です。
5年生以降の学習につながる重要ポイントですので、小数・分数も含め、数に慣れ親しむようにしておきましょう。
また、小数・分数計算についてはスピーディーかつ正確にできるように十分な練習を積んでおくことも重要です。5年生以降、小数・分数計算の絡む単元が一気に増えてきますが、4年生の後半でも円とおうぎ形の単元など、小数・分数計算が必要となるものがいくつか出てきます。
特におうぎ形の面積を求める問題は、円周率に加えて分数計算も絡むことがあるので、小数と分数の混合計算に慣れていない子は苦手とするところです。
この単元に限らず、小数・分数計算が苦手な子は、小数・分数の絡む単元全体が苦手になりやすいので、4年生のうちにしっかりと練習しておくことが、学習をスムーズに進めるコツです。
●図形
三角形や台形といった基本的な平面図形の面積の求め方について、公式を理解し、習熟することが必要です。なぜこの公式になるのかを理解しておくことは必須ですが、公式を導く方法は一通りではありませんので、できる限りさまざまな方法を試してみることをおすすめします。そうすることで、解答にたどり着くための考えの幅を広げることができるでしょう。
なお面積の求め方だけでなく、三角形や平行四辺形のどの辺を底辺としてとらえるか、複雑な図形の面積を求める際にどのように切り分けて考えるか、または何から何を取りのぞいて考えるか、といった基本的な図形のとらえ方の感覚を磨いておくことも重要です。
そのために別解を考えてみることも有効ですし、問題で問われていることとは別に、与えられた条件からわかることを計算してみてもよいでしょう。また、別の方法ではうまく答えが出ない場合、なぜ出せないのかを考えてみることも成長につながります。
なお、立体図形に関しては、4年生ではさほど高度なものはまだ出てきませんが、四角柱や三角柱、円柱など、柱体については理解しておく必要があります。柱体の展開図がどのようになるかだけでなく、体積・表面積の計算方法も理解しておきましょう。
●特殊算
4年生の間は、和と差に関する文章題を多く扱います。「和差算」「つるかめ算」「消去算」「過不足算」などがそれに該当します。
二量の和や差に注目して条件を簡略化し、解き進めるという方法は算数において定番といえるものです。これらの文章題を通じて、和や差に注目することに慣れていく必要があります。
他にも重要な文章題はあります。その代表ともいえるのが「植木算」です。和と差に関する文章題とは異なり、植木算は数の問題や規則性の問題で用いられる基本中の基本といえるものです。
文章題からは少し離れますが、樹形図や、順列・組み合わせの計算など、「場合の数」の基本を扱うのも4年生です。その他にも重要単元はたくさんありますので、気を抜かずにコンスタントに学習していきましょう。
本当の算数の力をつけるために
算数の力をつけるためには「答えが出せたら終わり」ではありません。
その問題を題材として、解答にたどり着くための考え方の広がりにどう向き合うかが、算数の学力を上げるためには重要なことです。
一通り答えを出すだけであればさほど長い時間がかからない学年ではありますので、こうした部分にぜひ時間を割いてほしいと思います。
・数値が小数や分数の場合でも、ミスなく計算できるようにしよう
・各種の公式は「なぜ、そういう公式になるのか」までおさえたい
・特殊算は他の単元でも用いるので、今のうちに理解しよう
<本稿は『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅勉強法』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock
【著者】
小川晶子(おがわ・あきこ)
教育・学習ライター、絵本講師
(協力)
SAPIX小学部
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