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発言しにくい会議を格段に「発言しやすくする」3つの分け方

「発言しにくい」空気の会議――。ビジネスパーソンなら誰しも一度や二度は経験したことがあるでしょう。

「何を言えばいいのかわからない」「発言しても大丈夫かわからない」「発言すると否定される気がする」といった悩みは、どうすれば解消できるでしょうか。

 コクヨのワークライフコンサルタント・下地寛也さんの著書で、「分ける技術」を使って生活の中におけるさまざまな「しにくい」を「しやすい」に変えることを探った『「しやすい」の作りかた』よりお届けします。

会議で「発言しやすい」空気をどう作るか

 ある会社で実際にあったエピソードをご紹介する。

 昨今は多くの企業が、在宅勤務やフレックスワークなど多様な働き方を認めつつ生産性を上げるための取り組み、いわゆる「働き方改革」についての議論をしている。その会社では社長が人事部長に指示を出して、各部の部長とその部門の若手をひとり、会議に参加させていた。

 会議室には人事部長を中心に、各部の部長と、その部門の有望な若手が勢ぞろいしていた。

人事部長:社長より、我が社の働き方改革の推進は、経営や人事だけで考えるのではなく、若手の声も取り入れるようにとの指示を受けています。今日は、部長と若手という立場に関係なく発言してください。では、働き方改革を進めるに当たり、何か意見のある人はいますか?

一同:……………。

人事部長:どのようなことでもいいですよ。

営業部長:昨今は、ワークライフバランスとか残業削減とか言いますが、それでは会社から求められている業績は達成できないと思います。

人事部長:なるほど。

開発部長:そうですね。特に若いうちは残業しながら仕事を覚えるということも、一人前のビジネスパーソンになるために必要です。

人事部長:若手の方の意見はどうですか?

若手一同:……………。

人事部長:なんでも、自由に発言してくれていいですよ。

営業若手:……………。いえ、営業部長の言われる通りだと思います。

人事部長:他に意見はないですか?

一同:……………。

人事部長:みなさん、もっと積極的に発言されると思ったけど……。

 せっかく、様々な立場の意見を分け隔てなく集めようとしても、会議で意見が出にくいケースはよくあるものだ。ベテランがしゃべり、若手が黙る。このような問題がしばしば起こる。

 人事部長は自由に意見を言ってほしいと言うが、若手は上司の手前、勝手なことを言いにくい。上司の意見に歩調を合わせておかないと、あとで面倒なことになると考えるわけだ。ではどう分ければ「発言しにくい」は「発言しやすい」に変わるのだろうか? ここでは3つの分け方をご紹介したい。

1、発言する順番を分ける

 まずは若手に聞いて、それから部長に聞くという順番にする。先ほどのようなケースでは「誰でもいいので意見はありますか?」とは聞かないほうがいい。若手の中から意見がありそうな人を指名して、口火を切ってもらう。たとえば以下のように議論を始めるのが良いだろう。

「部長が先にコメントすると、若手は発言しにくくなるかもしれないので、まずは若手の意見を聞きましょうか。そうですね、では営業部の若手の加藤さん、何か意見はありますか?」と水を向けるのである。

 まず「若手の意見を聞く時間」、それから「部長の意見を聞く時間」と分けてみる。これだけでも若手は随分と発言しやすくなるはずだ。このときのポイントは「意見がありそうな若手」と「意見がなさそうな若手」とを頭の中で分けておくことだ。そして、まず「意見がありそうな若手」を当てるのだ。そうすれば、他の人もどのような発言をすれば良いのか参考にできる。

 たいていの場合、意見のある人は上(前)を向いているし、意見のない人は下を向いている。最悪なのは、下を向いている人に「おい、山田くん、下を向いていないで君から発言して!」などと促してしまうことだ。こうなると、いきなり会議の雰囲気が悪くなってしまう(積極的に考えさせたい気持ちはわかるが、その人は意見を思いつかないから下を向いていることを理解しよう)。

 ただし、若手から活発な意見が出たとしても、このあとのベテランたちの否定的な発言で、一気に若手が黙ってしまうこともあるので、次の方法も併用したい。

2、メリットとデメリットに分ける

 たとえばこのように発言を促してみる。

「ワークライフバランスや残業削減等の働き方改革の取り組みにはメリットとデメリットがあると思います。なので、みなさんの意見もメリット、デメリットを意識しながら発言してもらえますか」

 こう聞けば、部長陣も無下に否定的なことばかりは言えなくなる。なぜなら、「メリット」も言う場であることを促しているからだ。

営業部長:デメリットとしてまず思うのは、業績達成がしにくくなるのではないか、ということだね。

人事部長:なるほど。ではメリットはありますか?

営業部長:うーん、メリットは強いて言えば仕事のしかたにメリハリが出ることかな。ダラダラしなくなるとか。

人事部長:そうですね。ありがとうございます。

 このような感じで、ポジティブな意見も拾いやすくなる。会議の発言を「賛成と反対」で分けるのではなく、「メリットとデメリット」で分けることで、若手も上司の前で意見が言いやすくなるだろう。

3、メンバーを分ける

 さらに思い切って、若手と部長で会議を別々にやる、という分け方もある。会議を2回開くなんて手間がかかるじゃないかと思うかもしれないが、発言が出ない会議になって、意思決定に必要な社員の意見が集められないほうが結果的に非効率である。

 そもそも、部長たちがいるから若手は意見を言わないのだ。であれば、分けてしまったほうが本音の発言が増えることが期待できる。

 それぞれの意見を別々の会議でまとめ、両方の意見を基に経営者や役員が方向性を決めれば、決定も早くなる可能性がある。

 若手とベテランの意見を取り入れたいといっても、単に会議の場に両者がいるだけではうまくいかない。そういった場合は、聞き方や参加者を〝分ける〟ことで発言を「引き出しやすい」空気を作るといいだろう。

<本稿は『「しやすい」の作りかた』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)


【著者】
下地寛也(しもじ・かんや)
コクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタント
エスケイブレイン 代表

サンマーク出版の公式LINE『本とTREE』にご登録いただくと実際の本と同じレイアウトで、この本『「しやすい」の作りかた』の「序章 「しにくい」を「しやすい」に変える」(目次を含む30ページ)をお読みいただけます。ご登録は無料です。ぜひこの機会に試し読みをお楽しみください!

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