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運のいい人が運を呼び込む「行動パターン」の秘密

「自分は運が悪い」と思っていませんか? 「運」とは、その人がもともと持っていたり生まれつき決まっていたりするものなのでしょうか?

運のいい人には共通した考え方や行動パターンがあります。運をよくするための振る舞いがあり、運はコントロールできるのです。これらを脳科学的見地からつきとめて自分の脳を「運のいい脳」にするためのヒントを紹介したのが、脳科学者の中野信子さんによる『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』です。

運をよくするメカニズムの一つが、「自分は運がいい」と決め込んでプラスの自己イメージを持つこと。そして運を呼び込むための行動パターンがあります。本書から一部抜粋、再構成してお届けします。

『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版) 中野信子
『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』


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運のいい人は「運がいい」「ツイている!」と声に出して言う

 自分は運がいいと決め込んでしまったほうがいいといっても、これまで自分は運が悪いと思ってきた人にとっては、それはむずかしいことかもしれません。

 そこで、「自分は運がいい」と思う練習をしましょう。

 自分は運が悪いと思っている人は、まずは自分の命がこの世に誕生した奇跡に目を向けてみてください。

 人の命は、精子と卵子が出会うことで生まれます。

 1回の射精に含まれる精子の数は、個人差などもありますが1億~4億個とされます。射精後、精子は卵子の待つ、子宮の卵管膨大部へ進むのですが、そこへたどり着けるのはわずか数十から数百個の精子のみ。さらに受精できるのは、そのうちのほぼ1個です。

 受精がうまくいっても受精卵が子宮内に定着する着床の確率は約75%。着床してもそのうちの何割かは妊娠まで至りません。さらに妊娠したとしても、全妊娠の約15%で流産が起きるとされています。

 このように、私たちの命は、膨大な数からたった1個だけ選ばれた精子が、卵子と出会い、数々の幸運を重ねて、ようやく誕生したのです。

 こう考えると、自分がこの世に生を受けたこと、いまここに生きていることが奇跡なのだと感じませんか。

 そしてこの奇跡は自分だけに起こったものではありません。自分の命のもととなった父親と母親にも、その父親と母親である4人の祖父母にも、さらに8人の曽祖父母にも奇跡が起きたのです。もちろん曽祖父母にも両親がいたわけで、その先にも連綿と続く命のつながりがあり、その数だけ奇跡があるのです。このうちのひとつでも奇跡が欠けていたら、いまの自分はありません。まさに、自分は「幸運の人」といえるのではないでしょうか。

 ところで、運をよくするためには「運がいい」「ツイている」と声に出して言うべきだ、とよくいわれます。

これには私も賛成で、自分は運がいいと思う練習をするときには、声に出して「運がいい」と言うのがおすすめです。

「自分は運がいい」が脳に定着しやすくなる

 というのは、人間が何かを記憶するときには、大脳深部の海馬という部位が働くからです。

 人の記憶は、視覚、聴覚、嗅覚などの感覚器官から海馬に情報が送られ、そこで整理統合され、短期間記憶すべきもの、長期にわたって記憶すべきもの、すぐに忘れてもかまわないものなどの判別がされるのです。

 この情報を送る際に、働かせる感覚器官が多ければ多いほど、記憶は強化されやすく、長期間にわたって残りやすいとされています。

 よって、ただ心の中で「運がいい」と思っているより、声に出して「運がいい」と言ったほうが、長期間の記憶にかかわる脳の細胞は活発に働き、「自分は運がいい」ということが脳に定着しやすくなるのです。

 同時に、「運がいい!」「ラッキー」「ツイている!」などと書いた紙を部屋の目につく場所に貼っておく、というのも視覚を働かせるので有効でしょう。

 さらに、これらは少なくとも3週間は意識して続けるようにしてください。人間の脳の中に新しい回路ができるようになるには、少なくとも3週間はかかるとされているからです。

運のいい人は積極的に運のいい人とかかわる

「自分は運がいい」と思えるようにするには、いつも運のいい人のそばにいる、というのもひとつの方法です。

 人の運のよしあしは、科学的にみれば、もともとその人がもっているというよりも、その人の行動パターンによって決まると考えるべきでしょう。

 運のいい人のそばにいると、その行動パターンが似てきて、「運を呼び込む」ことができるのです。

 人はとかく、近くにいる人間の影響を受けやすいものです。

 江戸時代には、結婚相手を決める際、「結婚しようと思っている娘の母親を見なさい」と言われたそうです。遺伝的に似ているということもあるでしょうが、娘はもっとも長く時間を共にした母親の影響を大きく受けているはずで、考え方やモノの見方、下駄の歯の減り方までが母親と似る。よって、母親を見れば娘が自分の結婚相手としてふさわしいかどうかを見極められる、というのです。

 ではどうして、人はいつも近くにいる人間に似てしまうのでしょうか。

 これは、脳の中のミラーニューロンという神経細胞が大きく関係しているのではないか、といわれています。

 ミラーニューロンとは、イタリアのジャコモ・リツォラッティらのグループが1990年代にサルの実験によって発見したものです。

 ミラーニューロンは、自分が運動を行ったときに活発化する脳内の神経細胞ですが、ほかの人の運動を見たときにも活発化する、という特徴があります。たとえば自分の手で何かをつかんだときだけでなく、ほかの人がモノをつかむのを見たときにも活発化する。他人の動きを、鏡に映る自分の動きのように感じて活発化するためミラーニューロンと呼ばれています。

 ミラーニューロンがとくに注目されているのは、この細胞が他人の行動意図や目的を理解して反応するところ。

 たとえばサルに、人がりんごをつかんだところを見せると、人がそのりんごを器に入れたときよりも、りんごを口に運んだときのほうが、サルのミラーニューロンは強い反応を示すのです。

 つまり、ミラーニューロンは他人がその行動をとる背景まで読んでいるのです。何のために、どんな意図をもってその行動をしているかまで読み、その目的や意図によって反応の仕方が変わってきます。

 たとえば家族や友人などがイライラしているときの振る舞いを見ると、イライラしていることを事前に知っていなくても「何だかイライラしていそうだな」とわかる場合がありますね。振る舞いによっては「何かよいことがあったのかも」と思うこともあるし、「何か企たくらんでいそうだな」と感じることもあります。

 このことは、他人の気持ちを理解する共感にもつながります。私たち人間が他人の喜びや悲しみを理解し、共感できるのは、このミラーニューロンが人間の脳にもあって、大きくかかわっているのではないか、とされているのです。

それは錯覚であってもかまわない

 となると、運のいい人と積極的にかかわることのメリットがわかります。

 運のいい人とできるだけ一緒にいるようにして、その行動をよく観察するのです。すると、まるで運のいい人と同じ行為をしているかのごとく、自分のミラーニューロンが活発化します。

 やがて、観察していた行動や振る舞いは自分のものとなり、自分も同じような行動パターンをとるようになるでしょう。考え方やモノの見方も似てくるはずです。

 そうなったらしめたもの。「自分も運がいい」と思えてくるでしょう。

 仮に、それは錯覚であってもかまわないのです。「自分は運がいい」と思い込むところが、運をアップさせるためのスタート地点だからです。

<本稿は『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

【著者】
中野信子(なかの・のぶこ)
東京都生まれ。脳科学者、医学博士。東日本国際大学特任教授、森美術館理事。2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。著書に『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』(日経BP)、『脳の闇』(新潮新書)、『サイコパス』(文春新書)、『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)、『毒親』(ポプラ新書)、『フェイク』(小学館新書)など。

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