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しんどい環境にいる人は、そこであえて頑張る必要はない

「あの人はメンタルが強いなあ」

 そんなふうに感じる人が周りにいませんか。プレッシャーの中でも冷静に対応できる人がいる一方で、自分は不安になったりイライラしたり――。でも、実は結果を出している人たちも、同じように悩んでいるものです。

 精神科医の木村好珠さんの著書『メンタル弱いまま楽しく生きてく』よりお届けします。

『メンタル弱いまま楽しく生きてく』(サンマーク出版) 書影
『メンタル弱いまま楽しく生きてく』

変えるべきはメンタルの弱さじゃなくて、あなたの環境

 学校や職場で活躍している人を見て、なんとなくデキる人=メンタル強い人という発想になっている人が多いと思います。

 プレッシャーがかかる大事な場面や負荷の大きい重大な仕事に直面しているときでも、情緒が安定し、素晴らしいパフォーマンスを発揮できる。

 そういう姿を見ると、

「この人、メンタル強いなぁ」

 と思う人も多いのではないでしょうか。

 同じ状況に自分が置かれたときは、焦ったり、不安になったり、イライラしたり、情けなくなったりとさまざまな感情が生まれ、その感情に振り回されてしまい、結果もついてこない。

 そんな弱い自分がイヤで、自分で自分を嫌いになるという負のループに陥ってしまったことがあるという悩みをカウンセリングでよく聞きます。

 そして、みんな口をそろえて、

「私、メンタル弱くて。メンタルが強くなりたいんですけれど、どうしたらいいですか」

 と言うのです。

強くすべきなのはメンタルレベルではなくて、回復力

 結論から言うと、デキる人=メンタルが強い人ではありません。

 ごくまれに、経営者やプロアスリートに、びっくりするくらいメンタルが強い人はいらっしゃいます。メンタルレベル100以上の強者たちです。

 でも、そういう人は本当にごく少数です。

 ほとんどの場合はだいたいメンタルレベル20~40くらい。

 デキる人=メンタルレベルが高いってわけじゃないんです。

同じメンタルレベルなのに、どうしてそんなに違いがでるのか。

 それは、回復力が違うからです。

 あなたが「あの人みたいにメンタル強くなりたい」と思っている人だって、何回もメンタルダウンを繰り返しているはず。

 むしろ頑張っている人ほど、いろんな壁にぶつかったり、人間関係で板挟みになったりして苦しんでいる人のほうが多いです。

 あなたが気づかないところで苦しんで、あなたの見えないところで驚きの速さでメンタルを回復させているんですよね。

回復!

 だから、メンタル、強くする必要ないんですよね。

 メンタルのレベル上げは必要なくて、弱いままでいいんです。

 必要なのは、回復のスキルを身につけること。

 回復が苦手で、自分で自分のメンタルを上げることができないと、やる気が湧かない、ミスしがちになる、頑張ろうと思えないなど、モチベーションもパフォーマンスも低い状態が長く続きます。

 低い状態が長く続けば続くほど、回復するのにも時間がかかってしまいます。長ければ長いほど、自分で自分のことがイヤになったり、他人からのあなたの評価も下がってしまいがち。

 自分の機嫌はなるべく早く、自分で回復させるに限ります。

 メンタルを早く回復させるのは、簡単です。

 自分がメンタルダウンしにくい環境を自分でつくる。

 自分がメンタル回復できる環境を自分でつくる。

 大きく分けると、この2つです。

 スヌーピーが出てくる漫画『ピーナッツ』の有名な言葉に、

「配られたカードで勝負するしかないのさ」

 というものがあります。

 「今、あなたが置かれている環境、持っているもので結果を出すしかない」という意味です。

 すごくいい言葉ですけれど、本当にそうでしょうか。

 もちろん今いる環境で心身共に健康で結果を出せたら、いいですよね。

 でも、ちょっと理想論というか、現実問題、難しくないですか?

 人間関係がうまくいかなかったり、やりたい仕事内容ではなかったり、不条理なことで怒られたり、現実ってメンタルを弱らせることが多いです。

 そこで幸せになったり、結果を出せって、ちょっと無理ゲーです。

 よくよく考えてみてください。その方法以外にもあると思うんです。

 配られたカードがどうやったって自分に不利だったり、それで戦うのがしんどかったりしたら、配られたカードを交換してもらえばいいし、ゲームを1回休めばいいし、違うゲームにしない? って提案してもいい。

 提案してみたら、案外「そうだね」ってみんな言ってくれるかもしれない。

 最初からしんどいとわかりきっている環境で、あえて頑張る必要はないんです。

 必ずしも置かれた場所で咲く必要はなくて、あなたが咲きやすい場所を選んでもいいんです。そういう選択肢をあなたは持っています。

 変えられるものは、変えたらいいんですよ。

 しんどいことに向き合うのが正解じゃないし、しんどいを変えることは逃げではないんです。

 職場がつらい人は、もちろん転職などをして所属をガラリと変えることも有効です。

 ただ、それだとメンタルは回復するかもしれませんが、回復力はレベルアップしません。

自分で変えられる環境は自分で変えてみる

 回復力をアップさせるために、自分が今いる環境で自分が変えられる部分を変えてみましょう。

 環境というとすごい大きなイメージを持つかもしれません。

ここでいう環境は、あくまでも自分の半径1メートルくらいの範囲です。

 この半径1メートルの環境が整うことで、あなたのメンタルが弱まる回数が減って、たとえ弱ったとしても自分で自分のメンタルを回復させやすくなります。

 この本では、その環境の整え方をいろいろ紹介していきます。

 そして、大前提として覚えておいてほしいのが、メンタル弱い=ダメなことではないってことです。

メンタル弱いは欠点じゃない

 私は、メンタルの弱さは愛嬌だと思っています。

 全部完璧な人って、なんとなく近づきがたかったり、接しづらかったりしたことありませんか?

 逆に、人のちょっと抜けたところや失敗したところを見たとき「あー、この人も人間なんだ。良かった」とホッとして、会話するのが楽になったことはないでしょうか。

 "できない"は、隠して他人から指摘されれば欠点、自分から見せちゃえば"愛嬌"です。

 あまりに人に迷惑のかかることであれば改善する必要はありますが、そういう場合は、頑張ればいいんです。できないことを頑張っているあなたの姿を見て、助けてくれる人も現れます。

 メンタルが弱い自分をダメだと思って隠さないで、見せること。

 そうすることであなたの愛嬌が周囲に伝わり、人間関係も安定し、過度なプレッシャーから解放されて、自己評価も他人からの評価も上がるきっかけとなります。

 メンタル弱いまま、楽しく生きていきましょう。

ベッドの上でパジャマを着て微笑んでいる女性

<本稿は『メンタル弱いままたのしく生きてく』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 SUNMARK WEB編集部)
Photo by shutterstock

【著者】
木村好珠(きむら・このみ)
精神科医、スポーツメンタルアドバイザー、産業医、健康スポーツ医

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