説明がヘタな人と「抜群にうまい人」を分ける3つの条件
会議やプレゼン、業務報告などにおいて「説明がうまくないなぁ」と人、いますよね。そういう人の説明も、たった3つの条件を揃えさえすれば格段にわかりやすくなります。
ベストセラー『「いまの説明、わかりやすいね!」と言われるコツ』(浅田すぐる著)よりお届けします。
「わかる」ってそもそもどういうこと?
「そもそも『わかる』とは何でしょうか?」
「わかる」について、あなたなりに定義してみてほしいのです。
ひとしきり考えたら、次に進んでください。
・・・
いかがでしょうか。おそらく多くの方が「急にそんなこと言われても」という感想を抱いたと思います。そして「わかる」という言葉について、そもそもよく「わかっていない」という事実に気づかれたのではないでしょうか。
「わかる」という言葉についてよくわかっていないのに、「わかりやすい説明」も何もあったものではありません。言われてみればその通り、という感じだと思いますが、このことを自覚しているビジネスパーソンは、決して多くはないようです。
私のお気に入りの本の1つに『わかったつもり』(西林克彦/光文社)があります。この本を読んでみると「言われてみれば当たり前だけれど、多くの人が見落としてしまっている『ある事実』」に気づくことができます。
その事実とは「『わかる』にはキリがない」ということ。
たとえば、1冊の本を読み終えた瞬間は、それなりに「わかった」という感覚になると思います。
ですが一度本を閉じ、内容を3か月間実践したあと、あらためてその本をもう一度読んでみたとしましょう。
あなたはより深く、その本の内容を理解できたはずです。そしてきっと、こう気がつくでしょう。1回目の「わかった」は「わかったつもり」にすぎなかった、と。
「あのとき、十分理解したつもりになっていた自分の読みの浅さが恥ずかしい」──そう感じる人もいるかもしれません。
このように「わかった」とは概して、あとから振り返ると「わかったつもり」にすぎない状態のため、ある時点での「わかった」は、決して「すべてを理解した」ことにはなりえないのです。
さらに、2回目の「よりわかった」も、3回目、4回目の「わかった」と比べればやはり「わかっていない」ということになり、この感覚はどこまでもイタチごっこを続けていくことになります。
「『わかる』とは、キリがないもの」
この定義を、まず頭に留めておいてください。
いかに「わかったつもり」になってもらうかが重要
一方、「わかる」という言葉についてよくわかっていなかったとしても、私たちは「わかりやすい」「わかりにくい」などとふだんから感じ、話をしています。
先ほどの定義をふまえると、それらはすべて「わかったつもり」にすぎないわけですが、それでも私たちは選択や決断や行動を積み重ねて、日々仕事を進めていかなければなりません。「キリがないから」と言っている場合ではないのです。
「わかりやすい説明」を実践していくためには、本来キリがない「わかる」について何らかの方法でキリをつけ、相手に「わかったつもり」になってもらう必要があるわけです。
ただ、くれぐれも誤解してほしくないのは、これは人をだますとかごまかすといった類(たぐい)の話ではないということです。そもそも「わかる」に終わりがない以上、どこかの時点で「わかった」としてもらうしかないのですから。
だからこそ、「わかったつもり」になってもらえるよう、説明する側から積極的に仕掛けていくのです。
「わかりやすい説明」の3つの条件
以上をふまえたとき、「わかりやすい説明」の条件とはいったいどうなるのか?
これも、細かく挙げればキリがないため、代表的な3つのキーワードに絞ってお伝えしましょう。
まず、1つ目が「3つ」です。
私たちにはもともと、要素が「1つ」や「2つ」だけでは、なかなか「わかった」という納得レベルにまで達しにくい傾向があります。「これだけでは『キリ』をつけられない」となってしまうのです。
したがって、絞るべき要素の数は「3つ以内」でもかまわないのですが、さらに理想的な形として「ちょうど3つ」を目指してほしいのです。
「AとBとC」というように要素を「3つ」挙げて説明されると、とたんに「もう十分」という心境になり、「キリ」がつけられるようになるでしょう。これが反対に「4つ以上」の数になると、いつまでも「キリがつけられない」状態に溺れてしまうことになります。だから、いったん「3つ」にしようと決めたら、できる限りその数に着地できるように努めるのです。
(具体的にどうやって「3つ」にしていくのか、という方法については、本書『いまの説明、わかりやすいね!』と言われるコツ』のPART3で詳しく解説しています)
次に、2つ目のキーワードが「構造」。
これはどういう意味かというと、思考整理やコミュニケーションの世界では、これまで積み上げられてきた知見のなかで「この構造にはめて説明すれば、よほどのことがない限り『わかった』と言ってもらえる」、そんなパターンが存在します。
たとえば、私たちがよく身近で耳にする例が「三大○○」です。
三大欲求、三大料理、三大祭りなかには「三大がっかり」などというものもありますね。「○○」に当てはまるジャンルにおいて、特に主だったものを3つ取り上げて紹介するという「構造」です。
これは言い換えれば、「代表性」となります。なぜなら「この構造にはめてしまえば、ある程度代表的なものはカバーできる」という安心感を得られるからです。
こうした便利な構造を用いることで「わかった」という感覚を相手に抱いてもらいやすくなり、「わかりやすい説明」の量産も可能になってきます。
最後に3つ目が「動作」です。この表現を見聞きした相手が「行動」できるか、「実践」できるか、「習慣化」できるかです。
これまでも「こうすればわかりやすい説明になりますよ」「この伝え方でOK」といったことを説いたビジネス書は、多数存在しています。しかしながら、その多くが「動詞」レベルの説明に留まっているため、実践できるかどうかは読者に丸投げというところが多分にありました。
結局、もともと「動詞」レベルでも自分なりに解釈して行動できてしまう人は問題ない一方で、そうでない人は本を読んでもいつまでも変われないという矛盾をはらんでいます。
多くの読者はそもそも「(動作レベルで実践)できなくて困っている」ために本を読むわけですから、「動詞」レベルの説明に終始する本に、はたしてどれだけの価値があるのか──私には疑問に感じられてなりません。
さて、ここまでの内容をふまえてポイントを整理すると、次のようになります。
「わかりやすい説明」の条件とは?
① 数を「3つ」に絞ること(脱・過剰)
② 「構造」にはめること(脱・網羅)
③ 「動作」で伝えること(脱・動詞)
<本稿は『「いまの説明、わかりやすいね!」と言われるコツ』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock
【著者】
浅田すぐる(あさだ・すぐる)
「1枚」ワークス(株)代表取締役
愛知県名古屋市出身。旭丘高校、立命館大学卒。在学時はカナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学留学。トヨタ自動車(株)入社後、海外営業部門に従事。米国勤務などを経験したのち、6年目で同社の企業ウェブサイト管理業務を担当。「伝わるサイト」へのカイゼンを実現し、企業サイトランキングで全業界を通じ日本一を獲得する。その後、日本最大のビジネススクールである(株)グロービスへの転職を経て、独立。現在は、独自の教育プログラムとして“「伝わる」思考×「1枚」の型 1sheet Frame Works"を開講。人気講座となっている。
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