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子どもの「ごっこ遊び」は好きなだけやらせてあげたほうがいい

「8歳の次女はごっこ遊びが大好き。毎日いろいろなものになりきって遊んでいます。長女は習い事で忙しいので、どうしてもおままごとの相手を親に求めてくるのですが、忙しいので毎回は付き合ってあげられません。もう2年生、こんなことをしていていいのでしょうか」

 こうしたお母さんの悩み。どうするのがいいのでしょうか?

年間500本以上の論文を読む著者が厳選した世界の研究を根拠としてまとめた『自分で決められる子になる育て方ベスト』よりお届けします。

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なぜ、ごっこ遊びが考える力を伸ばすのか?

 ごっこ遊びは2歳くらいから始まるといわれており、およそ小学校低学年までは子どもが好む遊びといえるでしょう。

まず、結論をお伝えします。ごっこ遊びは絶対に好きなだけやらせてあげた方がいいです。

 ごっこ遊びのメリットは、医学研究領域の音声言語学や発達心理学、さらには教育学や社会学などの多分野にわたって研究されています。そのどれもが、「ごっこ遊びをしっかりやっている子は、やっていない子と比較して言語能力、他者理解、好奇心および想像力などの分野において、それぞれの能力が高くなる傾向が認められた」といっています。

 つまり、ごっこ遊びをたくさんして育った子の方がコミュニケーション力や思考力が高まるのです。

 ごっこ遊びを円滑に進めるためには、生きていく上で必須となる以下の能力が求められます。

●役を演じるための言語能力
●役の置かれた状況や役割を想像する社会性
●その役の背景を作り出す想像力と創造力

 さらには、絵本やテレビの中で見た想像の情景を取り入れる力や、実際に経験した場所や見たことのある職業を組み合わせて登場させるフレキシビリティ(柔軟性)も求められるのです。相手のいるごっこ遊びでは、状況に応じて自分以外の役割の考え方を想像したり、一人で2役も3役もこなしたりします。これらは、他者の発言や視点を無意識に経験できる重要な機会になります。

 実際に「ごっこ遊び」によって、子どもの社会性や感情コントロールに良い影響を及ぼしていることを示唆する研究が、ケースウエスタンリザーブ大学の心理学部教授であるサンドラ・ロス博士の2008年の研究によって明らかにされています。

15分、5往復、シンプルな道具

 私たち親は、忙しい日々の中でどうやってごっこ遊びに付き合えばいいのでしょうか。

 今日からできることとしては、時間を区切ることです。仕事や家事に忙しいと思いますが、1日15分だけ捻出して一緒にごっこ遊びをしてみましょう。15分という短い時間であっても、前述したさまざまな能力を伸ばすためのいい習慣になります。

 15分が経ち、離れるときは時間を理由にするのではなく、「プリンセスの明日のスケジュールをシェフと確認して参りますね」や「Uber Eatsの配達員の方が来たようなので、これを渡してきますね」などとごっこ遊びの一環として離れてみましょう。一人でもごっこ遊びを続けてくれる確率が高く、忙しい私たちにとっても楽ですし、安心です。

 また、時間以外に会話の往復数を重視してもいいでしょう。

 ヴァンダービルト大学のデヴィッド・ディッキンソン教授は、子どもとの会話では5回往復することを推奨しています。レストランごっこであれば、トッピングを頼んだり、お会計をお願いしたり、「持ち帰ります」と言ったり、「キャッシュレスでもいいですか?」と聞いたりして、会話の往復を試みてください。お店やメニューについて質問をして、子どもの発言を促してみるのもいいでしょう。

 道具にもポイントがあります。できる限りシンプルなものを必要な道具に見立てることです。

 例えば、ハンバーガーショップの店員さんとお客さんという設定のごっこ遊びが始まったとしましょう。おもちゃメーカーが販売しているプラスチックや木でできた立派な食材セットがあると、与えられた素材の中でしか子どもはハンバーガーを作れません。

 反対に、新聞紙やティッシュ箱しか手元になかったとしたらどうでしょう。そこには、子どもの想像上の店構えとメニューが溢れかえります。子どもは何もないドアを開けて入ってきて、椅子をカウンターに見立てて注文を受けます。

 新聞紙を重ねてちぎってハンバーガーと思われる塊のようなものを渡して、誇らしげに「チョコレートお好み焼きバーガーです」などと言うのです。こちらも負けじと、「焼きそばトッピングもお願いします」などと、想像力を働かせて応じてみましょう。

<本稿は『自分で決められる子になる育て方ベスト』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock

【著者】
柳澤綾子(やなぎさわ・あやこ)
医師、医学博士、東京大学医学系研究科公衆衛生学客員研究員

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