複利の仕組みを実はよくわかってない人に知ってほしい基本中の基本
今年3月、日本銀行はマイナス金利政策を終了し、17年ぶりの利上げによって、金融政策の正常化に動き始めました。7月にはさらに政策金利が引き上げられましたが、追加利上げ観測の中で10月は据え置かれたという状況で、金利をめぐるニュースが以前よりも飛び交うようになっています。
私たちの預金に金利はつくのでしょうか? 金利の話でよく出てくる「単利と複利」「固定と変動」のそれぞれの違いとは?
「『金利』を実はわかってない人に知ってほしい超基本」「長期金利と短期金利は何がどう違うか知っていますか」で金利の基本を知ったマネー知識ゼロの超・文系編集者が、今回も元国税局のお金のプロに聞きます。ベストセラー『すみません、金利ってなんですか?』よりお届けします。
◎前回、前々回記事はこちら
預金に金利は「いつ」つく?
梅田直希 サンマーク出版編集部(以下、梅田):金利の仕組みについては、大体わかった気がします。じゃあ、金利って預けたお金にどんなふうにつくんですか? 1年に1回、つくんでしょうか?
小林義崇(以下、小林):普通預金の場合、頻繁に出し入れがあるので、預けている金額に対して1年を365日として日割りで計算されます。
梅田:日割り? 毎日つくってことですか?
小林:はい、理論的には1日ごとに金利がつくということです。1日の終わりの残高が100万円の場合。利率を0.001%と仮定すると、100万円×0.001%÷365=0.02739。つまり約0.02円が1日あたりの利息となります。
梅田:0.02円? それだけ?
小林:もちろん、銭とか厘の世界になってしまうので、「1日ごとに計算して、リアルタイムで口座に反映する」なんてことはしません。実際には、1日ごとに計算した結果を1か月や半年ごとに締めて、翌月の月初にまとめて預金口座に加算されます。0.001%の普通預金に100万円を預けて出し入れしなかった場合、半年締めでも、半年間でつく利息は5円。
梅田:半年で5円……
しかも、利息の20.315%は税金として天引きされますから、実際に受け取れる金額はさらに少なくなります。
梅田:金利にも税金がかかるんですね
小林:はい、残念ながら。
梅田:それに、1年預けても10円にもならない。0.001%っていう金利じゃ、ほんとにほぼ増えないですね。
小林:そうですね。金利について、もう少し突っ込んで説明しましょう。金利のつき方には「単利」と「複利」の2種類があります。
梅田:聞いたことあるような、ないような……
金利のつき方①──金利の計算法:「単利」か「複利」か
小林:単利とは「毎年同額の金利が上乗せされる金利のつき方」。複利は「もともとあるお金、すなわち元金についた金利を、次期の元金に組み入れる金利のつき方」。言い換えると、複利の場合、「金利にも次期の金利がつく」ということになります。
梅田:金利にも次期の金利がつく?
小林:わかりやすく言うと、複利の場合は金利が「雪だるま式」に増えていく計算になります。たとえば100万円を1年間預けて100万10円になったなら、2年目は100万10円に対して金利がつくということです。単利と複利を比べると、同じ金額を同じ金利で同期間預けた場合、複利のほうが利息は当然多くなります。
梅田:うーん、具体的にどれくらいの違いが生まれるんですか?
小林:たとえば、銀行に100万円預けたとします。預けた年の金利が1%として、まずは単利で計算してみましょう。1年後には1%の金利が上乗せされて、101万円になりますよね。2年後には、また同じ1%の金利が上乗せされて102万円。3年後には、103万円になります。
梅田:一方、複利だと?
小林:1年後には1%の金利が上乗せされて、101万円になる。2年後には「101万円」に1%の金利が上乗せされて、102万100円に。3年後には「102万100円」に1%の金利が上乗せされて、103万301円になる。
梅田:たしかに、複利のほうがお得ですね。3年後を比べると301円の差がついている!
小林:今は預金の金利が低いので、現実には単利でも複利でもそこまで大きな差はありません。でも、複利のインパクトを感じてもらうために、あえて毎月1万円ずつ、金利1%で30年積み立てたと仮定してみましょう。単利であれば利息の総額は3万6000円ですが、複利であれば約59万円まで跳ね上がります。
梅田:めっちゃ差がついてる絶対複利を選ぶべきですね!
小林:一般的には、定期預金の「元利自動継続」というタイプを選べば何も言わなくても複利の設定になっています。定期預金の満期が来たら、自動的に利息も含めた金額で新たな定期預金に乗り換えてくれるので、長く預ければ預けるだけ複利の効果でお得、ということです。ただし、借金の場合、複利だと逆に返す金額が増えることになるので要注意です。
梅田:そ、そうですね
金利のつき方②──金利の契約法:「固定」か「変動」か
小林:それと、金利の契約の仕方には2種類あることもポイントです。「金利はずっと同じ」という契約と、経済状況に応じて「金利が変わる」という契約です。「金利はずっと同じ」という契約が「固定金利」。「金利が経済状況に連動して変わる」という契約が、少し前にお話しした「変動金利」。単利・複利の違いも大切ですが、固定金利・変動金利の違いもおさえておきましょう。
梅田:固定と変動この違いが一般の生活に関係してくることはありますか?
小林:もちろん! たとえばお金を長期間銀行に預けるとき、定期預金の中には固定金利か変動金利か、選べる商品があります。反対に銀行からお金を借りるとき、たとえば家を買うために住宅ローンを組んでお金を銀行から借りるときにも、固定金利か変動金利か、選ぶケースが多いです。
梅田:損得を計算しながら固定金利か変動金利か、選ばなきゃいけないってことですね。
小林:そうです。「金利はこれからどうなるのか」を予想しながら、2つの契約のうちどちらが自分にとって得なのか、吟味することになります。さらに、同じ固定金利でも固定にする年数を選ぶことができますよ。たとえば「10年固定」というタイプのローンであれば、ローンを組んでから最初の10年間は固定金利ですが、あとの返済期間は変動金利になります。
梅田:けど、金利が上がったりするリスクを考えると、変動金利は怖いですよね。ローンを組む際、固定金利を選ぶのがオーソドックスなんですか?
小林:そうとも限らないですよ。固定金利の場合、変動金利よりも金利が高く設定されているものなんです。ですから、「金利は今後上がらない」のであれば変動金利が有利ですし、逆に「金利は今後上がる」とふんだ場合は固定金利、ということになりますね。
梅田:将来の金利のことなんて、僕、まったくわかりません
小林:もちろん、みんなそうですよ。でも、いくら変動金利といっても、突発的な天災や世界情勢の変化などがない限り、金利の値が突然大幅に上がったり下がったり、なんてことはほぼありません。
<本稿は『すみません、金利ってなんですか?』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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【著者】
小林義崇(こばやし・よしたか)
元国税専門官、フリーランスライター、Y-MARK合同会社代表