腰痛を抱えがちな人とあまり悩まない人の身体は何が違うのか
腰痛に悩まされ続ける人と、そうでない人は何が違うのでしょうか。カギは、腰の周りにある小さな筋肉たちの「チームワーク」にあります。
『腰痛が4週間で解消! 「大腰筋」を強くする』よりお届けします。
「腰痛になりやすい腰」と「腰痛になりにくい腰」はこう違う
腰部分は、真ん中に腰椎が1本立っているだけで、他に骨はありません。したがって、とても不安定な構造になっています。
たとえば太ももの筋肉(大腿四頭筋=だいたいしとうきん・ハムストリング筋)は、強きよう靱じんで疲れにくく、滅多なことで故障することはありません。アスリートが太ももの肉離れを起こすことはありますが、それは激しい運動や競技などをしたから。普通に暮らしている限り、太ももの慢性症状で苦しむということはまずありません。
また、重いものを持ち上げるなど、姿勢を変えたときにいきなり腰に激しい痛みが生じるぎっくり腰。経験者も非常に多い症状ですが、背中ではぎっくり状態はあまり起こりません。
なぜなら、背中には肋骨(ろっこつ)の支えがあるからです。背中は背骨と肋骨が1つのユニット(組み立て)になっていて、その上に筋肉が張り付いている構造になっているため、疲労系のこりや張りは感じても、ぎっくりと呼ばれる強烈な痛みはほとんど起きないのです。
見るからに強靱な太ももや、肋骨に守られた背筋に比べ、腰の筋肉(脊柱起立筋)は本当に薄くて弱くて力もありません。疲れやすく、痛みが出やすいのも当然のことなのです。
こうした構造の不安定さを考えれば、一度も腰痛を経験することなく一生を終えられることは、奇跡に近いのかもしれません。
ではなぜ、こんな不安定な構造であっても人は暮らしていけるのかというと、腰まわりの筋肉ががんばって腰椎を支えているからです。
腰まわりに筋力は必要か
腰まわりには、前側に大腰筋、腹筋があり、後ろ側に脊柱起立筋、腰方形筋、広背筋、大臀筋(だいいでんきん)とあり、横には、腹斜筋、中臀筋(ちゅうでんきん)があります。
太ももの筋肉のように強靱でもなければ強硬でもない腰まわりの筋肉たちが、日々か細い力を振り絞り、力をあわせて上半身の全体重を健気(けなげ)に支えているのです。
すべての腰痛が筋力と関係しているわけではありませんし、「腰痛と腰まわりの筋力の有無は、まったく関係ない」という意見もあります。
確かに、筋力がまったくなくても、腰痛を一度も経験したことがないという人もいますし、アスリート並みに腰まわりの筋肉が発達している人でも、腰痛に悩む人は数多くいます。
でも、やはり腰まわりの筋力をつけることは腰痛の改善や予防の基本中の基本だというのが私の考えです。
姿勢を保っていられるのも、手足を動かして運動ができるのも、筋力があるからこそ。筋力がなかったら、外部の衝撃からからだを守ることもできないし、体温を維持することもできません。
腰まわりの筋肉は、いわば天然の「コルセット」。外側からガードし、サポートする力があれば腰椎は安定しますし、ちょっとしたねじりや傾きに対しても耐久性があれば、腰痛は起きにくくなることは確実です。
質のよい筋肉の条件
実際、アスリート並みに筋力がありながらも腰痛に悩む人は、過度な運動や筋トレのやりすぎなど、腰への過度の負担が原因になっています。
さらに厳密にいうなら、筋力がなくても筋肉に柔軟性があれば腰痛は起きにくくなりますし、筋力があっても柔軟性がなければ腰痛は起きやすくなります。
つまり筋力もなく柔軟性のない人はもっとも腰痛が起きやすく、筋力があり柔軟性のある人がもっとも腰痛になりにくいというわけです。
ちなみに、質のよい筋肉はやわらかくなめらかです。
筋力がアップすると、筋肉が引き締まり、支える力が強くなり、筋力が低下すると、筋肉がたるみ、支える力が弱くなります。
しかし、筋肉が硬いからといって必ずしも筋力があるわけではないし、こっているわけでもありません。
同様に、筋肉がやわらかいからといって必ずしも筋力がないわけでもなければ、こっていないわけでもありません。
筋肉の理想的な状態は、やわらかくて弾力性に富み、しっかりと引き締まっていて、支える力があることなのです。
<本稿は『腰痛が4週間で解消! 「大腰筋」を強くする』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by shutterstock
【著者】
宮腰 圭(みやこし・けい)
整体家/「骨と筋」代表/「アカデミー骨と筋」主宰
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