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高齢の母が大腿骨を骨折、治療はどうしたら?

 高齢者の骨折には要注意。特に足の付け根(大腿骨頸部)や手首、背中、肩などの骨を折ると立つことや歩くことができなくなります。たった1カ所の骨折が寝たきりと要介護状態を招くからです。

 骨の量(骨密度)が減少し、骨が脆くなることで骨折しやすくなる「骨粗しょう症」。特に閉経後の女性に多く見られ、寝たきりの原因となる大腿骨頸部骨折や、日常生活に大きな支障をきたす脊椎圧迫骨折のリスクを高めます。日本人の中で1000万人を超える患者がいるとされます。

 もし高齢になってから骨折した場合、骨粗しょう症の治療は間に合うのか。また、骨の健康をめぐって巷で言われるような情報を信じていいのか――。

「骨粗しょう症」をはじめ骨代謝の診断・研究・治療の世界的権威が、100年健康に生きるための骨の真実を明かした『100年骨』より、骨粗しょう症の治療や骨の栄養に関するポイントをQ&A方式で分かりやすく説明します。

『100年骨』(サンマーク出版) 書影画像
『100年骨』

骨粗しょう症の治療、いつから始めるか

Q) 高齢の母が室内で転倒し、右の大腿骨を骨折しました。ドミノ骨折が心配ですが、今から骨粗しょう症治療を始めても意味がありますか?

A)骨粗しょう症の治療は、いつから始めても意味があります。大腿骨近位部骨折は、骨粗しょう症を治療することで反対側の大腿骨の骨折予防が可能であり、骨折の連鎖(ドミノ骨折)を止められるという科学的な根拠も確立されています。

2022年4月の診療報酬改定で、初回骨折後(一次骨折)2回目の骨折(二次性骨折)予防を行うと医療機関に保険点数加算がつくようになりましたので、お医者さんも積極的に治療してくれるはずです。

どうぞ早めに治療を開始し、お母様が末長くお元気で過ごされるようにしてあげてください。

巷で話題の「骨強化成分」、整形外科医はどう見ている?

Q)若返りの骨ホルモン「オステオカルシン」とは?

A)近年メディアが「若返りホルモン」として話題にしている成分ですね。オステオカルシンは骨芽細胞でつくられるタンパク質で、ビタミンKの作用のもと、骨質を強固にする役割を果たすと考えられています。

ビタミンKは骨代謝にとって重要なビタミンです。昨今、骨を丈夫にする、あるいは全身の若返りに役立つ成分として注目されているオステオカルシンですが、骨の強化という意味ではむしろ、ビタミンKのほうが重要と言えるかもしれません。

ただ、骨粗しょう症医療にかかわる者としては、オステオカルシンは骨代謝マーカーと認識しています。特にビタミンKが不足すると増加する血中のオステオカルシンは、骨密度とは独立した大腿骨頚部骨折の危険因子であることから、骨のビタミンKが足りているかどうかを測る目安として診断に利用しています。

※参考:骨リモデリングと血液凝固系・凝固制御系のクロストーク (jst.go.jp)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/14/12/14_555/_pdf/-char/ja

Q)骨の強化にはビタミンKも重要ですか?

A)もちろん重要です。マスコミはしばしば、単一の栄養素を大々的にクローズアップする傾向がありますが、人体の活動は各種の栄養素で成り立っていることを忘れてほしくありません。骨の強化にもカルシウムはもとより、コラーゲン、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンB群、ビタミンCなどが複雑にかかわっています。

その上で、ビタミンKの役割ですが、骨芽細胞や破骨細胞に働きかけて骨の形成を促すとともに骨吸収を抑制することが報告されており、骨代謝バランスの調節に役立っているのではないかと考えられます。

ビタミンKの摂取には、納豆がおすすめですが、苦手な人や、これまでの食生活では足りないと感じている場合には、カルシウムやビタミンDとともにビタミンKを強化した牛乳を飲むのもいいと思います。

Q)コラーゲンは増やしたほうがいい?

A)増やす必要はありません。骨密度だけでなく骨質も骨の強度を担うこと、骨質は鉄筋にあたるコラーゲンのよし悪しに左右されることをお伝えしてきましたので、コラーゲンを増やさなければと思った方もいるかもしれません。骨質はコラーゲンの量ではなくコラーゲンの質が問題で、骨質劣化型骨粗しょう症の方は、コラーゲンが少ないのではありません。コラーゲンは十分骨にあります。しかし、コラーゲンが老化して、骨質が悪くなっています。

骨質を改善するために、酸化ストレスを少なくする生活習慣と運動、栄養面ではビタミンD、ビタミンKやビタミンB群を摂るようにしてください。

<本稿は『100年骨』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by shutterstock

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【著者】
斎藤 充(さいとう・みつる)
東京慈恵会医科大学整形外科学講座主任教授。同大附属病院整形外科・診療部長。1992年、東京慈恵会医科大学卒。2020年より現職。日本骨代謝学会理事、日本骨粗鬆症学会理事、日本人工関節学会理事などを兼務。骨代謝の診断・治療・研究で国内外を牽引する。

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