同調圧力の中で変革を起こす人が満たしている絶対条件
社会起業家でありカリフォルニア大学バークレー校教員のアレックス・ブダク氏は、現状を疑って、たとえ既存の規範や慣例をゆるがしたとしても、人がしないことに取り組むことが、社会に変革を起こすチェンジメーカーの姿だと説きます。
一方、他人と著しく違う行動をとることに躊躇する人は少なくありません。チェンジメーカーにとって、これは何を意味するのでしょうか。
ブダク氏の著書『自分の能力が変わるカリフォルニア大学バークレー校超人気の授業』よりお届けします。
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オリジナリティvs 同調圧力
インスタグラムに誰かが投稿した写真を見て、まったく同じような写真を投稿したいと思ったことはないだろうか?
エアビーアンドビーで予約した宿泊施設に泊まったら、遠く離れた別の都市で泊まった宿泊施設と内装がそっくりだったとか、グーグルのカーナビ機能が最適なルートを表示してくれたと喜んでいたら、他の車も全部同じルートを進んでいるのに気づいたことは?
現代では、誰もがオリジナリティを求めていると同時に、皆と同じであるべきだという強い同調圧力も感じている。この圧力をさらに高めているのがソーシャルメディアだ。
同調圧力は、今日のデジタル時代よりもはるか昔から存在している。それは人間の本能から生じているのだ。
1950年代、心理学者のソロモン・アッシュはペンシルベニア州のスワースモア大学で、被験者が多数派グループの行動や意見にどの程度従うかを調べた「アッシュの同調実験」を行った。
被験者は、他の被験者たち(実際には実験者が仕込んだ俳優)と一緒に部屋に入り、「カードに描かれた複数の線のうち、同じ長さのものはどれか」など、知覚に関するごく簡単な問題に答えるよう求められる。全員が他の被験者の前で答えを順番に発表し、仕込みではない真の被験者は必ず最後に発表するよう仕組まれている。
問題は間違えようがないほど単純だが、俳優たちは意図的に間違った答えをする。この実験は、他の被験者が明らかに間違っているときに、真の被験者はそれに従うかどうかを調べるものだった。
もしあなたが被験者だったら、どのように振る舞うだろう?
俳優たちが正しい解答をした対照群では、被験者の誤答率は1%未満。一方、俳優がわざと誤った解答をした12回の試行では、被験者の75%が1回以上間違った答えを口にした。
つまり、4人中3人が、ごく簡単な質問に対して、他の被験者と違う答えをして目立ちたくないという同調圧力のために、間違いだとわかっている答えをあえて口にしたのだ。
「慣習」に逆らうタイミング
チェンジメーカーにとって、これは何を意味するのか? それは、人は生涯を通して、多数派に従い、人と同じことをすべきだというプレッシャーに晒されつづけるということだ。
ただしそれは必ずしも悪いことではない。人生では、多数派の意見に従うことで無難に物事が進む場合は多いし、好ましい選択になる場合も少なくない。常に現状を疑っていると、燃え尽き症候群になるリスクもある。
だからこそ、慣習に逆らうタイミングは慎重に判断すべきだ。たとえば、これまで成功裏に開催を続けてきた、細かな実行手順がすでに確定しているイベントの企画を手伝うことになったとしよう。そのとき、何年も前から発注しているケータリング業者に代わる業者をあえて探したり、とくに問題のない座席の配置をわざわざいじろうとしたりするのは時間の無駄だろう。
このような場合はすべてを変えようとせず、現状を維持すべきところには手をつけず、大胆な変化が必要な側面に労力を集中させるべきだ(たとえば「ゴミゼロのイベントを目指す」「新たなタイプのゲストスピーカーを招待する」「オンライン参加を可能にする」といったこと)。
一度にすべては変えられない。現状を疑うべきときと場所を見極めることが、大きな違いをもたらす。
打破する価値のある現状を見つけ、変化を促し、導くためには、「規範を疑う勇気」が必要だ。私たちに〝普通の道〟を進むことを期待するまわりの圧力に負けずに、自分の信じる道を進まなくてはならない。
アッシュの同調実験からもわかるように、同調圧力は人間社会にごく普通に見られる。だが、それでも私たちは自信を育めるし、「人がしないことに取り組む」「現状を疑う」など、拙著『自分の能力が変わるカリフォルニア大学バークレー校超人気の授業』2章(「逆」を見る 「人がしないこと」はすばらしい)で詳しく紹介した手法を用いることで、ポジティブな変革を導く勇気や能力を培うことができる。
<本稿は『自分の能力が変わるカリフォルニア大学バークレー校超人気の授業』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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【著者】
アレックス・ブダク
社会起業家、カリフォルニア大学バークレー校教員