夏まゆみさんが説いた「正しい努力と間違った努力」の決定的な差
「欠点なんて見たくない」
「人に知られたくない」。
誰もが持つそんな気持ちが、実は成長の大きな壁になっているかもしれません。
ダンスプロデューサー/指導者として活躍された夏まゆみさん(2023年6月逝去、享年61)は、本当の成長がその不完全な自分を受け入れることから始まると説きます。夏さんの代表作のひとつ『エースと呼ばれる人は何をしているのか』から一部を抜粋し、「正しい努力」の本質をお伝えします。
欠点を認めなければ「正しい努力」は生まれない
「自分の長所や短所はなんですか?」
そう聞かれたらあなたは即答できるでしょうか。
あらためて質問されると考え込んでしまう人も多いのではないかと思います。
ありきたりな質問のようですが、これを意識するかどうかで、有言実行・不言実行で行う努力がちゃんと自信につながるかどうかが大きく決まる。そう言っても過言ではないほど、これは大事な質問です。
なぜなら努力には「正しい努力」と「間違った努力」があるからです。有言・不言を問わず、どんなに努力を重ねても、努力のやり方を間違えてしまうと、効率は大きく変わってしまいます。せっかく自信を身につけようと思って「底力くん」に会うための努力を重ねても、なかなか「底力くん」に出会えません。だから「正しい努力」を知ることが結果を出すためには大切です。
「正しい努力」をするための第一歩は自分を知ることです。自分の強みや弱みがわからなければ、これから力を注ぐべき方向を探ることはできないからです。
ところがほとんどの人は、忙しい、面倒くさい、必要ない、などと理由をつけて、自分を知るための工程をおろそかにしてしまいます。だから見当違いの方向で努力することになり、結果として貴重な時間を浪費してしまいます。それだけならばまだしも、努力に合った結果が得られず自信を失うことにもなりかねません。すると次の努力にも足が向かなくなってしまいます。
努力しているのに結果が出ない人は努力の方向を間違えている可能性が高いので、これから「正しい努力」へと舵かじを切っていくためにも、まずは自分の長所と短所を見つめ直す必要があります。
この場合、より難しいのは短所と向き合うこと。ほとんどの人は自分の弱点から目をそむけたいと思うからです。
他人に答えを求めない
たとえば私が講師を務めるダンススクールは壁一面が鏡になっているのですが、初心者のなかにはそれを恥ずかしがる人もいます。スタイルに自信がないから、鏡に映る自分の姿を見たくないというのです。
たしかにポッテリとしたお腹をゆらして踊る自分なんて美しくない。ダブダブのウェアで体形を隠すなど、鏡から離れた場所に陣取りたくなる気持ちもわかります。
だけど本当は、そんな短所のある人こそ鏡を見てほしい。
鏡を見てお腹が出ている、恥ずかしいと思ったら、誰でも反射的にお腹を引っ込めます。猫背になっていてみっともないと感じたら、すっと姿勢を伸ばす。鏡を見る前と後とでは、後のほうが確実に美しくなります。
このように、短所を認め、それを克服したいと意識しはじめた瞬間から、人は前向きな「正しい努力」をはじめます。自分の欠点を直視するのは苦しいけれど、それに見合っただけのエネルギーは必ず得られるのです。
注意してほしいのは、自分のどこがよくてどこが悪いのか、他人に答えを求めないことです。参考程度に聞くならいいのですが、自分で自分の弱さと向き合う努力を放棄してはいけません。
私もアイドルの教育係だったころは、よく「私には何が足りないのでしょうか?」といった質問や相談を受けました。その際に、答えではなくヒントを与えるにとどめ、極力自分で考えさせるようにしていました。鏡に映ったお腹を見てハッとするように、自力で弱点に気づいたほうが、克服しようというパワーが強くなるからです。
その意味でも「群れない人」はすばらしい。
群れない人は、他人の意見で自分を規定することもなければ、他人に合わせて努力をすることもありません。「あの人がこう言ったからこうしよう」「みんなこのやり方だから私もそうしよう」と流されないから、「100%自分のため」の努力ができます。だから努力の方向を間違えずにすむのです。
<本稿は『エースと呼ばれる人は何をしているのか』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>)
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by shutterstock
【著者】
夏まゆみ(なつ・まゆみ)
ダンスプロデューサー/指導者
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