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「あした、朝早くて大変」と憂鬱な人が気づいていないこと

「あした、朝早くて大変なんだ」

「上司が大嫌い」

 誰しもが口にしそうなことで、これによって不きげんな気持ちになっているかもしれません。ただ、私たちの心の動きには、誰もが持っているのに、ほとんどの人が気づいていない不思議な仕組みがあります。

 スポーツドクター、辻秀一さんの著書でロングセラー『自分を「ごきげん」にする方法』よりお届けします。

『自分を「ごきげん」にする方法』(サンマーク出版) 書影
『自分を「ごきげん」にする方法』

気づくだけで心は変わる

 脳は勝手に意味づけしていきます。そして、それは死ぬまで続きます。意味づけをやめることは誰にもできません。

 しかし、意味づけに気づくことさえすれば、ごきげんを持っていかれてしまうのを防ぐことができるのです。

 さて、みなさんもこんなことを言ったことがあるんじゃないでしょうか。

「あした、朝早くて大変なんだ」

 これは、意味づけに支配された会話です。だって、朝はただの「朝」です。ただの朝に「早い」とか「大変である」という意味づけをして、大変な気持ちになっているだけです。

 そして「あした、朝早くて大変なんだ」と愚痴を言って、そのせいで前日から不きげんに過ごしているのもあなたです。まずは、そのことに気づきましょう。

 人間の心の状態は、ちょうど携帯電話のアンテナと同じだと私は思っています。アンテナには、1本とか2本とか3本とか圏外とかがあります。どこかで圏外になっても、携帯電話が壊れているわけではありません。それは、携帯電話の状態のひとつです。

 でもあなたは、圏外だと気づいたらどうするでしょうか? 圏外じゃないところに移動するとか、何らかの行動を起こします。

 携帯電話だったらこのように対処できるのですが、自分の心の状態に置き換えるとどうでしょう。多くの人は不きげんという〝圏外〟になり、人としての機能が悪くなっても、そのままにしているのです。むしろ、圏外であることにさえ気づけず、電話しようとしている。だから、最適なアクションを起こすことができない。

 意味づけも同じです。

「朝早くていやだな」と思っても、「早くていやな朝」などというのはそもそもなくて、すべて自分が意味づけしているのだということに気づくのです。

 どうして気づくことがこんなに大切かというと、気づくだけで〝接着〟された意味が少しはがれるからです。これが「気づき」の効能です。

 そうすると、いやな気分がちょっとだけごきげんのほうに傾きます。心の針を、ほんの少しだけ「ごきげん」のほうに動かせるのです。持っていかれた心が自由になる感じです。

 それを積み重ねていくことで、外側の出来事に翻弄されて、すぐ不きげんになる状態からうまく抜け出せるようになってきます。

 ですから、「ごきげん道」の基本は、本来は意味のついていないものに、意味づけしている自分に気づくことなのです。気づくだけで心はずいぶん認知に引っ張られなくなります。

 こんなふうに、じつは気づきの効能はあなどれないのです。

 それをぜひ知って、体感してほしいと思います。

「ごきげん道」は新しい脳の使い方である

 しかし、私たちは自分自身がやっている意味づけに気づくことがなかなかできません。私たちはあまりに認知の脳の働きに慣れすぎてしまっているので、ほとんど無意識に自分自身よりも、外側で起こる出来事に関心を持ってしまうからです。

 先日もこんな相談を受けました。その人は、上司が大嫌いで、会社で顔を見るたびに気分が悪くなる、と言うのです。本当に気分が悪くなってトイレに駆け込むこともあるそうで、会社に行きたくないと悩んでいました。

 私はその人に言いました。

「あなたが大嫌いと〝意味づけ〟している上司はいますが、大嫌いな上司という人はいない。大嫌いという物質と細胞でできている上司などいないはずですね」

 本来は意味のついていないものに意味づけし、苦しんでいる。それが人間です。

 だから「ごきげん道」は、この認知の脳の意味づけに気づいて、たとえ、心が影響を受けたとしても、そのつど、気づいて不きげんをごきげんに切り換えていく「新しい脳の使い方」なのです。新しい脳の使い方ですから、すぐにできるようにはなりません。

 繰り返し、繰り返し練習する。そうすれば、認知の脳が意味づけを行っても、新しい脳が働いて、心が外側に持っていかれてしまうことが少なくなります。

 そういう私も、今でも日に何十回、何百回と認知の脳が意味づけして、不きげんに持っていかれそうになります。でもそうなるたびに新しい脳が「また意味づけしてる」と気づいて、意味づけをはがしてくれるのです。

 ちょうど迷惑メールをフィルタリングするソフトがパソコンの中で自動的に働いているのと同じです。迷惑メールそのものをこの世からなくすことは不可能です。だから勝手に私のメールアドレスに送られてしまいます。それと同じで、認知の脳から意味づけをなくすことはできない、つまり送信されてしまうんです。

 でもフィルタリングの機能があれば、「受信ボックス」に届く前に「迷惑メールフォルダ」に振り分けすることができます。私には「ごきげん道」で会得したフィルタがあるので、迷惑メールがいくら来ても切り換えることができる。だから結果的に心が引っ張られないのです。

「ごきげん道」に慣れないうちはちょっと大変ですが、繰り返して習慣化することで、新しい脳が自動的に働くようになるのです。

<本稿は『自分を「ごきげん」にする方法』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 SUNMARK WEB編集部)
Photo by ShutterStock


【著者】
辻秀一(つじ・しゅういち)
スポーツドクター

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