お金の世界では、監督と選手のどちらが重要か
投資とサッカー。
直接的にもちろん関係はありませんが、似た部分があります。資産運用で最も重要なことは、意外にも個別の投資先を選ぶことではありません。それはまるで、サッカーの試合で個々の選手の技量だけに注目するようなものだからです。
韓国で100万部のヒット、伝説のお金の授業を書籍化した『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』の著者キム・スンホ氏は、投資の成功には「名将」としての視点が不可欠だと説きます。
資産投資も一種のチーム競技
サッカーの試合で監督と選手が果たす役割のうち、どちらが重要なのかという議論がある。
チーム競技という性格から考えると、監督の重要性については疑問の余地がない。チームメンバーは変わらないのに、監督が交代して優れた結果を残したケースは、2002年日韓ワールドカップにおける韓国代表のヒディンク監督や、最近のベトナム代表のパク・ハンソ監督の活躍などがある。
よい選手が技量を発揮するためには、戦略と戦術を自由自在に駆使する監督が必要だ。
選手の能力を発揮させるには、チーム内の役割を調整してやらねばならないが、これは監督の力量にかかっている。どの選手をいつゲームに出場させ、いつ交代し、どのポジションで使うのかを決めるのは、監督の裁量だ。こうした監督の判断がチームの技量に影響を及ぼす。
資産投資も一種のチーム競技だ。
韓国では、投資というと資産配分(Asset Allocation、アセット・アロケーション)よりも株や不動産の売買にだけ関心を持つ傾向が強い。
どこに投資するかに関する情報は多いが、どのように資産を配分するかについては、あまり関心を持たれない。
いわばサッカーチームを作ったものの、監督がおらず、全メンバーがオフェンスに回り、ゴールキーパーまでが攻撃に参加してゴールががら空きになっているような状態だ。さらにはレギュラー、控えを問わず、チーム全員がフィールドに飛び出している有様だ。
元々資産は、その所有者がひとりであっても、それぞれ別のお金だ。同じチームに複数の選手がいるのと同じだ。お金が貯まる過程も違うし、なかには「元金」といって先輩風を吹かすようなお金もある。
外国出身の助っ人であるドルや人民元もある。
契約期間もさまざまで、1年以内に結婚式のために出ていくお金もあり、3年以内に家を買うためにほかのお金を誘惑するお金もある。一生を古株として家に居座りつづけ、引退後の生活と遺産のために使われるお金もある。
このように、お金ごとにさまざまな事情と目的と期間があるのだ。そのため、どこにどんなかたちで投資するのか、資産配分を事前に決めておかねばならない。その点を考えないのでは、監督のいないサッカーチームと同じだ。どのチームと対戦しようが、ひとりかふたりのプレーヤーの個人技を見て終わることになる。どんなに偉大な選手でも、ひとりで守ってパスしながら競技をリードすることはできない。当然、負けてしまうだろう。
資産配分をうまくやれば、投資はむしろ簡単
資産配分とは、手持ちの資金をその使い道、リスク許容度(risk tolerance)、投資期間に従って配分して投資先を決めることだ。投資商品は政治的・社会的条件によってその収益率やリスクが変わるので、特定の資産に資金を集中させず、投資者の目的に沿った資産の組み合わせ=ポートフォリオを作る必要がある。投資者ごとに年齢や収入も違い、資金の使い道や期待収益率も違うので、ポートフォリオも違ってくる。
資産配分の手順は、まず自分の財務状態を把握し、次に投資目的を明確にし、最後にリスク許容度を設定する。これらの変数を考慮してポートフォリオを作ろう。
企業のファンドマネージャーは、おそらく投資そのものよりも資産配分の方を重視しているだろう。資産配分をうまくやれば、投資はむしろ簡単だからだ。個別の投資銘柄の選定や売買の時期よりも、どの投資商品にどう資産を配分するかで収益のほとんどが決まる。
ところが、現実の投資の世界では、選手だけが見えて監督が目立たないので、資産配分の重要性を忘れて、どの銘柄に投資するのかだけを考えるという失敗を犯すことになる。いかに投資の天才でも、常に予測を的中させて売買をうまくおこなうことは不可能だ。だから配分することが資産を守る唯一の方法なのだ。
「お金の監督」としてゲームに勝つための采配とは
あなたが自分のポートフォリオを作るにあたって最初にすべきことは、投資する資金の種類を正確に把握することだ。あなたが監督なら、自分のチームの選手について把握するのと同じことだ。
選手は一人ひとり実力も違い、長所や短所も違う。お金もそれぞれ使い道が違い、忍耐力も違う。誰をオフェンスにして、何人をディフェンスに回すかを考える必要がある。
ゴールキーパーを除く10人を「4―3―3」にするか、「4―2―4」にするか、「3―5―2」にするか、相手チームによってプランを変更しなくてはならない。
株に100%注ぎ込むのではなく、債券や不動産、預金商品に分けて、それぞれの資産をどれほど長く持続させるかもあらかじめ検討し、各商品の期待収益率を設定する。
これらすべてが資産配分だ。
投資においても、選手よりも監督のほうがずっと重要だ。極端に言うと、資産配分をうまくおこなうことが投資のすべてだ。実際、運用成績のいいファンドは、明確な配分基準を持っている。資金運用で最も大切なのは、資金を失わないことだ。しっかりした資産配分基準を持たなければ、いつかすべてを失う危険がある。いくらたくさん稼いでも、一度に全資産を失う可能性もあるのだ。
だから、投資商品に対する関心の何倍もの関心を、資産配分に注ぐことをお勧めする。
<本稿は『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock
【著者】
キム・スンホ
スノーフォックスグループ会長。
【訳者】
吉川 南(よしかわ・みなみ)
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