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クリアファイルの数でわかるオタク度指数

 気がつけば実用性とは無縁の「推し」グッズがひしめき合う部屋。使わないのに買い続け、要らないのに捨てられない。

『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』の著者でライターの横川良明さんが、グッズを買いまくる日常を綴ります。

『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版) 書影

そして、今日も使わないグッズが増え続けます

 我が家には、ひとり暮らしだというのにマグカップが6つもあります。沢口靖子さんではないので、定期的に友達を招いて昼下がりのリッツパーティーをするような暮らしはしていません。なのに、なぜか6つもあるマグカップ。答えは簡単。どれもグッズだからです。

6つのマグカップ

 オタクをやっていると、家の中がどんどんグッズだらけになる。痩せ型の僕はあまり見栄えがしないので普段はTシャツは着ないのですが、数えてみたらTシャツだけで11着あった。どれも推したちの公式グッズです。ついでにスポーツも一切しないのにマフラータオルが4枚もあった。これは、一時期狂ったように好きだったハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」のせいです。公演に行くたびにそれぞれの学校のチームタオルを買っては、ダダ漏れになる涙を拭かせていただきました。

 しかし、以降、特に日常で使う場面もなく、すっかりタンスの肥やしになったまま。グッズというのは想い出もセットでつまっているので、不要になったからといってそう易々と捨てられるものではなく。引っ越しのたびにゴミ袋に入れながらも、「やっぱりもったいない!」と引き上げ、今日に至っています。

透明じゃないクリアファイルを持ち歩くか問題

 あと、いちばん大量にあるのはクリアファイル。世の中のプリントというプリントを全部収納できるぐらいクリアファイルはあり余ってる。企業というのは、数字をもっているコンテンツを見つけたらすぐに便乗してクリアファイルをつくりがち。そして、オタクもそんな企業の打算を知りつつ、それ行けと掌の上で踊らされがちです。家に最も多いクリアファイルは、世界の羽生結弦選手。対象商品を指定の数だけ購入したらクリアファイルが1枚ついてくるという例のアレです。

 2012年の世界選手権でどっぷり羽生選手に落ちた僕は、狂ったように近所のコンビニをめぐってクリアファイルをコレクションしました。おかげで一時期やたらキシリトールが家にあった。虫歯予防もされまくった。推しは歯まで良くしてくれるのです。

 このクリアファイルの何が問題って、当然ながらそれぞれの推しがデカデカとプリントされているので、まったくもって透明じゃない。クリアファイルの「クリア」の概念を完全に無視しています。だから、どのクリアファイルに何のプリントを入れたのか全然わからねえ。

 いちいち取り出して中身を確認しなければならないという、もはやクリアファイル本来の目的を果たしていない構造。どちらかと言うと、下敷きに近い。しかも、カバンからチラ見えしたら推しバレ甚だしいので、恥ずかしくてまったく使えず、結局部屋の片隅に大量のクリアファイルが堆く積もっているという末路を辿りがちです。

 一事が万事、そういう感じで。推しのグッズというのはイマイチ実用性に欠けます。よくトートバッグもグッズ展開されますが、なぜグッズ化されるトートバッグにはマチがないのか。パンフレット1冊入れたらもういっぱいという驚きの収納力の低さ。そして、だいたいベージュ色。汚れが目立ちやすいから、トートバッグは黒にしてほしい。あと、そんなTシャツばっか着ないんで、ポロシャツとかYシャツとかバリエーションを増やしてほしい。

トートバッグを持ち歩く若い女性

 たまに、もはやこれは公式がオタクたちの忠誠度を試しているのかしらと思いたくなるような突拍子もないグッズも出てきたりします。僕がいちばんびっくりしたのは、タイの人気俳優・BrightとWin。ここのオタクはいくらでも金を落とすと見込まれたのでしょう。

 ある日売り出されたのは、2人のお顔がデカデカとプリントされた枕でした。逆に寝れんわ。しかし、それでも買ったオタクが多かったのでしょう。しばらくしたら今度はこれまた2人がデカデカとプリントされたブランケットが発売されていました。

 もはや買った方が勝ちなのか負けなのかわからなくなる、公式とオタクによる争い。華やかなグッズには、そんな駆け引きが水面下で行われています。ただひとつ言えることは、グッズを買えば買うほど絶対に友達を部屋に呼べなくなること。

 もし気になるあの人がどれだけ仲良くなっても頑に家に上げてくれなかった場合、その人はオタクかもしれません。

<本稿は『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>


(編集:サンマーク出版 SUNMARK WEB編集部)
Photo by Shutterstock

【著者】
横川良明(よこがわ・よしあき)
ライター

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