仲の良い知り合いがたくさんいる人とそうでもない人の決定的な差
友だちづくりがうまくいく人と、なかなかうまくいかない人。 その差って、いったい何なんでしょうか。
ある大学の授業で、行われた実験。初対面の学生たちをランダムにグループに分けました。出された課題は、シンプルなもの。 「来週までに、みんなで何か一緒にやってくること」
1週間後。 まるで昔からの友だちのように打ち解けているグループがある一方で、 気まずい沈黙が流れているグループも。コミュニケーション力や性格の違い? 答えは意外と単純でした。
人間関係が続くかどうかは勇気のある人がいたかどうか
誰かと仲良くなるには段階があります。
・第1段階 挨拶をする
・第2段階 雑談をする
・第3段階 雑談の中からもう少しお互いに意味や意義があるような話題に進む
最初は挨拶やごく簡単な雑談からはじまって、だんだんと個人的な話もするようになります。
では、仲のよい知り合いがたくさんいる人と、そこまでではない人は、何が違うのでしょうか。
答えはシンプルで「一歩踏み込めているかどうか」です。
人間関係を深めたくても、雑談を続けているだけでは、なかなか前に進みません。
私は大学の前期の初めの授業で、学生にランダムに4人グループをつくってもらい、その場でLINEを交換して「来週までにみんなで何か一緒にやってくる」という課題を出したことがあります。すると、一気に仲良しになったグループと、ほとんど何もできなかったグループとに分かれました。
前者は、「空きコマの時間にみんなでカラオケに行ってきました」「時間を合わせて一緒に昼食を食べました」などと報告してきます。感想を聞くと、「すごく楽しかった」と教えてくれました。しかし後者は、LINEを交換したあと、ちょっとだけやりとりして、特別な発展もなく終了してしまっています。
両者に何か決定的な能力差があったのか。そんなことはありません。学生のコミュニケーション力にも、さほど差は感じられない。それでは一体何が違ったのかというと、グループの中の一人が「○○しない?」と言ったかどうかなのです。
「おいしい店が近くにあるから行かない?」
「このあと、みんなで学食に行ってコーヒーでも飲まない?」
そんなふうに、みんなを誘う誰かがいたかどうか。違いはそれだけ。しかし結果はまったく違ってきます。
ほんの少しの勇気ある発言が、現実を変えていくのです。
「遠慮」の壁を取り外そう
「○○しない?」と声をかけられない原因の第一は、他人への「遠慮」です。
「こんなことを言うと、ほかの人に迷惑なんじゃないか」
「相手に図々しく踏み込み過ぎではないだろうか」
「こんな提案をして、自分の感覚がへんだと思われてしまわないか」
など、いろいろなことを考えすぎて、身動きがとれずにすくみ合ってしまう。
このような状態に陥ったグループは、人間関係を何も変化させられないまま終わります。それなのに、授業後のアンケートには「友だちになりたかった」と書いてくるのです。
彼らは人が嫌いとか、一人がいいとか思っているわけではなく、友だちはほしいのです。
そこで私は次の授業で「もう一回やってみてください。できなかったら、できるまでやります」と指示しました。すると次はすべてのグループが、何らかの行動をとってきました。
彼らの行動が変わったのは、私が「できるまでやります」と強い言葉をかけて、彼らの「遠慮の壁」を取り払ったからです。学生たちは「できるまでやらなくてはいけない。だから、遠慮しなくてもいいんだ」と受け止め、行動を変えたのです。
私は、学生時代に仲良くなった友だちは、その後何十年にもわたって付き合う関係になることを、長い経験で知っています。それなのに新入生が4人いて、それぞれ仲良くなったほうがいいと思っていながらも、遠慮し合って何もできないなんて、もったいないことだと思います。
忙しくて時間が合わないなら、空いている時間にLINEで参加するとか、やり方はいくらでもありますね。
「遠慮することで新しく人間関係をつくるチャンスを失ってしまって、本当にいいの?」と言いたいのです。
<本稿は『「考えすぎて言葉が出ない」がなくなる』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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【著者】
齋藤孝(さいとう・たかし)
明治大学文学部教授
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