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気になった本を「高いから」と諦めることで得られなくなること

 本を買おうと書店に立ち寄ってはみたものの、お財布事情を考えてセーブしてしまった――。そんな経験を持っている人は少なくないでしょう。

『読書脳』の著者で精神科医の樺沢紫苑さんは、「読みたい」「買いたい」と思った本は躊躇せず買うそうです。樺沢さんが本の買い方で意識している「複利」の効果、そして実践している「年間予算購入術」とは?

『読書脳』 サンマーク出版
『読書脳』

貯金をするな! 知識を貯金しろ!

 ユダヤ人の教えに「財産を全て奪われても、知識だけは奪えない」というものがあります。実はユダヤ人は、「お金」よりも「知識」を重視します。ですから、ユダヤ人は子供の教育にものすごく熱心でお金もかけます。結果として、「知識」が「お金」をもたらすので、世界中で成功しているユダヤ人が多いのです。

 知識は最高の貯蓄である。私は、この考え方に大賛成です。私は大学生の頃から、本を買うことと、映画を見ることには、お金に糸目をつけないでやってきました。

 もしあなたに100万円の貯金があるのなら、銀行に預けておくよりも、100万円分、本を読んだほうがいいと思います。

 もし、10年前からそれを実行していたのなら、貯金は100万円ではなく、きっと今では1000万円になっていたはずです。

 100万円あれば、約1000冊の本が読めます。1ヶ月で約10冊、10年分です。

 1000冊の結晶化した知識は、あなたにどれだけの「富」をもたらすでしょう?

 一方、100万円を銀行に10年預金して、何円、利息がつきますか? 今の利率だとほとんど、利息はつきませんね。

 しかし、1ヶ月約10冊の読書は、「複利」で、日々の生活に「富」をもたらしてくれるのです。それは精神的な充実感のみならず、時に収入のアップや、昇進といった現実的な利益につながるはずです。

1冊ずつ元をとろうとしない

「本を買おうと思ったけど、高いからやめた」という経験は誰にでもあると思います。

 今、財布の中に3000円しかないとしたら、1500円の本を買うのは、躊躇するかもしれません。しかし、財布の中に3万円あるとき、そこに「読みたい!」1500円の本があれば、多くの人は買うと思います。

 あなたが「読みたい!」と思ったということは、あなたの直感が働いた証拠。潜在意識が「読め!」という指令を出した本なので、読むべきだと思います。そして、「読みたい!」と思った瞬間に、すぐ買って読んだ本こそ、最も内容を吸収でき、自己成長の糧にできるのです。

 そんな貴重な1冊を「高いから」という理由であきらめるのは、もったいない話です。

 知的な自己投資をケチるべきではありません。読書は、10年複利の定期預金のようなもので、後から必ず大きく利子がついて返ってくるのです。

 あなたが「それなり」の本しか読まないとするのなら、将来の自己成長も「それなり」のものにしかなり得ないのです。

 今、ここにあるこの本が「1500円の価値があるかどうか」を考えるから、「買おうかどうしようか?」と悩みます。

 本にはどうしても当たり、ハズレがありますから、ハズレ本を引く可能性はゼロにはできません。私のように年に何百冊も読むと、どれだけ吟味して購入しても、どうしてもときどきは「残念な本」を買ってしまいます。10冊連続で「当たり」を引くことは不可能です。

 ですから、「1冊ずつ元をとる」ことを考えずに、トータルで元をとればいいのです。私は、「年に30万円の予算で300冊本を読んで、10冊のホームラン本と巡り会えればいい」と考えます。

 つまり、本を買うための年間の予算を決めるということです。高い本も安い本もありますし、文庫本も雑誌もありますし、電子書籍もありますから、だいたい平均すると本1冊1000円です。10万円の予算があれば、100冊読めます。

 100冊読んでいれば、日本人の上位数%に入る、物凄い多読家です。

 ですから、まず読書予算として月1万円、年12万円を確保しましょう!

 一万円札が12枚入ったリッチなお財布を用意するわけです。

 そうすると、「この本は、1500円の価値があるだろうか?」といちいち考えることはなくなります。「買いたいから買おう!」「この本は自分に必要だから買おう!」というあなたの直感が100%、そのまま購入につながります。

 年間予算を決めて本を購入していくのが、「年間予算購入術」です。

 これによって、心に余裕ができます。

 圧倒的に「多読」になっていきますし、結果として「ホームラン本」と出会う確率も飛躍的に高まります。

1ヶ月1万円の「アマゾンお財布作戦」とは?

「月1万円、年間12万円を図書費として確保しよう!」といっても、本を買うためだけの専用のお財布を作って、それを持ち歩くのも面倒です。

 また、「お小遣い帳」のように、本を1冊買うごとに記録、集計するのも大変です。

 そこで、簡単に図書費の管理ができる方法があります。

 本を買う場合、書店で買う人もいますが、ネット書店で買う人も多いでしょう。私の場合は、8、9割はアマゾンで買って、「雑誌」と「どうしても、今日読みたい本」を書店で買うイメージです。

 そこで、まずアマゾンのギフト券を3万円分、コンビニで買ってください。そして、それを自分のアマゾン・アカウントに入れ、本を買うごとに、そこから引き落とされるようにするのです。

 これをすると一回ごとにクレジット決済をしたりコンビニで支払ったりする必要がなくなるので「お金を払っている」という感覚が弱まり、気楽に読みたい本を読みたいだけ買うことができます。

 3万円は、3ヶ月分の図書費です。ですから、3ヶ月でこの予算内で好きなだけ買っていけばいいのですが、実際にやってみると、3ヶ月で3万円の予算を消費するのは結構大変です。もちろん買った以上読まなくてはいけませんし、ただ読むだけではなくアウトプットもしなくてはいけません。

 月10冊ペースで読むには3日に1冊ですから、かなりのハイペースです。

 一般的にはなかなかそこまで読めないので、「好きな本を好きなだけ読める」充実感と満足感を味わうことができますし、今まで「この本、買おうかどうしようか」と迷っていた時間と精神的労力が、どれほど無駄だったのか、本を読まないことによる機会損失のデメリットについても、実感できるはずです。

 ちなみに、私のアマゾン・アカウントには、常に5万円以上の金額が入っています。

<本稿は『読書脳』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock

【著者】
樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家

Book Lover LABO

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